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『海のはじまり』を考える。 1話-①
フジテレビ7月期、月9新ドラマ『海のはじまり』
なんといっても脚本が生方美久さんということで、連続ドラマとしては『silent』『いちばんすきな花』に続き3作目。
プロデューサー:村瀬健さん、音楽:得田真裕さんをはじめとする、いわゆる『silent』チームの最新作。
遂に始まってしまったーーーー!
ということで、言いたいことが沢山あるので、個人的なポイントと呟きを記していきます。
全部、愛情です。
あと、しがない大学生の呟きなので大目に見てください。
生方美久ドラマティックユニバースの否定
期待してたんです、個人的には。
世の中の映像作品には、シネマティックユニバースというものがありまして。有名なのがMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)ですね。違う作品として制作された映画が、同じ世界線に存在していて、作品内のあらゆる点で連関していく作品群のことです。
他にも、僕の好きな木村聡志監督の作品たちはKCU(木村聡志・シネマティック・ユニバース)と呼ばれています。同じキャストは同じ役名でしか起用しないという信念のもと、同じ世界線の中で様々な物語を描かれています。(とても面白いのでぜひ)
今夏公開のものでいえば、『ラストマイル』ですよね。
こちらは「アンナチュラル」「MIU404」と繋がるシェアード・ユニバース・ムービーになっているということで、期待大です。
というのは前提のお話で、私は期待していたのです
「生方美久ドラマティックユニバース(UDU)」を!!
おそらく、『踊り場にて』『silent』『いちばんすきな花』これら三作では同じキャストさんが使われていなかったはずです。少なくともメインキャストでは。これはいずれ共通世界として描かれる布石がどこかに置かれているのでは……と個人的に睨んでいたのだが……(笑)
なので『海のはじまり』で主演が目黒蓮さんだと聞いたときは、シェアードユニバースはやらないのか、とアテが外れて悔しかったですけど、びっくりしたのと同時に期待が膨らみました。他のキャストさんでも、主人公の娘役・泉谷星奈さんは『いちばんすきな花』で夜々ちゃん(今田美桜)の幼少期を演じられていた方だし、元恋人水季の父役・利重剛さんは『silent』で想くん(目黒蓮)の父親役をされていた方なので、とても楽しみです。
個人的感情はここまでにして、以降は本編から。
海と水季が海辺を歩く
もう映画。映画だよ。
シネマスコープかと思った。
それにしても、この海の広さとその幅をテレビサイズでここまで幅広く魅せられるのか。恐るべし。
「どこから海?」という海ちゃんの問いから始まる物語。
海が水季のもとを離れ、少し先へ行き、心配そうに振り返る。
「いるから大丈夫。行きたい方 行きな」と水季が海に語りかける。
「生きたい方 生きな」に聴こえたのは僕だけだろうか?
今後、物語が海ちゃんの成長のどこまで描かれるのか分からないが、亡くなってしまう水季の親としての海への思いが表出した瞬間のような気がする。
主人公・月岡夏の食住
そして小田急!きましたね
『silent』の舞台は世田谷代田~下北沢、『いちばんすきな花』は桜新町でしたが、今度は経堂ですか!(地元すぎる)
食卓から
経堂住みの社会人、月岡夏(目黒蓮)が現在の彼女、百瀬弥生(有村架純)と夜ご飯を食べるシーンから。
テーブルの上を見ると、炊いたご飯、スーパーで買ってきた惣菜(コロッケ、ほうれん草のナムル?)、枝豆、弥生が作った野菜炒め、酒(ビール?)が並ぶ。惣菜をパックのまま並べる妙な生活感と、酒のつまみにと用意されたおそらく冷凍のものを解凍したであろう枝豆(完全な妄想)
おそらく弥生が来ない日のテーブルには、野菜炒めはおろか、ほうれん草のナムルさえ並ばないのだろう。
コロッケから食べ始める夏と、ほうれん草から食べる弥生。
この絶妙にリアルな男女の対比がよい。
で、字幕を付けて初めて気づいたが、ここで夏が弥生のことを「弥生さん」と呼んでいた。前のシーンで弥生が年下の男性(=夏)と付き合っていることが明かされていたが、夏は弥生のことをさん付けで呼んでいるのだ。そして弥生は夏のことを「月岡くん」と呼んでいる。公式の相関図的には交際期間が3年と明記されているので、名前で呼び合う設定にしてもよかったと思うが、互いを尊敬しあっているという描写なのか。心理的距離を感じる。なぜ下の名前で呼ぶ描写にしなかったのか。今後注視したいところ。
夏の部屋
この大学生感がたまらない。
雑多に置かれた書類や本、雑貨、それでもきちんと整頓されているし、見苦しくない。印刷会社勤務の夏という設定から、あまりデジタルに傾倒せず紙を愛しているからなのか、部屋には紙が至る所に置かれている。(おそらく今後水季と夏の趣味に関する回想が挟まり、それぞれの職場に就いたことが明かされるのか……?)
そして、冷蔵庫の上に電子レンジ、その上にトースター。やるよね(笑)
実家の夏の部屋にあった服から、八幡山東高校出身であるということがわかる。(だからなんだよ)いや、夏の一人暮らしが経堂だとして、八幡山は自転車圏内なので実家がどこにあるのかが気になってしまって……。
夏が大学生のころから一人暮らししているので、それなりに実家との距離があるのではと思ってしまったがそうではないのか?
