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基礎生命科学I(R7前期先取り履修用情報公開)⑧受講理由(メリット)

 これまで7つのnote記事でご紹介してきた基礎生命科学I(高校生先取り履修制度の対象科目)ですが、まだ制度がやっと本格的に始まったばかりで、実際に講義を担当する私たち大学教員も実はあれこれと模索している最中、というのが正直なところです。そもそも先取り履修科目基礎生命科学Iはどう受講するのがいいのか?受講したほうがいいのはどんな人で、受講することでどんなメリットがあるのか・何の役に立つのか?多くの方が興味や疑問をお持ちのポイントかもしれません。そこで、おそらく最後になるこの8つ目の記事で、その点についての私の考えを少しお伝えしてみたいと思います。

❶対面受講は無理でも遠隔聴講を可能に(単位は修得できません)

 以前の記事にも書きましたが、高校に通学しながら先取り履修制度を利用して月〜金曜の昼間に大学の授業に出席することは、ほとんどの高校生にとってまず不可能でしょう。大学によっては全ての回をオンデマンド受講することが可能な授業も開講されているようですが、私の所属する大学では残念ながら対面受講が原則となっております。そこで、対面で出席できない方のために、単位は取れなくても遠隔聴講だけはできるようにする方向で準備しております。具体的には、大部分の教材を大学ホームページ(UNIPA)等で履修者に限定して公開し、オンデマンド受講することを可能にする予定です(残念ながら対面授業の全内容を公開するのは困難ですので、その点はあらかじめご了承ください)。残念ながら出席しないと単位は修得できませんが、遠隔聴講を可能にすることで少しでも履修者が増えてくれることを願っております。

 事務的な話をすると、当科目は2単位なので聴講料が授業15回で14,800円になります。そこで次の問題は、1回あたり約1,000円の聴講料を払う価値があるのか、ということになるかと思います。その価値をお伝えするために、これまで記事を7つ公開して内容をご紹介してきました。今回の8つ目の記事では、受講目的(メリット)やこれまでの背景についてもご説明しておきます。

 なお、高校生先取り履修制度は高校生のみが対象ですが、他の受講形態である社会人科目等履修生や社会人聴講生の方の受講も想定しておりますので、ご参考にしていただければ幸いです。【随時更新予定(変更があった場合のみ)】

※正式な授業予定は大学ホームページ(UNIVERSAL PASSPORT: 以下、略してUNIPA)で3月下旬に公開予定
※以下の前記事「基礎生命科学I(R7前期 先取り履修用情報公開)①:概要&予定」をまだ読んでいない方は、まずそちらを先にお読みください。

❷受講するメリット:まず一般論から

 まず最初に、英語学習の基本は何と言っても英語を正しく理解することです。記事⑦で受講生からの感想をご紹介しましたが、この科目はいわゆる学校英語よりも深い英語理解につながる学びを提供するために様々な工夫を施しております。

ここで、私が授業でよく使う大雑把な分類をご紹介しておきます。
 L0. アドリブ英会話:学ばなくても可能な我流英語(一例が出川イングリッシュ)
 L1. 学校英語(受験英語)
:日本国内限定の学校教育用英語体系
 L2. 実用英語
:実はかなり幅広いジャンルを含みます
  a. VOA Learning English
:アメリカ英語を非英語圏に広めるため整理された英語
   (VOA Learning Englishは、旧称Special English)
  b. 生活英語:日常生活で身につく英語(ネイティブ中高生レベル:TOEIC相当)
  c. 高等教育英語:英語圏の高校・大学などの授業レベル(TOEFL相当)
   (分野別の業界用語の理解が必要、大学の科学英語もこれが目標)
 L3. 学術英語:英語専攻の学者・学生が学ぶ英語体系(英語専攻以外は不要)
   (学術英語は、英語専門家のための生成文法や認知言語学など)
Lの数字が大きいほど使われる単語・フレーズや文法が難しくなっていきます。逆に、Lの数字が小さいほど単語・フレーズや文法の範囲が狭く(ある意味で制約が多く)なる、ということもできます。

❸受講するメリット:実用英語

 さて、この科目はDUO 3.0VOA Learning Englishを教材として利用することで、学校英語よりハイレベルでありながら学術英語ほど難解な専門用語を使わずに日常生活や高等教育で使われている英語を紹介・説明することを目的としています。学校英語との違いを理解する鍵は以下の3つ。学校英語(受験英語)の枠を超えて留学や仕事にも活かせる実用英語が分かる・使える楽しさを味わってもらえれば幸いです。

