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ネタバレ全開で『モンテ・クリスト伯』の登場人物を善悪の観点から分析するよ!

久々の更新だが、実は現在フランス文学の名作、アレクサンドル・デュマモンテ・クリスト伯』を四巻序盤まで読んでいる。そこでタイトル通り、各登場人物ごとに大まかな紹介と善悪の分析をしてみたい。四巻までのネタバレを多分に含むが、冗談も結構入れてあるのでなかなか面白く読めると思う。
また、そこまでのおおよその筋がわかる(と思う)ので、この作品を読みたい人、読もうと思っている人におすすめできる記事かもしれない。


ダンテスと協力者

ダンテスがモンテ・クリスト伯になってからは色々あるみたいだけど、基本的に善人が多い。善には善で報われ、悪には悪で報われるべきだと考えている節がある。勧善懲悪を地で行っている感じだ。

エドモン・ダンテス

モレル家の船『ファラオン号』の一等航海士で、作中で三人の悪だくみに嵌められてしまうわれらが主人公。ダンテスの段階では非常に良い青年。優しいというよりお人よしとも言えそうだ。
その度が過ぎてダングラールからは嫌われ、また嫉妬のためフェルナンからも嫌われてしまう。この二人の感情を察知するが、その悪だくみまでは見抜くことはできない。またヴィルフォールをいい人だと思い込んでいたなど、この時点では少し天然の節が見受けられる。
一方その人の好さからメルセデス、父親、モレル父からは深い愛情を受けている。

モンテ・クリスト伯(以下、伯爵と記す)

はかり知れない教養と体力と財産を手に入れたダンテス。極めて有能な謎の紳士として社交界で瞬く間に注目される。
冷血漢を装っており、召使にはぞんざいに接することが多いが、恩をそれより大きな恩で返す人物、つまり根は相当な善人だと思われる。あまりに有名すぎる復讐のあらすじから、悪にはそれを超える報いをもって返す人物だと考えられるが、果たして…。
おそらく漫画の『ブラック・ジャック』のような偽悪者(悪を装っている善人)だと思われる。

ファリア神父

ダンテスが牢獄で出会う偉大な人物。善悪はあまりよくわからないが、かつて母国イタリアを動かして、より良い方向に持っていこうとしたというエピソードから、相当な善人だと思う。
表向きは変なおじいさんだが、深い教養や、たぐいまれな財産を隠し持っている上、何より人や物事を見抜く眼力がものすごい。
ダンテスの素養を見抜き、父親のように彼を愛する上、ダンテスが受けていた悪だくみをすべて見破る。さらにダンテスに持てるすべてを与えて舞台から去っていく。なんだ、めちゃくちゃいい人じゃん。

アリ

伯爵が助けたアフリカ人で、伯爵に忠誠を誓う一本気な人物。おそらく善人。召使として多くのことを非常に器用にこなす。
伯爵からぞんざいに接されることが多いが、実のところ伯爵のほうも彼を非常に信頼しているようだ。過去の経緯から喋ることはできないが、伯爵とは心で通じ合っているみたいに見える。

エデ

伯爵の愛人と思しき召使。今の段階では善悪のほどはよくわからない。だけど、愛情を愛情で返そうとする心構えが見える。

ベルツッチオ

たぶん善人だと思うんだけど、いろいろと言い訳がましい召使。
勧善懲悪の気質をもっているようで、かつて、ある理由から極悪人のヴィルフォールに復讐するが、結局復活されてしまう。ヴィルフォールの捨て子を養子とするが、しょせん蛙の子は蛙だった。その捨て子にひどい目に遭わされる。
その後の初登場時にはへまをしてつかまっている状態で登場する。これらから分かるように、能力的にはあまり高くなさそうで、何かとトラブルメーカーの節がありそうだ。

ルイジ・ヴァンパ

伯爵が裏ボスの山賊団の表向きのボス。職業柄表面上は悪人で、普通の人がやらないことを色々こなす能力の持ち主だが、恩を忘れなかったり伯爵の友達になったアルベールを解放してやるなど、どうも実はいい人っぽい。

モレル家

作中最大の善人の家系として描かれている。ダンテスの恩師ともいえるモレル父をはじめ、家族みんながめちゃくちゃいい人たちで、見ていてほっこりする。たぶん作中の感動担当。ただ、優しすぎるせいか、時々へまをする。
爵位はない。

