総合的な探究の時間の可能性を、地域から
ファブラボの未来
社会・地域に開かれた学校という形で、ファブラボ(注1)を全国につくることを進めています。課題解決を実現させるための探究に取り組んでいくと、社会とつながることは不可欠です。ファブラボは、2000年頃にアメリカでスタートし、全米の学校に整備しようと普及しました。その後、デジタルファブリケーションという世界中にファブラボを設立しようという動きがありました。日本ではファブラボ鎌倉からスタートし、国や自治体が図書館や公民館などに公的に設置するようになってきました。スクーミースポットなどの設備を増やし、自由に活用してもらうことによって、子どもから大人まで学ぶことができる空間がつくれると最高ですね。
学校でのSTEAMS教育とスクーミー
学校にとって新しいものを取り入れて必要十分な環境整備をすることは難しいです。そこで、すぐにそのまま取り入れることができる環境を私たちが用意して、どのように授業を組み立てれば良いか継続的にサポートすることが大切だと思います。一発屋の授業なら誰にでもできます。一緒に継続して関わっていくことを大事にしたいです。
例えば、スクーミーボードで何ができるのかをオリエンテーションとして全体で行い、具体的な用途を認識してもらう。そして子どもたちが課題を見つけたタイミングで、自由に使ってやってみる。どんなプランを立てるか・プログラミングの方法・必要なもの・実装に向けてすることといった考え方の順番を指導することが大切です。「世の中にはこんなものが足りなくて困っている人がいるから、解決するためにどんな物をつくったら良いのか」に「いつ頃までにリリースしたらビジネスになるか」をプラスした、企業が日常的にしている製品開発のプロジェクトをそのまま小さくし、さまざまなテクノロジーを活用して子どもたちに体験させるというのが、STEAMS教育ということになります。
学習ツールの意義
授業時間は限られています。限られた時間の中で、子どもたち自身の手で何かをつくり出せる環境を整えることが大事です。加えて、肝心な思考の部分に集中してもらうために、余分な部分は全て簡単にできるような仕組みにする必要があります。そこが、センサーをつなげるだけでプログラミングができるスクーミーボードや、スキルがなくてもものをつくり出すことができるレーザーカッターの意義だと思います。
足元から学ぶ
もっと地域をベースにして学ぶ必要があると思います。地元の地域のことを知らないと国際理解やSDGsなど見たことがない世界のことは語れません。小さな世界から始まり、絵空事だった大きな社会課題の解決まで広がっていく探究活動こそが、総合的な探究の時間(注2)であると考えます。地域や身の回りからさまざまな社会課題を自分で見つけ、生のデータを使って解決策を探究をしていくことが大切であり、リアルな学びになると思います。そのためには、学校は隔離された空間ではなく、常に社会とリンクしていくことが必要です。
総合的な探究の時間では、教科の括りを超えた学びを行うことで、何のために学んでいるのかを生徒自身が実感できることが大切です。前段階として情報Ⅰが必須で、いろんな教科で学んできた要素を混ぜて結びつける役割をしています。教師が学生時代にこういった経験がなく学校内から変えることは難しいため、外から変化の手助けをしていくことがスクーミーの存在であると思います。
自己効力感を育てる
自己効力感とは、目標を達成するための能力を自らが持っていると認識することであり、簡単に表すと「自分にはできる」という自信を指します。これは、自分でやったという達成経験から身に付くものであり、学校はこの経験をさせる場だと思います。プログラミング教育の現在は「先生が言ったように動かしたらできた」が多く、反対に子ども達に丸投げでも経験させることができない。教師のするべきことは、しっかりと見守り、どこでつまづいているかを見つけて手助けをすることです。この生徒にはこんな環境が必要である、など支援の度合いを教員自身がトレーニングして、どこまで教えてどこを考えさせるのかのバランスを考えた授業をデザインしていくことが必要なのではないでしょうか。
(注1)ファブラボ
個人による自由なものづくりの可能性を広げるための、デジタル工作工房とそのネットワークのこと。
(注2)総合的な探究の時間
教科の垣根を越えて生徒自ら課題を設定し探究的な考え方を働かせ、試行錯誤しながら資質・能力を養い、自己の在り方を考える学習
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