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許さなくていい。でも、許せることは尊い。
※『エルコスの祈り』のネタバレを含みます。
十数年ぶりに『エルコスの祈り』を観た。
学芸会で観たあのときとは異なり、自分で買ったチケットで劇場に足を運んでいることに成長を感じる。
『エルコスの祈り』は、大人から問題児と決めつけられて傷ついた子どもたちが、スーパーロボット「エルコス」によって夢や希望が持てるようになるまでを描いたハートフルストーリー。
大人になる過程ですっかり忘却の彼方に行ってしまった物語のはずが、チケット情報を見た途端にむくむくと記憶が溢れてきた。
子どもたちが番号で呼ばれているシーンをすごく怖く感じたり、テーマソングの歌詞やメロディーが大好きになったまっさらな心を、ちゃんと覚えていた。
ただ、結末だけは、改めて観るまで思い出せなかった。
当時は参照するような経験もなく、理解できていなかったのだと思う。
だから、「許すことの美しさ」がテーマにあると知ったとき、ハッとした。
両親の離婚と養育拒否という経験を、知らないうちに持ち合わせていた。
私は長いこと、両親からいらない存在とされたことが本当につらくてしんどかった。
許せない
許したくない
だって、許したら、このつらい気持ちをどこにやったらいい?
誰が私を肯定してくれる?
あのときの私がいないことになる
――ずっと思ってた。
でも、エルコスは、「人間の心にあるもののなかで一番美しいものは”許す”ことなのよ」って、過ちを犯した仲間を許すよう子どもたちを諭す。その過ちによって、自分自身は消滅するというのに。
私の心の叫びに、エルコスがこたえてくれている気がした。
私は安心して両親を許していい。
そう思えたことは、間違いなくエルコスに出会えてよかったことの一つだ。
許さなくていいし、許せなくていい。
こう話していても、100%許せているかというとそうではないし、許せない気持ちがあってもきっと自然だ。
そのことを含めて、「両親も人間ではあるし、何かしら事情があったのかもしれない」と想像を広げ始められたことが、私は嬉しい。
許さなくていい
許せなくていい
あのときのつらい気持ちは、今の私がちゃんと覚えている
私は、人間の心にあるもののなかで一番美しいものを持ちうる
あのときの私がいるから、今の私がいる
――今はこう思っている。
劇中でエルコスは、「世の中は割り切れることばかりじゃない」と言う。
もっというなら私は、割り切れないことの方がよっぽど多いとすら思う。
完全に割り切れてるかにかかわらず、きっと私は前進している。
大好きな作品が、さらに大好きになった。