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【マンガ感想】隠れた名作を紹介したい前編【個人差あります/日暮キノコ】

この間山月記の記事を書きました。その記事が案外たくさんの方にご覧いただけたので気を良くして個人の性癖をぶつける記事を書きたいと思います。
(ここでの性癖とは趣味を表し性的な意味を含みません。)

この記事にはコミックス1巻のあらすじ程度のネタバレが含まれます。
アマゾン商品ページの内容と同レベルです。
ご注意ください。

皆さんは今回紹介する「個人差あります」をご存知でしょうか?
2020年に全6巻で完結したマンガで「喰う寝るふたり 住むふたり」「ふつつか者の兄ですが」の作者、日暮キノコ先生の作品です。

1ページ目がこちら。

日暮キノコ「個人差あります個人差あります(1)」 (モーニングコミックス, 2019年)6項。

販売される上でのジャンルはTSFなので、日暮先生は好きだけど読んでないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

この作品めちゃくちゃ良いメッセージとんでもない完成度の高さで表現しているんですけど、あんまり人気が無いんですよね。
私は隠れた名作だと思っています。

ざっくり評価
ストーリー★★★★★
画力   ★★★★
マンガ技術★★★

今回はストーリーや表現したかった事を伝えたい記事です。
そのため画力・マンガ技術は簡単に触れる程度にします。

ストーリー★★★★★

【概要】

異性化”がある世界の夫婦、あきら苑子そのこの物語です。
”異性化”とは、身体的な性別が突如変わってしまう症状です。読んでいただければ分かりますが、身体的に男だった人間が突如女になったりします。
らんま1/2を想像してもらえれば分かりやすいかな、と。
例えが古いでしょうかねw。

昌()、苑子(女)の夫婦が突如、昌()、苑子(女)の夫婦になってしまう話です。
それはもう大変なことなんです!

考えても見てください。
ご結婚されている、ないしそれに類する方はパートナーの性別が変わってしまったらどうでしょうか?
未婚の方は両親や友人の性別が変わってしまったら?
ファッ!?ってなりますよねw。
その事実を受け入れられない事すらありそうです。

でも安心してください。現実世界では”異性化”は報告されていません
自らの意思で性別を変えた方はいても、勝手に変わる事は無い世界なんです。
良かったですね。(本当か?)

話を本作に戻すと、昌と苑子の二人の心情描写や選択を噛みしめる物語になっています。

そろそろ良い頃合いなので1巻のリンクを貼っておきますねw。


【登場人物全員に魂が宿っている】

この物語の凄いところは、全てのキャラクタにしっかりとした個性があり、キャラ立ちしているところです。
そして、そのキャラクタ達が物語として重要なセリフをめちゃくちゃ自然に言うんです。

多くの読者が、重要なセリフだと気づかないくらいに自然に。

自然というのは、現実世界に居そうな人間という意味です。
その分、特定の事柄に対して不理解があったり、セクハラ紛いの発言をしたりと良い人間ばかりではありません。
でも、そのリアリティが作品のテーマとドンピシャにマッチしています。
読み返して見るとそういう人間の何気ないセリフにも考えさせられる部分があって凄く重厚なストーリーになっています。

画力   ★★★★

キャラクタの書き分けが上手です。
キャラデザも幅が広く、物語での役割を考えて作られています。
具体的には、顔や骨格、年齢の幅が広いです。
社会人(30代)が主人公で、子供が出てきたり、取引先などで年配の方も出てきます。それがしっかりと絵から読み取れるので安心して読めます。
(少女マンガなどでモブに至るまで全員イケメンだったり、親子なのに同じ年齢に見えたりすることがありますけど、そういう事は無いです。)

背景もしっかりしていますし、手や小物などのオブジェクトも丁寧に作画してあります。

圧倒的な画力で押し切る事はありませんが、作品のテーマとマッチした落ち着いた絵になっています。

一応減点理由を書いておくと、振り向きなどのアングルで一部不安になるところがあったりはしました。
そのくらいです。普通に読む分には気にならないと思います。

マンガ技術★★★

コマ割りや構図に関しては特別に凄いとは感じませんでした。
バトルマンガではなく社会人の人間ドラマなので、会話パートが多いです。
でもそれが気になりにくいようにコマを割っているので、読んでいて単調だと感じることは無いです。

何よりストーリーが刺激的なので単調とは感じないとは思います。


まとめ

今回はネタバレほぼ無しの記事になりました。
ネタバレやテーマの考察を知る前に読んでいただきたいです。
初見で読んだ時に感じる事がとても重要です。それは自分を見つめ直したり思い返す事で、とても良い気づきがあると思うからです。

現代に生きる我々にとって価値のあるもので、これからは常識になっていく狭間の時代です。
今だからこそ、読む価値があるのです。
また、私のような人間に「こうなんだよ」と言われる以上に自分で読んだ方が響くと思います。

後編では、「こうなんだよ」と知ったかぶりをしたいと思います。
後編もよろしくお願いします!


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