  1. 学校英語(受験英語)と実用英語の違い:大学の入試問題には様々な制約があり、実は学校英語はガラパゴス化(受講してもらえばお分かり頂けるはず)

  2. 科学英語(理系英語):主に生物学ですが、医歯薬系も守備範囲

  3. 実際に日常的に使われている英語:DUO 3.0のドラマのセリフなど

  そうは言っても、これまで大学生を指導してきた経験から、学校英語を完璧に習得できている高校生は非常に少ないというのが現実です。さらに、共通テストで英文法問題が廃止された影響もあると思いますが、文法理解を深めないまま入学してくる学生が増えているという現状から目を背けることもできません。そこで、高校レベルの学校英語の復習部分も年々増やして対策しております。

 結論としては、学校英語の復習実用英語への導入がこの授業の目標。また、もとは科学英語がベースにあることから、科目名は「基礎生命科学I」となっております(英語科目であることは学内で配布される時間割の科目分類で明示されているため、科目名には入っておりません)。

❹受講するメリット:目標別

文系学生理系学生共通:学校英語に飽き足らない人に、科学的に正確な可算不可算の説明など、学校英語とは異なる視点からの英文法解説を提供します。そして、汎用性が高い日常英語の単語・フレーズをしっかり演習してもらいます。
理系学生:特に生物・医歯薬系の学部を希望している人は、生命科学に関する英文を読む必要があるはずです。そういう人向けに、生物学が専門の教員が文系の教員とは違う視点から英語を科学的に正確に解説します。ある意味で受験対策にもなりますが、大学は予備校ではありませんし、先取り履修科目は予備校の代わりではありません。過去問の解き方を指導することもありませんので、理不尽な期待はしないでください。

❺受講するメリット:過去の様々な指導経験

 英語は、大学での学部分類から類推して文学部系の文系科目と思われがちです。しかし、自然科学専攻の学生は大学在学中に英語で書かれた学術論文を読む機会が多いので、実は理系学生のほうが英語を習得する必要に迫られるということは意外と知られていないようです。また、特に医学部への入学を希望している方の中には、難易度の高い過去問に頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。
 ご参考のため、個人的な経験もご紹介しておきます。様々な院試で英語試験として採用されてるTOEICの個人指導を毎年のように4年生から依頼され、今でも個別にサポートしております(所属大学の学生限定)。それ以外に過去に一度だけ、公立の医科大学の編入試験対策を依頼されたこともあります(この時は学生の熱意もあり、所属大学を卒業することを確認した上でサポートし幸い見事に合格してくれました)。その時の授業内容は、①DUO語彙演習、②VOA和訳&英訳演習、③包括的な英文法解説、④過去問演習の4つでした(①②は今でも基礎生命科学Iで使っている教材で指導、③は下でご紹介する実用科学英語基礎編の教材を使用)。
 ただし、今は特定の大学の過去問対策などの特殊な依頼は全てお断りしており、サポートも一切しておりません。ただの大学教員である私よりも予備校の先生方のほうが経験値も高く、いい受験対策をしてもらえるはずです。この科目の目的は学校英語の範囲を超える英語を学んでもらうことであり、受講生からも高校で習っておきたかったという感想・コメントを多くいただいております。直接の受験対策こそありませんが、英語理解を深めたいという方は受講をご検討ください。

❻私が担当する先取り履修科目の予定

R7前期:基礎生命科学I(DUO演習前半、VOA演習前半、可算不可算解説)
R7後期:基礎生命科学II(DUO演習後半、VOA演習後半、冠詞・限定詞解説)
     実用科学英語基礎編(文法解説がメイン)
R8年度:基礎生命科学I&II、実用科学英語基礎編
    実用科学英語応用編(高難易度の生命科学系記事の和訳演習&解説)

※和訳演習はいずれも科学的に厳密な和訳解説を実施します。感覚で何とかなるような曖昧なものではありません。

ご参考までに、以下に和訳演習に使う英文の例を挙げておきます。
基礎生命科学IのVOA教材の例:生命科学(医学・健康科学)の低難易度英文

基礎生命科学IIのVOA教材の例:生命科学(医学)の低難易度英文

実用科学英語応用編の例:生命科学(医学)の高難易度英文(ゴードン博士と山中博士のノーベル賞共同受賞Press release)

 ご質問等がある場合、事前に大学の担当者にお問合せください。あるいは、履修登録後にUNIPAのQ&A機能を使ってもらえば個別に対応できます。個人情報の問題があるので、noteでコメントすることは避けてください。

前記事①②③④⑤⑥⑦は以下からもご覧いただけます。


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