猟 虎太郎

自分自身と世界を総合的に認識したい人。文学や哲学、生物学に興味を持ち、多様な書籍や記事を読みながら自分の視野を広げることを目標としています。 『らっこたろう』と読みます。 本の感想文にはネタバレを含む場合があります。 こんなアイコンですが、 中の人はただの変なおじさんです。

猟 虎太郎

自分自身と世界を総合的に認識したい人。文学や哲学、生物学に興味を持ち、多様な書籍や記事を読みながら自分の視野を広げることを目標としています。 『らっこたろう』と読みます。 本の感想文にはネタバレを含む場合があります。 こんなアイコンですが、 中の人はただの変なおじさんです。

マガジン

  • 僕の思考記録

    僕の思考の遍歴をまとめた

  • 僕の読書記録

    僕個人の読書の遍歴。純文学系が多いかも

  • 僕の哲学記録

    哲学書を読んで感じたこと、考えたことをまとめた

最近の記事

ネタバレ全開で『モンテ・クリスト伯』の登場人物を善悪の観点から分析するよ!

久々の更新だが、実は現在フランス文学の名作、アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』を四巻序盤まで読んでいる。そこでタイトル通り、各登場人物ごとに大まかな紹介と善悪の分析をしてみたい。四巻までのネタバレを多分に含むが、冗談も結構入れてあるのでなかなか面白く読めると思う。 また、そこまでのおおよその筋がわかる(と思う)ので、この作品を読みたい人、読もうと思っている人におすすめできる記事かもしれない。 ダンテスと協力者ダンテスがモンテ・クリスト伯になってからは色々あるみたい

    • ダメおじさんのささやかな夢

      人生詰んでいると思う。大学は出たけれど、氷河期に見舞われ職を転々とした。今は貯金を切り崩して生きている。いや、氷河期とか関係ないかもしれない。 中学のころに不良生徒に胸ぐらを掴まれ恫喝され、高校時代は同級生の大半から相手にされず、大学では名前入りでネットに誹謗中傷を受けてきた。学校という社会の縮図で、そんな目に遭ってきた僕が、その後の社会にも適応できなくなったのは必然だろう。多様性が謳われながら、中年の男には厳しい世相だ。路肩で誰にも知られずに、虫にさえ無視されて、ただひっ

      • 過ぎ去りし大学時代をのせて  #ミハエルカラオケ残暑バージョン

        パッパルデッレさんからカラオケバトンを頂きました。 ありがとうございます。 江戸川乱歩、横光利一、永井荷風など、主に明治維新後〜昭和初期に活躍したであろう渋い作家陣をこよなく愛する方だと認識しています。 深い洞察力と観察力を持つ方で、当世風の様々な美しい写真のアップも行われていて、その時代に写真と文章の両サイドから迫っていらっしゃる。 文章の端々やコメントから、人道主義や関西風の人情とも少し違う、関東流の穏やかな優しさが伺え、知り合えて良かったと心から思える方です。 では

        • 自己紹介 (本好きな人に100の質問)

          前の自己紹介があまりにも古くなってきたのと、このアカウントが読書メインの方向に固まってきたため、更新を兼ねて100の質問をしてみました。 すべて答えるのは疲れるので抜粋します。 1. 1年に何冊程度読みますか? 冊数には全くこだわらないので数えることはないのですが、敢えて言うなら20〜30冊ぐらい。分厚い本が好きで、しかも遅読ですぐ疲れるため時間がかかりますね。でも深く読んでいる自信はあります。 2. 好きなジャンルはなんですか? 純文学。 3. それはどうして? 人

        マガジン

        • 僕の思考記録
          16本
        • 僕の読書記録
          26本
        • 僕の哲学記録
          11本

        記事

          村上春樹と認識の幅と、そして靴ずれの改善

          村上春樹作品に対する認識の変化実は最近、村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という長編小説を読んでいる。 村上春樹といえばかなり以前に言及したように、"自分にはどこか受け入れにくい作家" であるはずだった。なぜそれを読み始めたのだと怪訝に思う方もいるかもしれない。 そのような事情があるにもかかわらず、今回この作品を手にとってみたのは、やはり彼の小説を読んでいると、全体的に不思議と心が落ち着く、いわばマインドフルな気分になれるという感覚があったからだ。 こ

