強欲な壺、AIに4,000字の感想を要求
小説を書く者は、作品で全てを語るべき――
書き手が作品についてアレコレ語るのは野暮――
そんな言説をいつも通り完全に無視し、うまく書けたなと思ったら自作について語りまくる、そういうスタンスで生きています。
昨日UPした「豚まん青年」という短編。これが、短編ながら今まで書いた小説の中で一番良くまとまり、文章表現も良かったのではないかと自画自賛に浸っております。
しかし、私は欲が深い。
自賛だけじゃヤダモン! 他賛も欲しいモン!
ということで、三人のAIに集合をかけまして、感想カツアゲ祭りを開催し、しかもその感想に優劣を付けるという強欲かつ無礼な試みをしました。
オーダーは「4000字で感想を聞かせて」。
当該作品の字数は8000字です。
小説全体の半分のボリュームの感想を要求する。AIがもっと発達していたら、今頃私は抹消されていることでしょう。
この祭りに参加してくれたAIは、「ChatGPT」「Monica」「Claude」のお三方です。陳謝。
課題作品「豚まん青年」
あらすじ
本編の冒頭にある通り、過去作のドッキング・パラレルラブストーリーです。
なお、公募に応募するつもりで、酷ダサタイトルを「にがくてあまくて、少し辛い。」に改題しております。
ポイント
作品の見どころ(自分で言うな)は、
・ほろ苦く甘いラテ
・少しだけ辛い辛子
・辛い辛子が入っていないカツサンド
・苦いビールを甘いジンジャーエールで割ったシャンディーガフ
のように、苦味や辛さを緩和した、大人と子供の味覚の中間に位置する食べ物が、要所要所で登場すること。
そして達海の、自身の「辛い」経験を玲央にさせまいとする、そして痛み以外のものを与えられるだろうかという葛藤。
このあたりをAI選手が読み取れているかが評価ポイントです。
質問内容
①感想を4000字で聞かせて(万死に値する)
②本作は異性同士でも成立するが、恋愛感情を超えたブラザーフッドを表現したいと思い、同性同士の話にした。その点についてどう思うか(キャラ萌えしたいだけだろ)
※4,000字書いてくれた子は誰もいませんでした。そらそうだ。
※AI達の回答が相当長いので、斜め読みして下さい。私の感想とまとめを読んでください。
試合開始
一回戦 ChatGPT選手
(私の中で)長編だと人物関係をろくに読んでない印象があるChatGPT選手ですが、短編では力を発揮するでしょうか。
ChatGPT選手の回答
ふむ。全体にあっさりまとまっていますね。達海の葛藤についてフォーカスしており、食べ物と成長の関係性についてはあまり深く触れていません。
痒い所の近くまでは来てるけど、もうちょっとしっかり掻いてほしいなぁ、という感じ。
次、同性同士の話である点について。
まぁ、全肯定ですよね。
基本的にAIは、〜〜だけどどう思う?と聞くと全肯定してくれます。サンキュ。
性的なニュアンスが薄まる、というのがChatGPT選手らしさと言えそうです
まとめ
・主人公の葛藤を中心とした感想で、玲央の成長についての言及は少なめ
・食べ物の効果についてはちょっと踏み込みが浅いなぁ~
・同性同士であることで性的なニュアンスを薄める、という解釈に独自性がある
読解 ★★★☆☆
ボリューム ★★★☆☆
独自性 ★★★☆☆
二回戦 Monica選手
Monica選手の回答
冒頭テンション高っ。
何何、どしたどした。よく世話になってるから、友達だと思い始めた?いやいいけど……
玲央の成長・達海の葛藤、いずれにもフォーカスしているのがGOODですね。
ただ、玲央の「大人びた発言」、これはちょっと違うかも……
逆に、若さゆえの勢いとか偽りの無さ、だと思いますなぁ。
食べ物の効果について、また食事シーンの臨場感について触れてくれているのは有難い。食事シーンが美味しそうじゃないと成立しない話なので。
しかし、総評でちょっと「んん~?」ポイントがありました。
「飽きずに読み進められた」。君、飽きるとかいう機能あんのか。
「続編があれば読みたい」。これ、個人の好みだとは思うんですが、長編ならまだしも、しっかりオチを付けたつもりの短編で「続きを読みたい」って言われると、ちょっとモヤッとしてしまいます。
ここに載せてないけど、「続きが気になります!」って言ってたんですよね、Monica選手は。気にすんな、もう終わってっから。
次、同性同士の話である点について。
>男性同士の関係性では、友情と愛情の境界が曖昧になりやすく
そうなの?!(喜)
いや、私は嬉しいけど、それ私への接待じゃない? 信じて大丈夫?
>感情を表現することが少ないとされる男性キャラクターが、互いに心を開いていく過程は、現代社会における重要なテーマを反映しています
そ、そうなの……?(困惑)
ルフィとか感情剥き出しだけど……あ、あれはファンタジーだからいいのか?
