読書感想文は、書く前に読むの精度がたいせつ、かと。
7月・8月は、夏休みということもあり、夏休みの宿題ネタの依頼が多くなります。その一つが、読書感想文。
シナリオの技術を使って、読書感想文が書けるようになる講座を図書館にて、実施してきました。
シナリオ・センターでは、『一億総シナリオライター化』という創設者新井一の理念を形にすべく、2010年から『一億人のシナリオ。』プロジェクトを実施。
■なぜ、読書感想文は難しいのか
夏休みの宿題といえば、何らかの植物を育て続けるのと、読書感想文、でしょうか。
読書感想文、皆さんは、書けた口でしょうか。きっと、シナリオを書いているだけあって、書くことが得意だったに違いありません。ちなみに私は、苦手でした。苦手というか、苦役でした。
だって、書けなかったから。
小学3年生のころでしょうか、『トム・ソーヤの大冒険』を読んで書いた感想文が、
「トムの大冒険が、すごかった」
です。一行にも満たないうちに、感想文がおわってしまったのです。もちろん、先生に怒られました。怒られましたが、怒られても書けないものは書けません。涙をこらえて、うつむくばかりです。
■読書感想文は、書くまえに、読む
そんな中、下落合図書館と東陽図書館から、読書感想文の講座をやってほしい、という依頼がありました。今も昔も、私のように、読書感想文が書けずに困っている子どもたちがたくさんいるのだと思います。
自分が苦手だった読書感想文に向き合ってわかったことがあります。読書感想文が書けない子どもは、そもそも、『読者』ができていないのです。本がちゃんと読みこめてないから、感想も出てこないのです。
私自身、本を読むのが苦手だったので、読めないし、書けない、ということで、うじうじするしかなかったわけです。
そこで、読書感想文を書く前に、感想が導けるように『読む』ためにどうすればいいのか、を整理するべきだと考えました。それなら、私にもできると思いました。だって、それは、『シナリオの基礎技術』でひも解けるからです。
■読むポイントを、シナリオの技術で紹介
本をどう読むか、というと難しい感じがします。でも、『シナリオの基礎技術』を使えば、低学年の子からわかるように、解説できると考えました。
なぜなら、『シナリオの基礎技術』は、物語をどう作るかという技術が詰まっていますが、翻って、『シナリオの基礎技術』をもとにすれば、作者の頭の中をのぞいて、本のどの部分に、何が書いてあるのか解説することができるからです。
読書感想文講座の対象が、小学低学年から高学年までさまざまでも大丈夫です。
■最初の数ページで、天地人を把握せよ
まず子どもたちに、読書感想文を書くために読もうと思っている本を持ってきてもらいます。
そして、起承転結の機能をもとに、解説をしていきます。
まず『起』には、何が書いてあるかを一緒に考えます。『起』の機能は、天地人の紹介です。なので、最初の数ページに、その物語がいつの時代か(天)、どの場所でのお話か(地)、どんな登場人物がでているか(人)が書いてあります。
「たとえば、昔話なら、むかしむかし、が天だよね。あるところに、が地。おじいさんとおばあさんが住んでいましたが、人。だよね」
こんな風に、作者は、最初の数ページで、天地人を紹介しています。なぜなら、そうしないと、どんなお話か、読んでいる人が、わからなくなるから、と伝えます。
■主人公に何が起こるか、把握せよ
次に、『承』の部分をひも解きます。『承』の機能は、主人公に何らかの問題が生じて、困らせることです。一つの困りごとが起きて解決すると、次の困りごとが起きて、また解決をするという形で、どんどん困ることは、大きくなっていきます。
なので、主人公に、どんなことが起こるか、そして主人公はどうやって乗り越えたのかを、それぞれの本を読んで、ピックアップしていきます。
ここを読み解くのは、ちょっと難しいところです。というのも、『承』は、全体の7割くらいあるからです。とはいえ、作者は全体の7割ある『承』を一つの問題では作りません。少なくとも、3つか4つは問題が起きます。なので、まずは大まかに、どんなことが起きたかを、確認してもらいます。
■クライマックスで、主人公の変化に刮目
いよいよクライマックスです。クライマックスは、主人公によって最大のピンチが訪れたり、最大の決断をしたりと、一番盛り上がるところです。
作者にとっても、読者にとっても、一番の見せ場になります。お話の一番盛り上がるところを探して、何が起きたのか、どうなったのかを、整理してもらいます。
■自分なら……で、感想を組み立てる
そして、それぞれの物語の構成を、丸裸にしたら、起承転結のそれぞれのシーンを読んで、自分はどう思ったのか、自分ならどうしたと思うかなど、思いついたことをどんどん言葉にしてもらいます。この段階では、整った文章にする必要はありません。
ここまでできれば、物語の構成と、自分がどう思ったかという感想がそろいます。実は、新井がお手製の『読書感想文バッチリシート』に、書き込んでいくと、感想文のタネができあがります。
■作者側の立場で、読み解く
作者が、読者をワクワクドキドキさせるために、起承転結を使って、何を表現しているかがわかれば、そこに何が書いてあるかが、わかってきます。実際、子どもたちは楽しそうにシートを埋めていきます。
大人の工夫ひとつで、子どもの書く力、表現する力は、無限に伸びていくのではないかと思います。