【タイムレンジャー】第20話
Case File.20「新たなる絆」
× ケンジャー → 〇 レンジャー
書き出しから戦士を賢者に鞍替えさせてしまい、我ながらうっかりの第20話である。ヘルズゲートの囚人であるブラスター・マドウの力は強大で、なおかつそれを遊び半分で行使しているからタチが悪い。しかもそれに抗えば抗うほど、歴史の行く末は乱れ、行きつく未来が変わってしまいかねないという。
ドモンはもともと、プロの格闘技選手である。無断欠席のかどでグラップの世界を引退し、時間管理局に転職してきたクチだ。腕っぷしの強さを生かすならほかのスポーツなり格闘技なりの門をたたくという道もあったし、体力勝負の営業マンや肉体労働も悪くない。なんならドルネロのような悪党についていくこともできる。それでもドモンがあえてお堅い時間管理局への就職を決めたのは、もちろん待遇の良さもあろうが(彼の家は大家族だし、食い扶持は多いに越したことはない)、やはり秩序を保つ法の番人という仕事になにがしかの好印象を持っていたからではなかろうか。彼が真っすぐな心根の好漢であることは、我々もよく知るところである。
いま目の前で困っている人と、いずれ変わってしまうかもしれない未来。正義感も三十世紀への愛着も人一倍だからこそ、ドモンはジレンマに板挟みにされる。
そんな中で、シオンの一言は軽やかだ。生まれ故郷を持たず、三十世紀に於いても外様のような扱いを受けていた彼には、基本的に未来への郷愁が無い。それゆえにこの二十世紀での時間をまっすぐに見つめ、ありのままに享受することができる。シオンは「みんなでやるタイムレンジャー」、つまり何でも屋の仕事をしながら時に変身して戦い、時にくだらないことで笑いあうようなこの生活が好きなのだと言う。そして、その気持ちが彼の絶えぬモチベーションの源となる。
二十世紀で起こした蝶の羽ばたきがどう三十世紀に影響するかなんて過去からは観測しえないのだし、それよりも今この目で見えている、己の為すべきことをきちんと果たしたほうがすっきりするはずだ。ドモンも最終的にはジレンマを乗り越え、再び二十世紀の戦場に身を躍らせる。タイムシャドウの力も借り、無事ブラスター・マドウを圧縮冷凍したタイムレンジャーたちは、ここからはさらなる覚悟を持って「明日」へ進んでいくことになる。