「香りで人を感動させたい」。ベンチャー成長プロジェクトBooming!を通してクリアになった、女性起業家の決意
こんにちは。
香り空間プロデューサー、郡(こおり)香苗です。
noteでは、香りの演出ウラ話、香りを仕事にするためにやったこと・やらなかったこと、私が最近気になっていることなどをお伝えしたいと思います。
note ではすっかりご無沙汰してしまいました。
昨年夏から今年の春までは、お仕事のほか、ベンチャー企業の経営者プログラム「Booming!(ブーミング)」に参加し、課題にかかりきりになっていました。
「香りの事業をもっと大きくしたい!」と再び決意できた経験でしたので、今回はこの経営者プログラムについてお話ししますね。
「経営のモヤモヤを解消したい」と、ベンチャー企業向けの成長プログラムに参加
私が参加した「Booming!(ブーミング)」は、大阪で開催されているベンチャー企業成長プロジェクトです。
もともとは2015年から大阪府が行なっていたものなのですが、2019年からはベンチャー起業の経営者にノウハウを伝えるため、上場企業の先輩起業家が運営されています。
「Booming!(ブーミング)」を知ったのは、前回のプログラムでファイナリストに選ばれた女性起業家の方に「学ぶことがたくさんあったの。とてもいいよ」と勧めていただいたことがきっかけです。
「ここなら、私のもやもやが晴れて、事業拡大につながるかもしれない」という思いで、参加を決めました。
起業から10年あまり。
香りのお仕事を続けるうち、一緒にお仕事をした方から「株式の上場は考えているの?」「どこまで上を目指したいの?」と、聞かれることが多くなり、もやもやとした気持ちが芽生えていました。
私は、ライブや商業施設でのイベントなどで、テーマに合わせた香りをお作りし、香り空間プロデューサーとしてお仕事をしています。
しかし、イベントは単発で行われることがほとんど。新型コロナウイルス蔓延の影響で、イベントの開催が控えられたこともありました。そのため、毎月の売り上げを継続して上げられないことに悩んでいました。
いつも相談に乗っていただいているファンドマネージャーさんにお聞きしているのは、売り上げや利益率など帳簿上の数字についてのみ。
私が本当にやりたいことの純度をどう高めるか、香り事業をどう舵取りすべきか、それらで売り上げはともなうのか、といったことをアドバイスしてくれる方はたくさんいました。
しかし今思えば、私自身に、それらのアドバイスを整理してまとめる力も方向性を決める判断力もなく、「これで行こう!」と決断することができないでいたのです。
正直なところ、私は株式上場など考えたことがありませんでしたが、周囲の起業家たちに同じ質問をすると「目指すは上場」と意気込む方が多かったのです。
上場なんて遠い夢の話かなと思っていましたが、事業を拡大したいという想いは彼らと同じ。新しいプロジェクトに参加して勉強することで、もやもやした気持ちにケリをつけたかったのです。
「売り上げの見通しは?」「決算書の読み方は?」……厳しい指摘の連続
「Booming!(ブーミング)」の目標は、以下の3つです。
・2025年までに、関西から10社の上場企業を生み出す
・参加企業の売り上げを参加後5年以内に10倍にする
・大阪にベンチャーエコシステムを形成する
6ヶ月間のプログラムでは、上場企業の経営者による個別面談と伴走、勉強会やミーティングが行われます。
プログラムでは、たくさんの課題が与えられました。
「月1回、1ヶ月で達成できる目標を立てる」
「月1回、自身の経験をチームのメンバーとシェアしてディスカッションする」
「月1回、経営学の勉強会に参加する」
「月1回、プレゼン大会に出る」
といったものです(忙しかった!)。
私はこれまで、ビジネスプランコンテストや成長プログラムに参加した経験があり、事業についてプレゼンテーションを行うことは慣れていたつもりでいました。……しかし、今回のプログラムは全然違いました。
プレゼンでは、先輩起業家やチームのメンバーから厳しい指摘をいただきました。衝撃の連続でした。
「郡さんの香り事業は、多くの人にとってはあったらいいけれど、なくても困らないジャンルだよね」
(確かにそうかもしれない)
「エンターテインメントで人を感動させたいというのは素晴らしい夢だけど、このままで売り上げを上げられる試算はあるの?」
(殴られたような衝撃)
「決算書の読みかたがわからないなんて、経営者としてスタート地点にすら立てていない。銀行や社員、株主は決算書を見て信頼度を決めるのに」
(往復ビンタをパンパンパン! と受けたような衝撃)
私には、「香りをたくさんの人に届けたい」という目標があります。
これまでの私は、売り上げの立て方や従業員雇用の指針、資金調達といった、経営の基礎知識はあったものの、自分ごとと捉えて事業計画を立てていなかった。そのことを知り、我ながら愕然としました。
経営者としてどちらを向いて歩いているのかわからない、ということすら気づかなかったのです。
プログラムでは「最終ゴールの設定」「目標を達成するためにやるべきことの可視化」「中間目標の設定」を深く掘り下げていきました。
また、月ごとに達成度を示す必要があるため、お仕事も必死で進めていきました。
このプロセスは、じつは私が約20年続けてきた「手帳術」と似ています。
夢や目標を設定し、それに向かってどう進むかを逆算し、スケジュールを立てるのが「手帳術」。私は「手帳術」でたくさんの夢を叶えてきました。
経営についても、ゴールを設定して逆算して進めていた、と思っていましたが、中間地点での目標設定ができていなかったり、思うようにいかなかったときに随時修正を加えたりという、細やかなメンテナンスができていなかったのです。
プログラムでの勉強を通し、新しい分野への進出に自信がついた
私はコロナ禍が始まる前から、「ライブやエンターテインメントなどのイベント会場で香りを演出するだけでは、売り上げは頭打ちになるだろう」と考えていました
。
ライブでの演出だけに頼らず新たな事業を展開するため、3年がかりで、香りサイネージシステム 「Ambiscent(アンビセント)」というハードウエアを開発していたところでした。
香りサイネージシステム 「Ambiscent(アンビセント)」は、機械の中に人感センサーを搭載しており、人が通ると噴射口から香りが出るというものです。
焼肉店からただよう煙に食欲を刺激されたり、「ビアードパパ」のシュークリームの香りに惹かれてついつい買ってしまったり、という経験がある人も多いでしょう。
この機械は、そのような人の行動を促す「香り効果」を人工的に作り出します。
サイネージシステムを有効に使えば、香りで集客力を高める効果が期待できる。エンターテインメント事業だけでなくマーケティング事業の分野に進出しよう。
そう考えて機械の開発を進めていました。
しかしいっぽうで、ずっと迷ってもいました。
新たな分野に挑戦したとして、これまでやってきたエンターテインメント事業はどうする? エンターテインメント事業の比率を抑え、マーケティング事業をメインにシフトした方がいい? それとも、半々でやっていくべきか?
