もし私が顧客に何がほしいかを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬がほしい」と答えただろう
出所:自動車王 フォード
仕事柄、新規事業や新商品・サービスにアンテナを張っている。
うえは、馬車しかない時代に自動車を作ったフォードの言葉。ほしいものを人に聞くのではなく、その人の行動の目的や動機を捉えることで、本当のニーズがなんなのか?それを満たす商品・サービスを考えることの重要性を日々感じている。
そんななか、日曜夜ドラの”CODE - 願いの代償 - ”にハマっている。
”CODE”というスマホアプリを中心としたドラマで、このアプリは一言で言えば、「願いをかなえ合うマッチングアプリ」。
UI/UXが気持ち悪くスゴイので、記録しておく。
”CODE”のユーザ体験の流れ
【ユーザ1】自分ではどうしようもできない願い事があるユーザ
願い事があるときに、スマホのメッセージ(LINEみたいなアプリ)で友人からCODEアプリの紹介が届く…❶
メッセージのQRコードをクリックするとアプリのDLが始まる
アプリを起動すると、「願い事を入力」と記載された画面が表示される…❷
願い事を書いて「決定」を押す(例:亡くなった妻の声が聞きたい)
「承認」と表示される
願い事が実現する(例:亡くなった妻が生前撮ったビデオが届く)…❸
「願いは叶いましたか?」とCODEが聞いてくる
一度使った後、友人から電話が来る。「すごいだろCODE。願いは叶ったか?任務は来たか?願い事がかなったあと、CODEから任務を実行するように指示される。それがCODEのルール。その任務を成功させたらまた願い事が叶う。人に話すなよ。誰もが手に入るアプリじゃない。じゃあな。」…❹
「願いは叶いましたか?」 はい or いいえ。「はい」をタップ
しばらくすると、アプリ通知で任務が届く
「指定の場所に行ってください」。場所に行くとアタッシュケースが置いてある。「アタッシュケースをここに運んでください」…❺
地図で示された場所に行くとさらに詳細な指示が来る。「B軽24(駐車場番号)に置いてください」。指定された場所にアタッシュケースを置くと、「10分以内に5km離れてください」。5kmの範囲表示と10分のカウントダウン。5km離れると、「任務完了」の表示。…❻
アプリを起動すると、「願い事を入力」する画面がまた表示される。
以後繰り返し
【ユーザ2】別のユーザ
一方、同時に別のユーザのCODEアプリでは、「指定の場所に行ってください」…❺
「B軽24(駐車場番号)に行ってください」。行くと【ユーザ1】が置いたアタッシュケースが置いてあり、中には拳銃とマスクが入っている。「現金輸送車から1億円を強奪してください」。現金輸送車がくる。…❻
任務を無視すると、「警告」「任務を直ちに遂行してください」「任務に失敗すると制裁がくだります」。それでも遂行しないと、「任務失敗」「制裁実行」。ライフが3つあり、任務失敗3回目には制裁として、車に轢かれるなどして死ぬ。…❼
”CODE”のUI/UXが気持ち悪くスゴイ点
❶願い事があるときに、友人から紹介される
自分ではどうしようもできない願い事がある、ということを自動で判定されて、しかもAIが友人になりすまして、レコメンドしてくる。❷超シンプルな初回オンボーディング
現実世界のようなユーザ情報入力は一切無い。「願いをかなえ合うマッチングアプリ」に直線で「願い事を入力」しかない。❸ふつうなら叶わない願い事が即座に実現される
亡くなった妻の生前に撮った自撮りビデオ、しかも、このユーザに対してのメッセージビデオが届く。妻のスマホから抜き取ってるのか?それとも誰かが任務でハッキングしたのか?は謎。❹願い事がかなった直後に、友人からのサポート
直後に、アフターフォロー(願いがかなったことの確認)+オンボーディング(この後の体験の流れ・ルール説明)+特別感の演出(人に話すな・誰もが手に入るアプリじゃない)を、AIが友人に成りすまして電話で説明してくる。
※仮にこの任務のことを初回オンボーディングで説明していたとしたら、ユーザは利用を躊躇したかもしれない。❺誰かの願い事を実現するためのアクションを切り分けて、ユーザが自動でアサインされる
上記の場合、少なくとも、誰かの「1億円がほしい」願い事をかなえるために、(1)拳銃を用意してアタッシュケースを置く人、(2)アタッシュケースを現金輸送車が来る場所に運ぶ人【ユーザ1】、(3)運ばれたアタッシュケースの中の拳銃で1億円を強奪する人【ユーザ2】の3人がアサインされている。❻迷わない詳細な手順指示
任務を手順に切り分けて、1つの手順を実行直後にその次の指示を端的タイムリーに提示してくる。この場所に行け⇒そこにあるものを持ってここに運べ⇒ここに置け⇒その場を離れろ。❼任務失敗の制裁と、さらにそれが段階的に強烈になる
任務失敗の制裁ルールが、ユーザを任務実行に駆り立てる。ライフが1つ減るごとにより強烈な制裁が実行されるようになっており、3つ無くなったら最終的には殺される。これにより、ライフが少ないユーザにはより過激な任務が課されるも、実行させることができる。しかも、この制裁を実行する人(上記例で言えば車で【ユーザ2】を轢き殺す人)もまた、CODEでアサインされている。
感想
個人情報保護や犯罪につながるリスクなどの常識や制約を抜きに、世の中にあるデータやAIを徹底的に活用するとどのようなサービスでどのような一連の体験を実現することができるのか?の1つの姿が描かれているものとして見ている。
例えば、chatgptは、何かゴールを定めればアクションにブレイクダウンしてくれる。そのアクションをgpsで実行できるユーザをアサインし指示することができたら、、?今のテクノロジーで手が届きそうな内容でリアリティある。
新しいプロダクトを考える時、顧客体験を考える時、離脱させずにいかに次のステップへと導くかを考える時に、このドラマで描かれているUI/UXや、ユーザの心理描写・行動はとても参考になる。
(参考)UI/UXデザインの原則本。この本の原則はすべて詰め込まれていると感じた
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