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装丁を作るときに考えていること


第一話を書いたので装丁作っていいね?

こんばんは。2025.10.5の文学フリマ福岡11に出るぞ、と決意し、年度が明けたら再びの副業申請するべくドキドキしている者です。今年はスーパーやさしい上司だったので何とかなったけど、来年度は果たしてどうなるか。
そういう現実的な大変さはさておき、文フリ福岡出店に向けて、新作を何か用意していきたいぞと考えて、今朝「おとしばなし」をUPしました。

「マイコー」の(脳内)企画段階でも意識した、私は会話文をノーストレスで書けるという点を極限まで活かし、「9割9分会話文で構成しちゃったらどうなるの?」「それってほぼ落語なんじゃないの?」「でも『それはシナリオだろ』って言われたら何か悔しいから、古典落語を下敷きにしよう」という発想から生まれました。
書いていて、もう何が面白くて何が面白くないのか分からない、というフェーズに早々に突入したので、いったん第一話をUPしてみました……
あたたかい感想をいただけたので、この感じで続きを書いていきたいと思います。

というわけで、第一話を書き、一応方向性は大失敗ではないだろうと確認したので、心置きなく装丁づくりに入りました。


誰も求めてないけど、140字では語り切れない装丁の話をしたくてたまらない

文フリ京都に出店して分かったのが、「装丁のパワー」です。
衝撃的な出来事がありまして。
「針を~」をお買い求めくださったお客様に
「どこでお知りになったんですか?」
と尋ねたところ、
「すれ違った人が持っていた『針を』の装丁が可愛かったから」
とのこと。

すごい。
ちっこい文庫本なのに、それでも装丁はすれ違いざまに視界に入り「可愛い」と認知されるものなのか……。

また、終了間際に見本誌コーナーに行くと、やっぱり各作品入り乱れ状態なんですけど、そんな中でも真っ赤な「マイコ―」は目立っていたんです。
その光景を見たら、
「余程デザイン上の理由がない限りは、視界にパッと飛び込むはっきりした色を使いたい」
と思うようになりました。

はい、また文学の本質と関係ない方向に行っちゃってるんですけど……いやでも、上の「おとしばなし」第一話を読んだら、私がめちゃくちゃ楽しんで書いていることは絶対伝わると思うのです。文学を楽しんでいるのだから、装丁に戦略的になったっていいじゃない……白じゃなく赤の装丁にするくらいいいじゃない……。
そんな思いで作った装丁(バージョン1)はこちらです。


バージョン1「和洋折衷」

サイズはA5。

まず、一番最初に決めたことが「フォントをめちゃくちゃ大きくする」ことです。
理由は、アイキャッチ効果もありますが、今回のタイトルが平仮名6文字であり、「し」で韻踏みっぽくなっている。音的にも字面的にもキャッチ―で、しかも平仮名なのでデザイン系フォントの選択肢が漢字よりはるかに多い。せっかくだからフォント使いを楽しもうということで、タイトルロゴを装丁の主役にしよう、と思いました。

そう考えた時に、「あれ使いたいんだよなぁ」と思ったのが、大好きフロップデザインさんの「はつゆめすけーぷ」。

太い線と、カスレが筆文字っぽくて、ポップだけど和の雰囲気もある。今回目指すところにぴったり!
ですが……こちら有料なんですよね。いや全然お金出して買わせていただきたいんですが、ホラ私、装丁コロッコロ変えるじゃないですか……
せっかく有料フォント買っといて、最終的に別の装丁にしたら、「何だったんだあれは」ってなってしまいそうだな、と。

まだバージョン1だし、いったんフリーフォントでやってみよ? ということで選んだのが「おりがみ」。

くぅ……この可愛さ自由さ、ひらがなフォントでしかできないやつ……。
おりがみ自体日本の遊びですし、ちょっとお札っぽい感じもいいなと思い使いました。
でも、和一辺倒にはしたくなかったので、背景は洋テイストの、レース風のイラストを選び、著者名もアルファベット表記にしました。

色は、ブランドカラーに選んでおきながら文フリ京都で一切使用しなかった、青みグリーンと、飽きるほど使い倒した青みピンク。
なお彼らは印刷すると予想以上に色が濃いので注意。いや注意しなきゃいけないの私だけですけど。

と、ここまでの説明を踏まえて、もう一度ご覧ください。


かわいい。見本誌コーナーでもちゃんと目立ちそう。
若干の耽美み(耽美みって……)もあり、BLですよと言われれば、ああBLですかとなる雰囲気。すごいな、この一文の内容の薄さ。語彙力がない。


