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美味しく感じるチョコレートを作る方法を考えてみる

※注意
本稿はジョーク記事です。本稿の情報を鵜呑みにして実行してしまうと相手側に危害が生じるだけでなく、自身も傷害罪や麻薬及び向精神薬取締法違反といった罪で刑事罰を受ける可能性があります。決して実行せず、本稿はあくまでネタとして読んでください。本稿の内容を実行したことによって生じたいかなる損害に関しても、一切責任を負いかねますことをあらかじめご了承ください。もう一度言います。本稿はネタ記事です。内容を決して実行しないでください。

本稿の要約

今までよりさらに美味しいチョコレートを相手にあげたい場合、理論的にはベンゾジアゼピン系化合物を隠し味にするとよい。しかしとっても危険なので実行はダメ、ゼッタイ。

初めに

 もうすぐバレンタインです (本稿投稿は2月12日)。世界は相変わらずの情勢ですが、今年のバレンタインに関しては本当に大切な人への贈り物や自分へのご褒美としてクオリティの高いチョコレートを求める人が多く、逆に義理チョコという文化が危機的になっているそうです[1]。まぁ個人的には義理チョコはお返しに悩むのでないならないで別にいいんですが、お菓子屋さんやチョコレートメーカーには寂しい冬になりそうです。
 さて、美味しいチョコレートをプレゼントしたいとなった場合、お店で買うといのが一番手軽でクオリティも確実です。ですが、やっぱり思いのこもった手作りチョコレートを作りたいという方もいると思います (漫画やアニメの女の子は大体手作りですよね)。美味しいチョコレートを作る方法は調べればごまんと出てきます。また、単純な作り方だけではなく、例えば調理温度によるチョコレート中油脂の結晶構造の違いやそれに伴う触感の変化等を解説している文献 (例 参考文献[2-5])も多数出ており、「どうやったら美味しいチョコレートができるか」について理論的にも明らかになっています。このように、美味しいチョコレートを作る方法はたくさん見つかるので、よっぽどセンスが独特な方を除く多くの人が並み以上のクオリティで美味しい手作りチョコレートを作れると思います。
 しかしながら私はふと思ったのです。美味しいチョコレートを作ろうとしたとき、みんなチョコレート側へのアプローチしか考えていないよな、と。つまりみんながみんなチョコレートのチョコレートとしてのクオリティを高めることしか考えていないと思ったのです。確かにそれは最重要項目かもしれませんが、そもそもそのチョコレートがどれぐらい美味しいかを決める (感じる)のは送られた側ないし食べる側なわけです、もっと言えば脳なわけです。「チョコレートのクオリティを上げる」というのはいわば脳が「美味しい!」と感じる機構への間接的なアプローチに過ぎません。そんな消極的なものでなくもっと直接、すなわち送られる側の脳に直接アプローチして「美味しい!」と感じる機構を増強させるようなことができれば、手作りチョコレートの魅力はもっと上がりますし相手からの好意も爆上げ間違いなし。というわけで「ただクオリティが高いだけのチョコレートではなく、食べる側の美味しいという感情を直接増幅させることができるチョコレート」を作り出すことができないかということを考えていきたいと思います。

そもそも美味しさとは何か

※本題からちょっとずれるので読み飛ばしても構いません。

 美味しさ、って何なんでしょう。考えたことありますか?人(脳)はものを食べたとき何をもって「美味しい」「美味しくない」と感じているのでしょうか。よく聞く説明に「生命活動に必要なものに対し美味しいと感じている」というのがあります。確かに重要なエネルギー源である糖や、生体維持に必須の多くのミネラル類やアミノ酸類は大体の人にとって美味しく感じるものです。しかしながら、体に必要なものがすべて美味しく感じるようにできているかというとそうではありません。例えば必須アミノ酸であるバリンやロイシンは一般的に苦みがありとても美味しいとは言えないものです[6]。必須ミネラルである鉄や亜鉛、銅等の重金属イオンが持つ金属味も美味しいと感じる人は少ないでしょう。このように、『体に必要なもの=美味しい』という単純な処理を脳はしているわけではないように思えます。ですがそれも正確でははありません。というのは、上げた例外が「単体ないし高濃度で摂取された場合に」美味しくないと感じられることにあります。自然界においてほとんどの食べ物は純物質ではなく混合物として摂取されます。そりゃそうですよね、自然界で純粋なバリンとか亜鉛イオンとかが落ちていたするわけないですから。体に必要なのに美味しいと感じない物質も、混合物として摂取するとその多くが美味しさを引き立てる効果を持っています。例えばカニの美味しさの肝であるこくや風味は、グリシンやアラニンの甘味 、グルタミン酸の旨味だけでなくアルギニンの苦味が加わるからこそ成立しています[7]。純粋な塩化ナトリウムよりも天然塩を好む人が多いのも、単体では美味しくないカルシウムイオンやカリウムイオンといった化合物(にがり)が含まれていることで塩味と風味が引き立てられるからだといわれています[8]。つまりは、やっぱり体に必要なものは美味しいんですよね。そうなると、『体に必要なもの=美味しい』というよりかは、『体に不要なもの、危険なもの=美味しくない』という処理をしているという方がより正確なのかもと感じます。
 また、調べてみると人が感じる美味しさには4つのタイプがあるといわれており、それぞれ