という疑問と、夏は大学生の頃から同じ部屋に住んでいる点。水季と8年ほど会ってないというので8年以上はあの部屋に住んでいることになる。経堂周辺で、ワンルームではなく居間+寝室+広めの玄関。家賃高そう、と思って調べてみたら選べば2Kでも月8万くらいで借りれそうではあるのか。
水季の葬式と回想
死因が明かされない。(後半、病気だったみたいとは言っている)
「一人で生きていけなかったからいま葬式をしてるんだろ」という夏の言葉がひっかかるが、これは何を示唆してるのか?
生方美久さんのインタビューを見るとある程度推測できるのだが、今後上手く描かれそうなので書かないでおく。気になる方は、以下。
androidユーザーが置いていかれる表現
みなさん気づかなかったでしょう!iPhoneマジョリティの方々!!
夏がスマホのアルバムを上にスクロールして過去の写真に遡るシーンですよ。
我らAndroidユーザー(Googleフォトユーザー)は過去の写真が下にくるんですね!!へっ!!
よって「アルバムを上にスクロールする行為=過去に遡る」という映像表現は不文律になり得ないのである!
と言うことに気づいた今日この頃。別に怒ってはいない、戸惑っただけ。
あと、井の頭公園でボートに乗っている写真がありますね。これは、別れます。あ、別れてるか。というのはどうでもよくて。
『silent』との共通項
違うドラマとの共通点を探ってどうすんだ、って話ですけど、思っちゃたし制作チームがsilentの方々なので。
僕が気づいた点を挙げると主に以下3つ。(目黒蓮さんとか小田急とかは省く)
① スピッツ
② ワイヤレスイヤホン
③「好きな人ができた」
①スピッツ
でました!スピッツ。
『silent』で重要な役割を果たしたスピッツ。
想くんがスピッツが好きで、それに影響されて聴くようになった紬ちゃん。あのときは「魔法のコトバ」がでてきましたね。「また会えるよ 約束しなくても」が視聴者の希望となる重要な歌詞でした。
今回の曲は「渚」。
「幻よ 醒めないで」という歌詞で回想から現在に戻りました。
②ワイヤレスイヤホン
数多の物語で描かれてきたイヤホン。有線の時代は恋人が片耳ずつ付けて一つのプレーヤーで聴く、というのが主流でしたが、現代はワイヤレス。無線イヤホンを片耳ずつ付けたって粋な表現にはならない。そこで『silent』で行われた手法、「転がるワイヤレスイヤホン」という新しい機能。落としたらそこにとどまるわけでなく「転がって」しまう、というあるあるから想くんと紬ちゃんが再会したでおなじみのワイヤレスイヤホン。
今回も出てきました。
今回は、耳栓、ですか。大人たちが海ちゃんのことを「かわいそう」と口々に言う雑音を聞こえないようにするため、ワイヤレスイヤホンを渡す夏。そのイヤホンからは夏が水季と過ごした時間が流れてくる。そこで、時空を超えて海はメッセージを受け取っていた。一種のタイムマシンのような機能。
ワイヤレスイヤホン、おっきいよね。子供には大きいよね。
両耳押さえてないと落ちちゃうんだよね。
③好きな人ができた
水季が夏に別れを告げる場面。
水季は「別れよ。夏くんよりも好きな人ができちゃった」と言う。
思い出すよね。
『silent』
難聴に苦しんだ想くんが紬ちゃんを振ったときは、LINEで【好きな人がいる。別れたい】だった。
想と再会した紬に対し、湊斗が紬を振ったときは、対面で「別れよ。好きな人がいるから」だった。
どちらも「好きな人」=「紬」であり、紬の気持ちを考えた別れであった。
今回はどうか。「夏くんよりも好きな人」はおそらくおなかの中の海ちゃんのことであろう。
真顔で「誰」って聞く夏。
夏「散々振り回されておいて、どうせ最後は捨てられる」
この言葉が海にとって、水季の死で現実になってしまうのが皮肉である。
主題:「産めない」男
人工妊娠中絶の書類にサインを求める水季。
他の選択肢はないの?という夏に対して
水季は「考えて決めた。夏君はおろすことも産むことも出来ないんだよ。私が決めていいでしょ?」と言った。
朱音(大竹しのぶ)から海が自分の子であると伝えられた夏。
夏「何も知らなくて」
朱音「ええ知らないでしょうね。男の人は隠されたら知りようがないですものね。妊娠も出産もしないで父親になれちゃうんだから」
この物語の主題はここにある。
「産む」という機能が備わっていない男性側に生じる責任。
本作の脚本家・生方美久さんは助産師と看護師を経て脚本家になられた方だという点も踏まえながら、物語を見つめていくべきなのだ。
さいごに
つらつら振り返っていたら4000字を超えていた。レポートかよ。
予告的にも、次回は現在の彼女・弥生(有村架純)が中心に描かれそう。
彼女の感情にどう寄り添うか、彼女は何を選択するのか。
1話の中に出てきた「終わり」という表現。
タイトルが「海のはじまり」であるから「はじまり」「おわり」の表現はこれからも多用されそう。
『いちばんすきな花』からひとつ思い出した。
二人だけの教室で数学の問題を解いている希子と朔也。
ゆくえ、入室して
ゆくえ「終わった?」
朔也「終わりました」
希子「いろんな意味で終わった」
ゆくえ「ん、大丈夫。終われば何かしら次が始まる」
ここの「終わることは何かのはじまりだ」というメッセージが、本作を貫くメッセージになっていくのかもしれない。
あと、クリフハンガー、なかったよね?
silentにはあって、いちばんすきな花には無かったもの。
恐らく、海のはじまりでもクリフハンガーはない方向で……?
最後に一つ。
「海」を冠する話で葬式から始まる物語。
どうしても『海街diary』を連想してしまう。
大竹しのぶ出てるし(笑)
以上、1話のメモでした。
長文読んでくれた方、ありがとう。