ピエール・モレル(モレル父)

かつてダンテスやダングラールを船乗りとして雇っていたモレル商会の社長で、世界の善意という善意が集まってできたんじゃないかと思えるぐらいいい人。なんならダンテスよりいい人
誠実で仕事も見事なダンテスを愛していて、彼を若き船長にしようとしたり、ダンテスが捕まった時も自らの危険を顧みず、悪徳検事ヴィルフォールに直々に掛け合ったり、会社が没落してからも家族や部下に深い愛情を行き渡らせ、それを行動や報酬で示すなどする。
その後の彼のところを読んだ時にゃ目頭が熱くなったよ、父さん。ところで名前どこに出てきたっけ

マクシミリアン

父の素養をそのまま継承したような善人だが、四巻以降に活躍する人物のようで、まだその本当の優しさや誠実さがあまりよくわからない。
元軍人だが、ヴァランティーヌと両想いになったために軍務を退き、農業を始めるなど、正直で実直で一本気な人物のようだ。そして四巻序盤の会話から判断するに、情熱的な人物だ。

ジュリー

モレル父の娘でマクシミリアンの妹。やっぱりめちゃくちゃいい子で、僕はこりゃ伯爵と結婚してほしいなと思ったものだが、真面目な事務員のエマニュエルと結婚する。だけどエマニュエルもいい人だから良し。

エマニュエル

モレル家生まれじゃないけどいい人。ジュリーへの愛やモレル父への忠誠心から、会社が倒産寸前まで残り、その後は会社を引き継ぎジュリーと結婚する。願ったり叶ったりじゃん

ヴィルフォール家

出ました、作中最悪の極悪人の家系。わずかな例外を除いてこの家系には善人が存在しない。

ジェラール・ド・ヴィルフォール(ヴィルフォールと表記される)

自分の目的と保身のためなら手段を選ばない王党派の検事で、作中で最低の極悪人。ダンテスに上っ面でいい顔をし、わが身可愛さにしれっと無期懲役の刑で牢獄にぶち込んだ張本人。爵位は書かれていないが、おそらく公爵か侯爵。
彼と結婚した最初の奥さんのルネ(一巻の描写から判断するに善人)は謎の病死を遂げており、さらにその息子を生まれたばかりの時に生き埋めにしようとする、またベルツッチオの嘆願をよそに彼の兄を有罪にするなど、まさに外道頭の切れる外道ほど厄介なものはない
その関係か、対象の三人のうち最後に復讐されるようだ。そこを読むのが楽しみな人は多いだろう。ただし一方で、意外と神経質で完璧主義なところが見受けられる。ところで僕が今プレイしているゲームのジェラールはいい人だぞ、どうしてくれる

ノワルティエ

ヴィルフォールの父親で、息子とは対照的にボナパルト派の老人。息子より更に頭が切れ、かつては幹部としてブイブイ言わせていたようだ。だがルイ18世が王座にいたころはその派閥ゆえ、ヴィルフォールをビクビクさせた。息子と考えが合わず、さほどの極悪人といった節はなさそうだが、どうだろうか。

エロイーズとエドゥワール

ヴィルフォールの二番目の妻と、その息子。前情報を見た限りではどうやら二人とも安定の悪人で、サイコ気質があるようだ。ヴィルフォールの血が入っていないエロイーズまで悪人。家系ってやだね。

ベネデット

ヴィルフォールと最初の妻、ルネの息子(?)。可憐な赤ちゃんだった頃にヴィルフォールに生き埋めにされそうになるが、居合わせたベルツッチオに助けられ、養子になる。男爵の爵位を生まれ持つ。
だが伯爵がすぐに看破したように、血は争えなかった。ヴィルフォール家の例に漏れず賢いが、ベルツッチオの姉に残酷な仕打ちをするなど、相当な外道ぶりと狡猾さで頭角を表す。その後失踪するため、さらにのちのちの災いのタネになりそうだが、果たして。

ヴァランティーヌ

ヴィルフォールと最初の妻、ルネの娘。御覧の通り父親のヴィルフォールは救いようのない極悪人だが、この子では珍しいことに善人であったルネの血が勝ったようで、悪そうな節は見受けられない
その証拠に善人の鑑であるマクシミリアンと恋に落ちる。家系的には正反対なこの二人、果たしてどうなるだろうか。温かく見守っていきたい。