          村上春樹と認識の幅と、そして靴ずれの改善

          【読了記録】 『青い眼がほしい』(トニ・モリスン) 感想

          恥ずかしながら僕はアメリカ文学をほとんど読んだことがない。 ヘミングウェイ『老人と海』、フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』ぐらいしかまともに読んだ記憶がないが、どちらも当時の僕にはピンとこなかった。それで、自分には米文学を解する力がないのではないか、つまり端的に言って、向いていないのではないかと思っていたところがある。 だけど似たような国や地域の作品ばかりを読んでいても、あまり僕の意識の中とか、あるいはそれの表出としての文章表現に多様性が出ることはないだろう。そこで

          【読了記録】 『青い眼がほしい』(トニ・モリスン) 感想

          noteの投稿が少ないことと、カント『純粋理性批判 1』

          またもや久しぶりになってしまった。 久々に文章、それも特にnoteに投稿するような長めの文章を書いてみると、スムーズに言葉が出てこない。出てきたとしても、どこか見当はずれなものばかりで、「言いたいことはこんなことじゃないよー!」と自分で突っ込みたくなる。 だが、案外そういう経験をしている人はnoteでは少ないのかもしれない。というのも僕のフォロワーさん界隈を見渡してみると、皆さん筆まめな方ばかりだ。語弊がある表現だとは思うが、勤勉でまじめな印象を受ける。 いや、たぶんそうい

          noteの投稿が少ないことと、カント『純粋理性批判 1』

          【読了記録】 『貧しき人びと』(ドストエフスキー) 感想

          前回トルストイの『アンナ・カレーニナ』を読んだのだが、実はその間ずっと僕の心の中にドストエフスキーの成分を欲する気持ちが湧き出ていた。 トルストイがあまりにも素晴らしく偉大な文豪であることは、わざわざ僕が言うことでもないだろう。しかし敢えてトルストイ作品に足りないものを、僭越ながら僕に述べさせてもらうなら、『濃厚で香ばしい人物』の作中での活躍である。 そうだ。トルストイの作品には、自分の思想や理念を十ページぐらい優に改行なしで、滔々と述べ続けるような、あのドストエフスキー

          【読了記録】 『貧しき人びと』(ドストエフスキー) 感想

          美しい文章を書く方をnoteで何人か見かけた。 僕は思わず嬉しくなってフォローした。 そうだ。無味乾燥な理屈っぽい文章や、負の感情を刺激する攻撃的な文章は必要ないのだ。 書き手の美しい心が伝わってくる優しい文章。 これが僕の理想の文章だ。 それに気付かせてくれて、ありがとう。

          美しい文章を書く方をnoteで何人か見かけた。 僕は思わず嬉しくなってフォローした。 そうだ。無味乾燥な理屈っぽい文章や、負の感情を刺激する攻撃的な文章は必要ないのだ。 書き手の美しい心が伝わってくる優しい文章。 これが僕の理想の文章だ。 それに気付かせてくれて、ありがとう。

          『貧しき人びと』を読んでいる。 流石はドスト氏! 『金持ちは貧しい人の貧乏の不平を嫌い、それ故に貧しい人は益々卑屈になる』 例えばこの箴言一つにしても、より一層真実味を帯びて現代の我々に迫ってくる。人間の本質を鋭く看破するドスト氏の文学は、多分百年後も色褪せることはないだろう。

          『貧しき人びと』を読んでいる。 流石はドスト氏! 『金持ちは貧しい人の貧乏の不平を嫌い、それ故に貧しい人は益々卑屈になる』 例えばこの箴言一つにしても、より一層真実味を帯びて現代の我々に迫ってくる。人間の本質を鋭く看破するドスト氏の文学は、多分百年後も色褪せることはないだろう。