①生理的美味しさ
 → 生体維持に必要な栄養素に対し美味しいと感じる。
②文化的美味しさ
 → 慣れ親しんだ味を美味しいと感じる。要はおふくろの味。
③情報による美味しさ
 → 高級店や口コミがいい店の料理を美味しいと感じる。要は通の味。
④病みつきになる美味しさ
 → 砂糖や油のような脳に快感を与えるものに感じる。

だそうです[9]。同じ食べ物でも環境によって美味しかったり美味しくなかったりしますよね (家で食べる唐揚げと嫌いな上司との飲みの席で食べる唐揚げ等)。美味しさを感じるのは体に必要不要以外にも環境的な要因も重要だということです。また、このような外部環境的要因だけではなく、食べる人の生理的、心理的な要因や食べ物の物理的要因 (硬さ、柔らかさ、のどごし等)によっても美味しいと感じるかは変わります[10]。うーんやはり生体、個体差も大きいですし「美味しさとは○○です」と一言で定義づけするのは複雑すぎて今は無理そうです。
 ただ重要な情報は得ました。感じる美味しさには4つのタイプがあるというなら、それをすべて内包したチョコレートを作れば理論上はめちゃめちゃ美味しいチョコレートになるはずです (それが本題だったって覚えてますか?)。つまり、生体維持に必要なアミノ酸とミネラルと依存性のある砂糖と油脂をふんだんに盛り込んだチョコレートを幼少期から与え続けかつ友人などを通じて口コミでこのチョコレートはめちゃめちゃうまいと吹き込み続ければ、それは4つのタイプの美味しさを詰め込んだめちゃめちゃ美味しい手作りチョコレートといえるはずです※1。我ながら素晴らしい案です。この案の弱点としては現実的ではないということでしょうが、偉大な発見の前では小さなことです。しかしながらこの案は結局「チョコレートのクオリティを上げる」に該当するので、残念ながら本稿の目的には合いません。別の案を考えましょう。
※1 実際に実行したことで生じたあらゆる損害に関して筆者は一切の責任を負いかねます。

味覚と脳の関係

 美味しく感じるチョコレートを作るためには、そもそも人はどのように味を受容し、美味しいという感情を出力しているのかを知る必要があります。美味しさを感じるうえにおいて最も重要なのは味でしょう。最近でもウイルスの後遺症で味がわからなくなって何も美味しいと感じられなくなったという痛ましい話もあります[11]。すなわち味覚という感覚は単純に味を識別するだけではなく、「美味しい」「美味しくない」という感情を生み出す機能にも深く関係しているということです。そんな味覚情報が体内においてどのように伝達されていくかを見てみましょう。
  主に口腔の味蕾内の味細胞によって受容された味覚情報は味覚神経を通り脳へ伝達されます。脳内において味覚情報は延髄孤束核と視床味覚野を通り大脳皮質の第一次味覚野へ到達します。第一次味覚野では味の質(何味か)と強度が識別されます。その後大脳皮質前頭連合野 (第二次味覚野)へと到達し、そこで味覚以外の感覚情報 (見た目、香り、触感など)と統合され、食べたものの認知とともに「美味しい」「美味しくない」といった処理が行われます。つまり例えばチョコレートを食べた時「強く苦い」と感じるのは第一次味覚野であり、「食べたものは私の好物のビターチョコレートであり、蕩ける触感と後に引かない強い苦味、そして芳醇なカカオの香りがしてとても美味しい」と感じるのは第二次味覚野の活動によるものということです。また、味覚野を経由してきた味覚情報は偏桃体にも送られます。偏桃体では入力された味覚情報をもとに、それが摂取するに値するかしないか、すなわち生体にとって都合がよいかどうかという判断が下されます。偏桃体で分析された情報は視床下部や海馬等へ伝達されます。海馬では好き嫌いといった味記憶の形成等が行われます。視床下部では偏桃体からの情報を受け、接食行動や食欲を誘起させます[12]。このように味覚情報は脳内の様々な領域に関わるわけです