自分で結論が出せず、先輩の女性起業家さんに相談すると、
「結局のところ、何がやりたいのかわからないんだけど」と、
ズバッと言われました。
私にマーケティング事業に進出する覚悟がないことを、一発で見抜かれたのです。
そんな折、プログラムを通して先輩起業家や仲間たちとセッションし、「なぜ、その目標なのか」「目標に向かって、何をやるのか」「実現可能なのか」をとことん突きつめていくことで、ぼんやりとした夢がクリアになっていきました。
「追いかけるものが2つあると、どっちつかずになるかも」という考えは、きれいさっぱりとなくなりました。
私の覚悟は決まりました。
「よし、エンターテインメントもマーケティングも両方やろう。成功させる、絶対にできる!」。
エンターテインメント事業もマーケティング事業も、どちらも「人の心を動かす」という点が共通しています。
私には、ライブやイベントでの香り事業の実績がある。経験をもとに開発した香りサイネージシステムは、他社では絶対に真似ができない。
ライブやイベントというエンターテインメント事業と、香りサイネージシステムを使ったマーケティング事業の2つの柱があれば、企業としてさらにステップアップできる。
2つの事業が補いあうことで、加速度的に成長できる。
プログラムを通して、私が抱えていたもやもやは、すっかりなくなっていました。それどころか、確固たる自信がつきました。
6ヶ月のプログラムでの収穫は「自分が思っていることや目標、事業拡大への道筋が整理された」ことと、「売り上げを立てる試算をして経営計画を立てられるようになった」こと。
これらの成果により、多くの人たちに事業の魅力や将来性を感じてもらえるプレゼンもできるようになりました。
また、香りサイネージシステム 「Ambiscent(アンビセント)」が、webサイト「PORT」でご紹介いただけたのも嬉しい収穫でした!
機械の独自性と先駆性に着目いただけたのも、やはりプログラムでのブラッシュアップのおかげでした。
目標がクリアになり、達成までの道筋を立てることができたおかげで、新たな資金調達を達成。3月末に行われた、スタートアップ企業を応援する投資家さんたちを前にお話しするプレゼン大会では、たくさんの方々に「良かったよ」とお褒めいただきました。
半年間のプログラムを走り終えた今の私は、加速する準備が整った状態です!
香りサイネージシステムは、夏に正式リリース予定。香りをマーケティングに使いたいという企業さんと手を組んでいきたいと思っています。
「Booming!(ブーミング)」関係者のみなさま、先輩起業家や同期メンバーのみなさま、本当にお世話になりました。ありがとうございました!
〜お知らせ〜「ふじさんミュージアム」VR体験の香り演出
最後に、お知らせです!
山梨県富士吉田市が運営する、富士山や郷土の歴史を楽しみながら学べる美術館「ふじさんミュージアム」で2023年4月2日(日)、「ふじさんVRシアター」がオープンしました。
VRゴーグルをかけると360°の映像で富士山登山を体験できる映像展示で、私は富士山の香りを開発。
登山の途中で鼻をくすぐる密林のような香りと、頂上近くの岩肌から感じられるオゾン系の香りを合わせたオリジナルの香りです。お近くの方は、ぜひ体験にお出かけしてみてくださいね。
また現在は、夏に出版予定の書籍での執筆依頼をいただき、香りの最前線についての原稿を書き進めています。
イベントや香り開発のお話しは、インスタグラムやTwitterで発信しています。ぜひフォローをお願いします!
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私が代表を務める大阪・淀屋橋「SceneryScent(シーナリーセント)」では、イベントや展示会、店舗などで香りを演出する事業を行っています。 世の中に「ある」香りの再現も、「ない」香りのオーダーメイドもOK。 また、イベント会場などで香りを拡散する機器を開発。販売やレンタルも行っています。
◆イベント、ライブ、テーマパークで香り効果演出
◆商業施設でのクリスマス装飾香り演出
◆ホテルブライダルでの香り空間演出
◆ミュージカルなど舞台演出での特殊効果の香り演出
◆アニメやゲームなど推しキャラの香り
シーナリーセント
https://sceneryscent.com/
郡(こおり)香苗
Instagram https://www.instagram.com/sceneryscent.kanae/
Twitter https://twitter.com/kanae_kori
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