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牛すじを煮込め

スーパーで牛すじを買った。3割引きシールが貼ってあったからだ。

買ったはいいものの、何を作るか決めていなかった。スマホでレシピを調べれば、牛すじは大抵煮込むものと知る。ということで「牛すじ煮込み」を作ることにする。

ただ、レシピサイト曰く、牛すじというのはかなり煮込む必要があるらしい。どのレシピを見ても、小一時間は煮込むとある。それほど待ってられるだろうか。


さぁ調理という段階で気が付いたが、牛すじは固い。包丁を入れても簡単には切れない。なんとか切って、一口大サイズにした。鍋に水を入れ沸かす。その中へ一口大にした牛すじを放り込む。

牛すじの色が赤から茶色に変わりきったところで、一度湯からあげなければならない。アクやらなんやらをとるためだ。牛すじを取り出し、再び湯を沸かしその中へ入れる。

数分後、太めのいちょう切りにした大根も投入。そして、味付けのため調味料を入れる。醤油、みりん、酒、砂糖、だしの素、etc。

一度肉をかじってみる。固い。味がしない。
10分ほど待つ。またかじる。やや柔らかくなったが、味はない。
また10分待つ。かじる。変化なし。控えめに言っておいしくない。牛すじを買ったことを後悔しそうになる。

それでも鍋はグツグツ煮え続ける。
だいたい45分がたった。鍋を見ると、明らかに汁の量が減っている。牛すじと大根が吸っているからだろう。

期待もせず、味見する。…ん?味がする。するなんてものじゃなく、味が染みわたっている。おいしい。しかも、プルプルで柔らかくもなっている。これが煮込むことの力か!感動のフィナーレ。

ごはんと共にいただきました。


煮込む。すなわち、時間をかけて十分に煮ると、固いものは柔らかくなり、そこに味が染み込んでいく。

以前テレビで、料理家の平野レミさんが言っていた。「時間は調味料なのよ」。料理において、時間をかけることはひとつの鍵なのである。

それが何分後なのかは分からないが、どこかに、おいしくなる特異点・分岐点がある。そのポイントまで辛抱強く待てるかどうか。人間もしかり。

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