          【読了記録】 『アンナ・カレーニナ』(レフ・トルストイ) 感想

          今回も私事から入って誠に恐縮だが、僕はこの2ヶ月間noteにいなかった。 だがそれは本も読まずにのんべんだらりと暮らしていたことを意味するわけではない。この世界的大文豪の超大作に取り掛かっていたのだ。 新潮文庫の木村浩訳で読んだ。実のところ再挑戦だった。 学生の頃に読んだ時には、中巻の前半部分で頓挫したのだが、今回ついに夢が叶って、下巻の最後まで読むことができた。 世界中の大手出版社や新聞における、古今東西の全ての小説のランキング(ベスト10や100など)の常連であり、し

          【読了記録】 『アンナ・カレーニナ』(レフ・トルストイ) 感想

          トルストイ『アンナ・カレーニナ』を節ごとに要約しながら読んでいる。写真は中巻だが、今や下巻の後半だ。もう少しで終わるという寂しさを感じつつも、よくここまで辿り着いたと思う。 この本はやはり凄まじい。多かれ少なかれ、読者に何らかの精神的変革を与えずにはおかない力強さがあるのだ。

          トルストイ『アンナ・カレーニナ』を節ごとに要約しながら読んでいる。写真は中巻だが、今や下巻の後半だ。もう少しで終わるという寂しさを感じつつも、よくここまで辿り着いたと思う。 この本はやはり凄まじい。多かれ少なかれ、読者に何らかの精神的変革を与えずにはおかない力強さがあるのだ。

          亀裂の走る大地と静かな大地。僕の逃避と帰郷。それからカズオ・イシグロの提示する手段

          昨年の秋に唐突に僕は、ある巨大SNSをやめた。日に日にどこか穏やかならぬクレヴァスが増長し、そこの空気が澱んできていたのだ。このままでは、いずれ大きなカオスが生じる。僕はあたかも、禍々しい天変地異を直観で察知して逃げたあの青い鳥みたいに、あの場から飛び去った。 その後、僕は自己表現のメイン・フィールドをnoteに移し、さまざまな記事を書いた。ここは安住の地。かつて跳梁跋扈していた威圧的な魑魅魍魎も、少なくともこんな記事を書いている限りにおいては、誰一人として現れない。そう思

          亀裂の走る大地と静かな大地。僕の逃避と帰郷。それからカズオ・イシグロの提示する手段

          【読了記録】 『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロ) 感想

          カズオ・イシグロの作品を読むのはこれで三作目だ。 前に「この人の作品は技巧的に読むより感性に任せて読むのがいいのではないか」と語った。だけどことこの作品に関しては、その技巧を味わうという読み方も大切なようである。 僕はこれを三日前に読んだ。その後にすぐ感想文の草稿を書いたものの、ここに清書するのがなかなか億劫で今まで渋ってしまった。だがそれは決してこの小説が前に読んだ二作より劣っていることを意味しない。 確かにイシグロさんの作品群の大きなテーマの一つだと僕が思っている、慈

          【読了記録】 『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロ) 感想

          【読了記録】 『クララとお日さま』(カズオ・イシグロ) 感想

          個人的な話から入って恐縮だが、最近色々なゴタゴタがあり、僕は人間的な温かみや優しさを求めてこの小説を手に取った。そしてその選択は大成功だったと思う。 今日はこの小説の感想を、なるべく巻末解説と被らずに述べてみよう。上手にできるかわからないが、やってみる。 AF(友達ロボット)の一生をロボットの眼から詳細に描くこの作品はAF(人口親友)と呼ばれる、高度なAIを積んだロボットのクララが語り手だ。当たり前だが小説というものは人間の手によって書かれている。ここで多くの人がこう驚くの

          【読了記録】 『クララとお日さま』(カズオ・イシグロ) 感想

          イシグロさんの『クララとお日さま』を読書中 ロボットのクララによる近未来の一人称小説だ 『日の名残り』は伝統的なイギリス老執事による一人称小説だった どうやらイシグロさんは多様な人物(ロボット含む笑)に変幻自在に乗り移り、その心情を内側から解剖することに極めて長けているようだ

          イシグロさんの『クララとお日さま』を読書中 ロボットのクララによる近未来の一人称小説だ 『日の名残り』は伝統的なイギリス老執事による一人称小説だった どうやらイシグロさんは多様な人物(ロボット含む笑)に変幻自在に乗り移り、その心情を内側から解剖することに極めて長けているようだ