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GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係9~授業の考え方自体が変わる~

《読了8分》

 前回は、GIGAスクール構想でのタブレット端末活用に関して、ある中学生の1日を通して述べました。


 そして、各学校で異なる教育系アプリケーションを使うよりも、Googleであれば、GoogleWorkSpace(GoogleEducation)系の教育システムなど汎用性の高い端末を活用することが将来的にも適応力のある子どもの育成につながると述べました。

 今回は、タブレット端末の活用によって、これまでの授業の考え方が変化する可能性が高いことについて述べます。

1 タブレット端末利用による「多様な学び方」出現の可能性

(1)黒板に書かれた事柄を写す活動の進化形

 タブレットで黒板に書かれた板書を撮影し画像にして、スタイラスペンで自分なりに追記するような生徒が出現するでしょう。上手に使えば「黒板の画像をクラウドドライブに保存して、復習で見直す」「書くことに時間がかかって考える暇が無いので、これでじっくり考えることができる」
*書くことで覚える、暗記できるは、「短期記憶の典型例」との学術的エビデンスはあります。
*つまりは、ノートに書く、タブレットで撮影することも生徒が考えて選択するのが理想だと思います。
*そもそも、教師がアナログ黒板に書く本質的な意味が問われそうです。


(2)基本用語定着のためのドリル反復学習による指導

 EdEducation(AIドリル)またはGoogleFoam(スプレッドシート)などの利用は、作成者の作業量と採点不要で、即得点フィードバックが可能になります。
*集積された膨大なデータは個別には「知識・技能」として、さらに、応用、活用的な課題に対する「主体的に学習に取り組む態度」の「粘り強さ」のエビデンスの一部になる可能性があります。
*さらに、欠席生徒の自宅回答も可能となります。

(3)授業での教師への質問


 これまで、質問したくても躊躇していた生徒も、GoogleClassroomでの質問受け付けとチャットで気軽に質問できるようになるはずです。さらに、今まで不可能だった個別支援を要する生徒の学習状況の掌握が可能になります。

(4)各種作文


 作文用紙を使わないで、GoogleDocumentを使ったキーボード入力が可能になります。各教科で行われる記述文もタブレット端末でキーボード入力できます。作品は、クラウド保管と担当教科教師Classroomに提出することができます。引用文献の文章全体に対する割合はgoogleがAIが判定できるようになります。ですから、単なるコピペはすぐバレます。
*メール、チャットがビジネスツールとなり、著名な作家もワープロソフトで原稿を執筆する時代に、作文を作文用紙に書く意義を再考すべき時代です。
*「スマホ脳と子どもの学力」の問題を提起し、有名作家が「紙の本・新聞は人間をつくる」として講演を行った事例はあるようですが、学術的なエビデンスではありません。
*未来の「書く、表現する、伝える」というコミュニケーション活動の本質に関する指導。
*SNS、メールでの適切な伝え方、正しい表記の仕方などを指導する時代です。

(5)友達や先生の話の録音・録画


 先生の話を家でもう一度聞きたい。友達の発表を家に帰ってから、自分でまとめたい。という目的で、録画・録音は「個人情報の保護」について適切に取り扱えば可能になります。ちなみに、あって欲しくは無いですが「教師の不適切な発言、暴言、暴力」も端末で録画と録音できます。

(6)欠席及び不登校生徒の遠隔授業参加


 基本ドリルに取り組んで解答を提出したり、家にいながら仲間と協働作業もできます。当然みんなと同じ条件でGoogleClassroomでの課題確認と提出ができます。


2 タブレット端末導入後、教師の指示で好ましくない例

○タブレット端末をしまう指示
○「タブレット端末を起動して使う時」と「閉じる時」の教師の指示
○授業中にわからない用語の検索などで端末を操作する行為を一律に禁じる指導
◯教科書QR コードを読み取る行為を禁じる指導
◯「作文をワープロソフトで書いてもいいですか」という要望を一律に禁じる指導
◯「先生の今日の板書を画像で撮影してもよいですか」という要望を一律に禁じる指導


3 もしかすると有効な取組になる可能性がある事柄


◯担任GoogleClassroom の一定の権限(欠席生徒の授業連絡や授業変更連絡)を生徒に任せる
◯学級委員選出に関わる希望調査などをスプレッドシートで生徒に任せる
◯Chromebook の便利機能を発見した生徒の情報を共有するオンライン上の「生徒の操作活用委員会」の設置
◯「やってはいけない裏技」を発見した生徒をについて、叱る指導だけで無くて、「操作に長けている生徒」として、運用の参考にする教師側のスタンスをもつこと。
*いわゆる、社会で暗躍する「ハッカー」を取り締まるのは「ホワイトハッカー」なので、操作に長けている生徒を上手に「ホワイトハッカー」にする方が有益。

◯生徒の方が操作に長けていることを教師が認めて、「共に学ぶ」環境を学校内に創出すること。
◯「キャリアパスポート」がクラウド運用できると、無駄な紙ファイル管理が不要になる。
*キャリアパスポートにありがちな「行事の都度感想や振り返りを記述させる行為」の意味を見直せます。ちなみに「生徒に過度の振り返りをさせる行為」は、「メタ認知の強要」にあたり、「メタ認知を有効だと感じなくなる」として、教育心理研究で明らかになっています。
*「振り返り」は「教師(あるいは他者)のフィードバックがあって有益」になることも、教育学研究から明らかである。よって、「ひたすら振り返りをさせるだけ」は、生徒の「学ぶ意欲(学習動機)」にマイナスに作用することを忘れてはいけない。

 これで、GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係9~授業の考え方自体が変わる~を終わります。


 お読みいただきありがとうございます。

 今回は、タブレット端末の活用がこれまでの授業の概念を大きく変える可能性について述べました。これらは、これまで行われてきた「情報モラル教育」ではなく、「デジタル・シティズンシップ教育」の考え方がベースとなります。
 「ICT機器の文具化」を前提にすると、子どもが文房具を活用するのを止めること自体が矛盾なのです。ただ、多くの教師はこのような大きな意識変革に拒絶反応を示す可能性があります。

 もう一度確認します。


 GIGAスクール構想の正解はありません。

 唯一あるのは「子どもが活用する視点を大切にする」ことです。「教師が活用する」ことではありません。

 次回は、GIGAスクール構想と新学習指導要領の関係10~主体的に学習に取り組む態度の見取り方~について述べます。

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