マンガ原作志望に『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』がオススメな3つの理由
シナリオ・センターのあらいです。
マンガ原作志望者、漫画家志望者の方に、先日『第24回 文化庁メディア芸術祭』のマンガ部門新人賞に輝いた『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』を超絶おススメします!
シナリオ的に分析すると、創作のヒントがめちゃめちゃ隠れているからです。あと、個人的に大好きだから!!
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に創立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど700名以上の脚本家、小説家を輩出するの学校です。地味にすごい。今年、51年目。
偉そうなタイトルで恐縮ですが、3つに絞ってみました。
はい!
その① 新しい世界をみせてくれる
仕事がら、漫画編集者の方に、マンガ原作者の方やマンガ原作志望の方を紹介することがあります。
その時にでてくるキーワードのひとつが、読者に新しい学びみたいなものがあるか、という点。
漫画編集者の方いわく、これはとても大きな要素なのだそうです。『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』も、ジャズバンドという素材ながら、戦後日本の音楽界の事情や、米軍と日本人ジャズマンの関係性などなど、読んでいて「そうなんだぁ~」と思う部分がたくさんあります。
『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』1巻の背表紙より
昭和26年、米軍占領下にある日本。
福井から姉の仇「オダジマタツジ」を捜すために上京した少女・とら。
そこで彼女が出会ったのはジャズだったーーー。
戦後日本をうたごえで駆け抜けた少女のスインギン&グロウイングアップストーリー開幕!
思えば、同じ『モーニング』での連載漫画であれば、テレビドラマ化で再び注目の『ドラゴン桜』も単なる高校青春ものではなく、『受験』という切り口です。『ゼニグラ』はただの野球漫画ではなく、野球選手の年俸という切り口です。
あるようで、ない。『ない』理由は、切り口が新しいからなんですね!
ここ、ポイントだと思います!
その② 第1話で魅力的に『天地人』を紹介している!
『天地人』とは、なんぞや?
天:時代・情勢
地:場所・舞台
人:登場人物
となります。基本的な型として、第1話は、起承転結でいう『起』にあたります。『起』では、『天地人』を紹介するという機能があります。ここがしっかり描けていないと、読者がついて来れません。
昔話だって、
天:むかしむかし
地:あるところに
人:おじいさんとおばあさんがいました。
って、なっているでしょ?
でも、『天地人』の紹介は、魅力的である必要があります。なぜなら、単なる説明になっちゃったらつまらないから!
『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』は、どうか?
これがすばらしい!の一言です。
下記のComic Daysで第1話が無料で読めますので、参考にしながら読んでもらえたらと。
『天』1-6p。
主人公うたが見ている夢のシーンから始まります。ここで、『天』がわかります。さらにうたの抱えている背景もわかっちゃいます!
『地』7-12p。
主人公うたが生きる『地』がわかります。さらに、この短いなかに、主人公うたが『オダジマタツジというベーシストをお姉ちゃんのために捜している』という貫通行動(主人公の目的)まで描かれています。
『人』18-32p。
うたは、大好きなお姉ちゃんの影響で、ジャズのナンバーを歌うことができます。しかも、うまい!原石感があります。はい、憧れ性、完璧!
でも、ちょっとおっちょこちょい。はい、共通性も完璧。そして性格は、鼻っ柱が強い物怖じしない。うたのキャラクターの魅力がでています。
さらに、この物語の核となるベースストのオダジマタツジと、芸能界で成り上がろうとしているサックスの丸山と出会います。
この二人のキャラクターの紹介も、これまた魅力的です!
要は、物語に必要は『天地人』が魅力的に、1話の時点でズバッと描かれているわけです。
③音という映らないものの表現
音をマンガで表現する、というのは、けっこうハードルが高い気がします。オダジマタツジが弾いたベースから出る音や、うたちゃんたちの歌は、漫画からは聴こえません。
そのぶん、各コマに擬音がたくさん描かれます。
でも、それだけではちょっと物足りない。『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』では、この問題をリアクションで補っているように感じます。
初めてオダジマタツジのベース音を聴いたときのうたの反応。ライブの際には、オーディエンスの反応。ここら辺に結構コマを割いているような気がします。
マンガの場合、音楽ものはすこし難しそうな印象があります。でも考えてみれば、マンガであれば『のだめカンタービレ』や『NANA』。小説であれば『蜂蜜と遠雷』など、意外とあります。
一件、不向きと思える素材でも、描き方ひとつで表現することができるわけです。勇気が湧きますね!
ということで、是非とも『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』を読んでみてくださいませ!
▼ぼくと『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』との出会いについて▼
▼『スインギン ドラゴン タイガー ブギ』▼
▼『起』の書き方について動画で紹介しています▼
▼人物を魅力的にする方法を動画で紹介しています▼