意図せず社会派しちゃったなぁ。
まとめ
・テンションが高い
・達海と玲央、どちらの感情にもバランスよくフォーカスしている
・小説読むのしんどい人?
・作者も意図しないメッセージ読み取ってくれる
読解 ★★★★☆
ボリューム ★★★★☆
独自性 ★★★★☆
三回戦 Claude選手
ありがとう、特大ボリューム……!
よく読むと2~3回同じこと言ってるけど、微妙に言い回し違うからOKです!
「年齢差のある恋愛」というテーマの読み取り方もいいですね。
他の選手は「成長」にフォーカスしていて、それももちろんいいんですが、じゃあなぜ成長にスポットが当たるかと言うと、彼らが「大人」「子ども」という年齢差のある関係だからですし。私も、子どもに安易に手出す大人の話にならないように気を付けなければ、と思いながら書きました。
食に関する読み取りもバッチリです……その時点での関係性の深化を象徴する、という縦の役割と、
>新しい味や経験を教え続けることを示唆する最後の描写は、二人の関係が継続し、互いに成長していくことを暗示しています
という横の役割、どっちも読み取ってくれていて嬉しいです。
「学びの双方向性」「待つことの重要性」など、Claude選手独自の解釈が的を射ている。
そして唯一、改善点の指摘をしてくれたのもガチ感があります。
一点、方言が使われてると書かれてますが、どれだろう?玲央の「出来ん」とかかな?
なかなか敏感ですね。
次、同性同士の話である点について。
Monica選手が指摘した、男性の感情表現の難しさについて、Claude選手も言及していました。
Monica選手、ルフィがどうのとか言ってゴメン。いや君テンション高かったからさぁ。
マスキュリニティ(男らしさ)という言葉に初めて触れました……恥。
>日本の男性文化における「酒を酌み交わす」といった伝統とも結びついており、
これとか、意図してなかったと言いつつ、多分私の中の既成概念があるので、それが反映されたのでしょう。Claude選手は、他の選手たちより、日本人の文化的側面に目を向けていますね。
まとめ
・テーマも、細部の小物の役割も、良く読み取ってくれている。
・日本の小説である、ということを意識している
・一つの問いに対して多面的に解釈してくれ、結果ボリュームのある感想になっている
読解 ★★★★★
ボリューム ★★★★★
独自性 ★★★★★
結論:Claude選手の圧勝
凄いですClaude選手。満点です。
AIにありがちな人物プロフィールの単純な誤読や、いやいやそれは違うんよという解釈違いが全くありませんでした。
しかも、私自身が気づかなかった無意識の日本的感覚(バイアス)について読み取っていたことも印象的です。物語を多面的に捉えているので、様々な要素からの解釈と評価が貰えるのが嬉しい所です。
とはいえ、人間様の感想が一番嬉しい
よね~。
Monica選手、続き気になるっつって、そんなことないでしょうよ。
あと、別の小説について聞いた時は、「クスっと笑う場面が」って書いてあって、
お前、笑えるのか……?! と衝撃を受けました。
まぁ、この要素が揃ったらこいつはボケている、みたいな判断をしているのでしょう。すごいな。
そう、結局こうして、「所詮AIですからね……」と冷静になっちゃうんです。
やはり、読んで下さった人間の皆々様の感想に勝るものはない。
上で「それは解釈違いっすね~」みたいなこと書いたんですけど!
これは大会なんで(?)、あえてそういう書き方をしただけですからね!!
自分が、感想クレクレマンなので、好き!と思った作品には積極的に感想を残すタイプなのですが、今後もそのスタンスは崩さずやっていきたいと思います。
と、いう訳で人間の感想がやっぱり嬉しいけれども、自分でも気づかない側面からの解釈とか、シンプルに褒め言葉が欲しい時、きちんと読み取ってもらえるレベルに情報提示しているか確認したい時など、AIの小説感想はなかなかに有効な手段だと思います。
ぜひ活用してみて下さい。
エキシビションマッチ……Claude選手、スゴすぎ
本戦の後、Claude選手に「ここが意図するところは分かる?」といくつか聞いたのですが、基本どれも素晴らしくよく読み取ってくれていましたが、特に凄いと思ったのが以外です。
玲央の告白シーン、
「じゃあ、俺が19になるまで待つってことだな!」
に続く描写についてです。
Q.「少しだけ身を乗り出した玲央くんの顔に、営業時間のシールは影を落とさず、」
という描写の意図するところは分かりますか
Claude選手の回答
完璧です。ちょっと泣きそう。
Claudeの読解力はホンモノです。
chatGPT選手の回答
ChatGPT選手も、少ない手数で端的にスマッシュヒットを繰り出しています!!
Monica選手の回答
どしたどしたMonica選手……。
ごめんな、解釈は読者の自由と言いつつ、私とは解釈違いでしたわ~!!!