見出し画像

【タイムレンジャー】第14話~第17話


Case File.14「デッドヒート」

 宝石集めに精を出すリラのちょっときざな相棒、バロン。リラの悪事の片棒を担ぐくらいなので、当然彼もまた解凍されたばかりの囚人である。三十世紀において、バロンはスピード違反による人身事故を起こしてしまったのだ。そして、そのスピード違反を証言したのが他でもないアヤセだった。ふたりはともにプロのレーサーを目指す間柄であったのだ。
 サクランボに塩をかけて食べるバロンの癖。それを知っているアヤセはフルーツパーラーに彼を見つけ、ロンダースを抜けるようひとり説得に赴く。だが、バロンは首を縦には降らない。――彼はかつてのアヤセの証言が自分への嫉妬のためではないかと疑っている。ゆえに、自分が悪事から手を引くことを賞品として、アヤセとの決着をつけることを望む。そのためにバロンはわざわざリラの運転手をして、タイムレンジャーの登場を待ちかねていたのだ。
 病のせいで夢を断たれたアヤセと、圧縮冷凍により当分夢を叶えられそうにないバロン。二十世紀はふたりにとって、予想だにしていなかったエクストラステージである。三十世紀では叶わなかったが、ここならドクターストップも当局の目も関係なしに、二人だけの真剣勝負を繰り広げることができる。

 圧縮冷凍の刑期が伸びたのはさきの被害者が有力者に近しかったからかもしれないが、それにしても事故は事故である。バロンがスピードを出し過ぎ、誤って人に怪我を負わせた事実は揺るがない。だからこそ同じ轍を踏ませないため、アヤセはわざとバロンのクルマを妨害し、負けを宣言する。
 バロンがアヤセの証言を敵視するのは、裏を返せば彼自身がアヤセの才能に嫉妬していたことの表れだ。それを素直に認めたバロンは、リラの手によって暴走させられながらも、最後には元通り圧縮冷凍の刑に服す。二十世紀へのタイムトラベルも、そう悪いことばかりではない。アヤセとバロンのわだかまりは溶け、そしてアヤセはバロンが華々しく活躍する三十世紀に思いをはせるのだ。

 イチからやり直しでしょうかね……。


Case File.15「狙撃手を探せ」

 ホナミ、おとりにされるの巻。首に爆弾を付けられ、見晴らしの良い広場に座らされた彼女は分かりやすく罠である。さらに彼女はタイムレンジャーのスクープを狙うカメラマンで、以前も不用意に首を突っ込んでは危ない目に遭っていたし、この度も仰々しい見出しの記事で雑誌の紙面をにぎわせている(これはホナミの発案ではないにせよ)。だが、だからと言って助けないという道理はない。ロンダースの囚人が誰かに害をなそうとしている以上、ユウリ以下時間保護局の人間にはそれを拘束・再冷凍する使命があるし、竜也だって目の前で爆弾を付けられている人を放っておけるほど非道ではないのだ。
 姿の見えない敵の居場所を探るため、シオンが発案したのはわざと自分たちを撃たせる作戦である。こちらへの狙撃をこっそり設置したバリアではじき返しつつ、その飛んできた方向を確かめるという、タックの高い計算能力がものを言うプランだ。だが予想外だったのは、当のホナミが物陰に潜むタイムイエローの姿を見つけてしまったことだ。タイムイエローを爆発に巻き込みたくない一心でホナミはその場から動いてしまう。
 真っ先に異変に気付いたのはタイムグリーンで、それはシオンがホナミの気持ちに気づいていたためでもある。かつて第8話では画家の恋心を利用しようとしていたユウリは、捜査を離れた他人の色恋ごととなるとどうも疎いらしい。彼女自身が恋愛感情に大きな価値を見出していないからこそ、他人のそれをドライに取り扱ってしまったのかもしれないなあ。

 事件が解決した後、シオンはこっそり直通のメールアドレスをホナミ宛に書き残す。時間を管理する側の人間としては多分絶対確実にタブーな行為であるとは思うのだが、現場に飛び込まれたり巻き込まれたりするよりはまだマシなのかも。なによりドモンが嬉しそうだから、シオンにとってはそれだけでハナマルであろう。


Case File.16「そばにある夢」

 ドモン、グルメ評論家に立ち向かうの巻。依頼人の前で粗相をしたために事務所から放り出されたドモンは、閑古鳥の鳴く蕎麦屋を立て直さんと店主とともに奮闘するのであった。

 幸せの青い鳥は遠い未来ではなく、案外近くの地球の裏側から新そば粉を持ってきてくれるんだなあ……。
 タックにそば粉の調達を手配したアヤセは、作中、旨い蕎麦の極意として「採れたて・挽きたて・打ちたて・茹でたて」の「4つの”たて”」を提唱する。なるほど鮮度が命か、と感心しつつ、彼がこの知識をどこで手に入れたのかは謎のままである。三十世紀でも二十世紀と同等な蕎麦が食べられているのか、それとも高速学習した二十世紀の知識のうちの一つだったのか。オーレントピアでは200年後にはすべての食べ物が原形をとどめていないらしいが……。

 おいしゅうございました。そろそろ年越しそばの頃合いですね……。


Case File.17「ねじれた正拳」

 竜也の空手教室に通う熱心な生徒・誠。彼が空手を習っているのは不良生徒のカツアゲから身を守り、復讐するためである。師匠の竜也にその動機を一喝されるも、誠の薄暗い気持ちは抑えられない。ついには不良グループのリーダーを(成り行きとはいえ)KOしてしまい、彼自身がカツアゲ集団の頂点に上り詰めてしまう。気合の入ったギャル男風チンピラファッションがいかにも着慣れていない感で、身の丈の合わないシノギに足を突っ込んでしまっているのではないかとハラハラ。それもそのはず、裏で集団を仕切っていたのはロンダースの囚人・恐喝番長フランであったのだ。

 東映公式サイトのアーカイブを見ていたら、この回の「こぼれ話」に台本の画像が載っていた。仮のサブタイトルは「空手使いの弟子」だそうで、これはこれでオシャレである。元ネタは当然「魔法使いの弟子」であろう。

見習いは命じられた水汲みの仕事に飽き飽きして、箒に魔法をかけて自分の仕事の身代わりをさせるが、見習いはまだ完全には魔法の訓練を受けていなかった。そのためやがて床一面は水浸しとなってしまい、見習いは魔法を止める呪文が分からないので、自分に箒を止める力がないことを思い知らされる。絶望のあまりに、見習いは鉈で箒を粉々にするが、さらに箒の破片が新たな箒となり、水汲みを続けていき、かえって速く水で溢れ返ってしまう。もはや洪水のような勢いに手のつけようが無くなったかに見えた瞬間、師匠の魔法使いが戻ってきて、たちまちまじないをかけて急場を救い、弟子を叱り付けるのだった。

「魔法使いの弟子」『ウィキペディア日本語版』,(2023年12月29日取得)

 本編と引き比べてみると、たしかになるほどな~という感じがする。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?