味覚情報伝達

図.1 人脳内における味覚情報の伝達経路。 [12]

美味しさがもたらす「幸せ」と「摂食欲求」

 美味しさは2つの感覚をもたらします。1つは美味しいものを食べた時に感じる陶酔感や多幸感、快感といった喜びの感覚。もう1つはそれをもっと食べたい!という感覚。これらはそれぞれ関与する脳内物質が異なっています。
 脳内物質の1つにβ-エンドルフィン (beta-endorphin)というものがあります。β-エンドルフィンとはHughesらによって発見されたオピオイドペプチドであり、脳内のオピオイド受容体に作用します。オピオイド受容体には鎮痛や鎮静等様々な機能がありますが、特にβ-エンドルフィンとの親和性が高いμ-オピオイド受容体 (オピオイド受容体には様々な種類があるがその1つ)には陶酔感や多幸感をもたらす作用があります。実は麻薬として知られているヘロインやモルヒネ、フェンタニル等が作用するのもこのμ-オピオイド受容体であり、β-エンドルフィンはそれら麻薬同様の作用があるというわけですね (だから脳内麻薬と呼ばれていたりする)。さて、このβ-エンドルフィンという物質は怪我をしたときや性行為の時などに脳内で分泌されることが知られており、鎮痛作用をもたらしたりや幸せといった感情を誘起したりしますが、美味しいものを食べた時にも分泌されます[13]。例えばラットにおいてはラットが最も好む「甘み」を摂取させたときに脳脊髄液のβ-エンドルフィン量が最大値になるそうです[14]。美味しいものを食べた時に感じる幸せな感情はこのβ-エンドルフィンが関与しているというわけですね ※2。しかしながら、ラットに対して砂糖水への味覚嫌悪学習 (ある物を与えた後に嘔吐剤や電気ショックなど不快な感覚を誘起させるものを繰り返し与えること)を獲得させると、それ以降は砂糖水を与えてもβ-エンドルフィンが分泌されなくなるそうです[14]。このことから、単純に「味」という情報だけでβ-エンドルフィンが分泌されているのではなく、美味しいという感情とセットでなければいけないということが分かります (この味覚嫌悪学習はダイエットにも応用できます)。ただしこのβ-エンドルフィンという物質は脳内麻薬とよばれていることからもわかる通り、強い依存性を形成する物質でもあります。何かくせになる味、やみつきになる味、どうしても食べたくなる味というのは言ってしまえばβ-エンドルフィンへの依存症だというわけですね。美味しいものを食べて幸せを感じるのが好きな人はモルヒネやヘロインの乱用者を馬鹿にできないのです (極論)。
 美味しさがもたらすもう一つの感覚である「もっと食べたい!」という感覚はドパミン (Dopamine)によってもたらされます。先ほど、美味しいものを食べた時に分泌されるβ-エンドルフィンが陶酔感や多幸感をもたらすと説明しました。なぜそのようなことが起こるかというと、β-エンドルフィンはμ-オピオイド受容体に作用して、快情動の出現において重要な脳内報酬系をGABA神経を介して間接的に賦活化させるためであるとされています[15]。脳内報酬系とは腹側被蓋野や側坐核などから構成されている脳の複雑な構造体であり、快感を求める意欲と行動を発現させる機能を有しています。つまり「もっと!もっと!」という気持ちと行動を起こさせる部位ということですね。報酬系の言うことに従った結果実際にお目当てのものが得られると報酬系、特に側坐核にドパミンが放出され、ご褒美として高揚感やハイいった刺激的な感覚が起こります。この時の感覚は脳に強く刻み込まれ、あの時の刺激を再び得るために、「もっと食べたい」「また食べたい」という欲求をもたらすことになります。デザートは別腹という言葉がありますが、満腹感という制止を振り切ってまで美味しい食べ物の接食行動が起きるのはこの報酬系が関与しているからなのです。好きな食べ物、美味しい食べ物が目の前にあると報酬を期待する脳は報酬系にドパミンを放出します。すると脳はそれに対する渇望を感じ、「食べたい!」という強い欲求が発現するのです。お分かりだと思いますが、この一連の報酬系の動きはアルコールや覚醒剤といった依存性物質を体内に入れた際の動きとほぼ一緒です[16]。そう考えますと、人類で最も乱用されているドラッグは「美味しい食べ物」であるともいえますね。
※2 そうなるとエセ科学といわれているホメオパシーも砂糖により誘起されたβ-エンドルフィンにより鎮痛や鎮静をもたらしていると考えればあながち間違いではないのかもしれません。もっとも、自分で砂糖を買ってきて舐めるのと何も違わないのは言うまでもないですが。