バージョン2「ファンシ~注文の多い料理店」

バージョン1でも全然よかったのに、第一話書けました記念でもう一度作りました。
そう、バージョン1は、プロット作成段階で見切り発車した装丁案……。もう装丁だけ作っていたい。次回、無配で「この装丁が出来るまでの全案」の冊子作るか? いや全然宣伝になりませんけど。

今回は動物のイラストを使いたいという気持ちもあったので、Canvaでポチポチ素材探しをしていたところ、右側のキリンのイラストを発見。
「おとしばなし」をすでに読まれた方はお分かりかと思いますが、「おとしばなし」は「針を置いたらあの海へ」のレオとたっちゃんのお話なんですね~(嬉)
文フリ福岡出店ということで、関門海峡を舞台にした「針を」は、ご当地小説としてPRできるぞ、ということに気づきました。
また、現時点では文フリ福岡で「針を」は終売にすると決めているので、二人を華々しく見送ったろやないかい! ということで、もう一度レオとたっちゃんのお話を書くことにしました。
「おとしばなし」は、単体で売ることができるように、「針を」から引き続くネタは抑えめにするつもりなので、うまくいきそうだったら今後も売り続けたい……って、あと何回文フリ出る気なの?

脱線しましたが、背高くて柄入ってるたっちゃんはキリン、レオは名前そのままライオンにし、男性の立ち絵のイラストと組み合わせて、人面犬ならぬライオン面人間とキリン面人間にしました。「針を」の装丁の、お花面人間(レオ)とも繋がります。

お花面人間レオ。耽美みを意識。

男性二人の立ち姿、ということで、映画「ゴーストワールド」のポスターみたいにしたいなと思い、サイズ感と色の強さをゴーストワールドに寄せました。

でも、これを白背景にするとまんまゴーストワールドですし、見本誌コーナーで目立たない(こればっかりかよ)(そうだよ?)ので、うーん、と考えた結果、
「皿に載せよう」
と思いました。
ちょっと不気味な感じにしたかったのです。宮沢賢治の「注文の多い料理店」のように。
しかし、平皿だとあんまり絵にならないので、ケーキスタンドにしました。幸い、Canvaにかなり可愛い素材があったので、背景を切り抜いてポンと設置。ケーキスタンドの色味とのバランスから、ブランドカラーより少し黄みよりのピンクを選びました。
そして、当初から決めていた「デザイン系のひらがなフォントをでっかく載せる」について。
ここまでの、ピンク×ケーキスタンド×動物人間イラストの時点で、結構ヨーロピアンな雰囲気になっていました。それに和っぽいフォントを足すのはさすがに難しすぎる、ということで、完全に洋に振り切って選んだのがこちら。

ひらがななんだけど、限りなく筆記体アルファベットに近いデザイン。これも使いたいけどなかなか使う機会がなかったので、ここぞとばかりに使用しました。
ただ、さすがに文字として読めるか読めないかぎりぎりのデザインなので、タイトルロゴというよりは、全体のデザインの背景にし、タイトルロゴは小さめで読みやすく、やっぱり洋の香りのある「刻明朝」にしました。

刻明朝は、「モリスと四人の男たち」でも使用したフォントです。ウィリアム・モリスの絵にも違和感なく合わせられる、読みやすくもデコラティブな雰囲気。

タイトルの配置、毎回苦労するのですが、今回はケーキスタンドの上に2人の立ち絵という、縦のラインが強いレイアウトなのと、「かぱかな」で書いたおとしばなしが2人の両側に配置されているので、タイトルは2人の間に縦に入れました。
タイトルの色は真っ黒だとちょっと全体の色味に対して強すぎるし、強い色は2人のイラストだけに使いたいので、黒ではなくグレーにしました。

と、いうのを踏まえてもう一度ご覧ください。

可愛い~。
これを、パール入りの紙に印刷するか、オーソドックスにクリアPPのつやつや仕上げにするか、あえてマットPPやベルベットPPにするか。楽しい悩みです。
ピンク背景に男性二人の立ち絵って、まぁたぶんBLだろ、ということが伝わる一方で、まさかこの感じで中身が落語だとは思わんだろう、というギャップもあり、だいぶ気に入っています。


話が長すぎる。

140字では書ききれないことを~とか言っといて、3,500字書いてる……装丁の話したすぎるでしょ……。
本当に、10パターンくらいの架空装丁本を作りたい。
せっかく装丁も作ったことですし、ちゃんと製本できるよう、続きも頑張って書きます! 正直、装丁をはじめとするデザインが同人の醍醐味でもあるなと思ってます。

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早時期 仮名子*文学フリマ京都9う-21
もっといい小説を書きます!

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