フェルナン家

家族そろって情熱家だが、お調子者で、考える前に行動してしまうところがある。それがのちにフェルナンに災いとして降りかかるようだ。あまり賢くはなさそうだが、フェルナンを含めあまり悪くもなさそう

フェルナン・ド・モルセール

序盤はルックスだけはよいが冴えない若者として現れる。当時の名前はフェルナン・モンデゴ。
カタルーニャの漁師で、メルセデスに恋をしていた。しかし彼女とダンテスが両想いだったので嫉妬していた。彼らが結婚直前の時には絶望したが、たまたまダングラールの悪だくみに出くわす。
そしてダンテスを僻むあまり、ダングラールの書いた嘘の告発状を勢いで提出する。いわば実行犯根はそんなに悪い人ではないのに、結果としてダンテスから恨みを買ってしまい、復讐対象にされてしまうある意味気の毒な人。
その後軍務で一旗上げ、伯爵として大出世を遂げるが…。(ややこしいことにモンテ・クリスト伯と同じ爵位)

メルセデス

ダンテスの元恋人だが、彼が亡くなったとの噂を聞き、フェルナンと結婚する女性。フェルナン家の特質を持つが、お調子者ではなくむしろ繊細で一途な気質が読み取れる。のちにモルセール伯爵夫人として教養と品位を身に着ける。
最初にモンテ・クリスト伯と出会ったとき、何かに気づいたのか、なんだか悲しげな表情を見せる。彼女は悪人ではないので、幸せになってほしいが。

アルベール・ド・モルセール

フェルナンとメルセデスの息子で子爵。父親譲りのルックスと気質、そして母親譲りの一途さを受け継いでいるお調子者。今のところ全く悪人ではない。女好きの優男だがお人よしでもあり、モンテ・クリスト伯の人柄と才能に惚れこんでいる。
盗賊のルイジ・ヴァンパの彼女に勢いで手を出してひっ捕らえられてしまうなど、ドジだが憎めない面が強い。

ダングラール家

ダングラール男爵

ダンテスと同じ船で会計士をしていた男。ダンテスやフェルナンより少し年上。非常に狡猾な人物で、悪党度は中程度
自分を差し置いてダンテスが船長になろうとしているのに嫌悪を感じていた。そこでダンテスに無実の罪を着せた偽りの告発状をササっと書き、フェルナンをそそのかして提出させる。
他、金融業で財産を上げて男爵の地位を手に入れるなど、良くも悪くもできる人物。かつての恩師であるモレル父がピンチに陥っていた時も無視したりと、冷酷さも併せ持つ。復讐対象の一人。
だが同時に少し抜けたところがあり、序盤のカドルッスとのやり取りはなんだか微笑ましい。家では奥さんが主導権を握っていて、雑に扱われているいわゆる恐妻家。

エルミーヌ

ダングラールの妻。家では好き勝手していて外では放蕩しているようだ。まだあまり描写がされていない。

ユージェニー

ダングラールの娘さん。まだ出てきていないので判断できない。

その他の人物

ガスパール・カドルッス

ダングラールの同僚とも言えそうな立場の人物で、仕立て屋をしている。ドジでお調子者の悪人だが、いわゆる善のタガみたいなものが存在し、なかなか思い切ったことのできない、臆病な小悪党。意を決して思い切ったことをすると大抵失敗するようで、高い能力を持っているとは言えそうにない。でも口調をはじめどこか憎めないところがあり、時々笑いを担当する。
ダングラールとフェルナンの悪だくみに、怖さのため見て見ぬふりをするが、ダンテスに手を下したわけではないので復讐対象ではないようだ。序盤の他の人物が出世していく中で、彼だけが没落している。
余談だが、僕はこういう人物に共感を寄せることが多い。

フランツ・デピネー

アルベールの友達で、真面目で実直な人物。男爵の青年。ローマ編では、抜けたところの多いアルベールのサポート役に回っていた。伯爵から奇妙なもてなしを受けるが、山賊と通じ合っている伯爵に怪しさを感じ、アルベールに警告する。人を見抜く眼力がかなりありそうで、なかなか頭は良さそう。

終わりに

いかがだっただろうか。久々に書いて少々疲れたので、フェルナンのように見直しもせず勢いで投稿することにする。
面白く読めたなら嬉しい。そしてこれを読んで『モンテ・クリスト伯』を読みたいと思ったなら、記事の著者としてこれほど嬉しいことはない。

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