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Vol.14 モンスター映画への回帰。

『「怪獣映画」は「モンスター映画」の中の一つのジャンル』
この見解を聴いたのは、以前 TBSラジオで放送されていた『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル(注1)』に、脚本家の三宅隆太さん(注2)がゲスト出演された『モンスター映画特集』でのこと。

私は、幼少時に昭和期のウルトラシリーズを再放送で浴びるように!?観た事もあって いわゆる「怪獣映画」は好きな方で、その特集を聴くまでは『怪獣映画=モンスター映画』と思っていたのですが、上記の特集で三宅さんが語られた、
『「ビルより大きな怪獣」が暴れると、それは「災害」みたいなものなので、主人公がそこへ向かう事に無理が出てくる。(その場から逃げる方が現実的)』
『それでも、主人公が怪獣へ向かう必然性を持たせようとすると「怪獣を倒す薬品が作れる人物」とか「その人物の娘」といった、市井の人から かけ離れた存在になってしまう』
…という指摘は、まさにその通りで目からウロコが落ちる思いでした。

また それと関連する話ですが、同じような ” 異物が出現する映画 ” でも「ジョーズ(注3)」等に代表されるような『良質なモンスター映画』は、 ” 登場人物と異物(モンスター)が対決に至るまでの流れ ” がスムーズに整っているのに対して、『怪獣映画』の場合は ” 登場人物の物語 ” に対する ” 異物(怪獣)の物語 ” が、「一方その頃」という感じで挿入される事が多く、二つの話の流れが乖離しがちなのは、多くの方々が ご指摘される通り。{※その二つの物語の並列ぶりを、上手く見せる作品もありますけどね。}

ちなみに『怪獣映画』といえば、先日 映画『ゴジラ -1.0(注4)』を公開初日{2023年11月3日(金)}に観てたのですが、大変驚かされました。
というのも、「ゴジラ映画」とか「怪獣映画」という体裁だけでなく、ちゃんと「モンスター映画」としての体裁も整っていて、「主人公がゴジラへ向かっていく動機」も無理なく練りこまれていたのです。

まぁ正直言いたいことは色々とありますが(注5)(笑)、1954年に「キングコング(注6)」や「原子怪獣現る(注7)」といった『モンスター映画』を手本にした「ゴジラ(注8)」(の1作目)がヒットしたことで、日本で『怪獣映画』というジャンルがガラパゴス的に発展した歴史を考えると、約70年かけての『モンスター映画への回帰』ともいえる1作。嫌いにはなれません。

それでは、今週の締めの吃音短歌(注9)を…

胸の内 炎の龍の 熱情が 喋りに乗らず 宿主を焼く

【注釈】

注1)『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』

TBSラジオで2007年4月~2018年3月にかけて、土曜日の夜に放送されていたラジオ番組。略称は「タマフル」。

注2)三宅隆太

脚本家にして、映画監督、そして ” 脚本のお医者さん ” ことスクリプトドクターで、心理カウンセラー。
主な映像作品は『七つまでは神のうち』『呪怨 白い老女』等々。
主な書籍は『スクリプトドクターの脚本教室・初級編、中級編』『これなんで劇場公開しなかったんですか? スクリプトドクターが教える未公開映画の愉しみ方』等々。
また、ポッドキャストでは ご自身の番組『スクリプトドクターのサクゲキRadio2』を不定期配信中。

注3)ジョーズ

1975年に劇場公開された、スティーブン・スピルバーグ監督の出世作。
海水浴客で賑わう港町の沖合に現れた人食いサメと、駆除に乗り出す警察署長の対決を描く。

注4)ゴジラ-1.0

山崎貴監督作品。
敗戦直後の日本を舞台に、ゴジラの脅威とそれに立ち向かう人々を描く。

注5)色々言いたいこと

「 ” セリフで語りすぎる ” 問題」「(一部の役柄で顕著な) ” 思考等々が現代人にしか見えない ” 問題」「(ご都合主義展開のための) ” 劇中のGHQが仕事しなさ過ぎ ” 問題」「 ” 佐藤直紀さんと故・伊福部昭さんの劇伴(音楽)が水と油すぎる ” 問題」等々。

注6)キングコング

1933年に劇場公開された、「モンスター映画」そして「怪獣映画」の古典的名作。
映画撮影のために南海の孤島へ向かった一行の前に現れたのは、巨猿『キングコング』だった…。

注7)原子怪獣現る

1953年に制作された「モンスター映画」にして「怪獣映画」。
「核兵器の実験がモンスター出現の原因となる」という、数多くの類似作品を生み出すきっかけとなった作品。
北極圏で行われた核兵器の実験によって目覚めた恐竜リドサウルスの脅威を描く。

注8)ゴジラ

1954年に劇場公開され、「東宝特撮シリーズ」とも呼ばれる、特撮を駆使した作品群誕生の幕開けとなった作品。
核実験によって目覚めた、怪獣ゴジラの脅威を描く。

注9)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注10)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注10)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。

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