美味しく感じるチョコレートをつくる方法

 さて、ここまで美味しさと味覚、脳内物質の関係について説明しましたところでようやく本題に入ります。美味しく感じるチョコレートを作る方法です。ぶっちゃけここまで文を書いてるうちにわりとどうでもよくなってしまいましたが、全国の女の子たちのためにあと一息頑張ります。

①オピオイド受容体を利用する方法

 美味しさがもたらす幸福感にはβ-エンドルフィンが重要であることは説明しました。また、このβ-エンドルフィンは脳内でヘロインやモルヒネ等のオピオイド系麻薬とほぼ同様の働きをしていることもわかりました。と、いうことは、チョコレートに隠し味としてオピオイド類を入れればチョコレートの美味しさがもたらす多幸感と陶酔感を飛躍的に向上させることができるということです。実際オピオイド類には摂食を促進する作用があるそうです[17]。これはもう美味しさを増強しているといっていいのではないでしょうか。チョコレートのクオリティがそこまでじゃなくてもこれなら十分すぎるくらい相手に喜んでもらえるはずです。
 この方法の欠点としては肝心のオピオイド類が手に入りづらいということですね。ヘロインなんてまず手に入りませんしモルヒネやフェンタニル等の医療用オピオイドもそうそう処方されるものではありません。比較的手に入りやすそうなのは一般医薬品としても販売されているコデインとジヒドロコデイン、もしくは比較的処方されやすいトラマドールくらいですが、これらは弱オピオイドと呼ばれヘロインモルヒネ辺りと比べると効果は弱く、また効く効かないの個人差も非常に大きいです。オピオイドを産出する植物であるケシを栽培するという手もありますが、相当量栽培しなければならないので大変でしょう。さらにはオピオイド類は鎮痛に優先して作用しますので、相手が怪我や病気をしていない健康体でなければいけないというのも欠点としてあります。またオピオイド類は副作用も強いため、相手になんか変なの入ってない!?と感づかれる可能性もありますからあまり適切ではないかもしれませんね。

オピオイド

図2.代表的なオピオイド類

②ドパミン作動系を利用する方法

 もっと食べたいという欲求には脳内報酬系でのドパミンの動きが重要であることが分かりました。ではドパミン作動系に作用する物質、特に中枢神経刺激薬を加えればそのチョコレートに相手はやみつきになるのではないでしょうか、それはもう人生が狂うくらいに。
 この方法は全く使えません。なぜなら実はドパミン系に作用する物質は逆に食欲抑制剤として用いられているのです。これは報酬系以外にドパミンが作用する部位であるドパミン受容体が食欲抑制効果を有しているため[18]で、アンフェタミンやメチルフェニデート、メタンフェタミンという名だたる中枢神経刺激剤は、美味しさを下げることはすれど上げてくれることはまずないということです。因みにですが、覚せい剤の代表であるメタンフェタミンは、注射や吸引 (あぶり)じゃないと強烈な刺激と快感を味わえないと聞いたことがあります。経口ではせいぜいカフェインより目が覚めるし体もシャキシャキ動かせるぜ程度の効果しかないらしく、その点でも経口摂取のチョコレートには向いてません。

覚醒剤 名前

図3. 代表的な中枢神経刺激剤

③カンナビノイドを利用する方法

 突然新しい言葉が出てきましたが、カンナビノイドとは要は大麻です。大麻草 (カンナビス)にはΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)という生理活性物質が含まれており、これは脳内のカンナビノイド受容体に作用することでその生理活性を示します。この受容体に作用する一連の化合物はカンナビノイドと呼ばれており、天然ものだけでなく合成カンナビノイドも多く開発されています。ところで、受容体があるということはその受容体に作用する物質も脳内にあるというわけで、その物質はアナンダミドという物質であり内因性カンナビノイドと呼ばれています。このカンナビノイド、実はいくつかの点でオピオイドに近い働きをすると考えられており、美味しいという感情を増幅させ、摂食行動を刺激する効果があると考えられています[19,20]。実際、大麻草を吸引した後にはマンチーズという食欲の異常増大が起きやすいということが知られています。また、多くのカンナビノイドは脂溶性の高い物質であるので、油分が多いチョコレートとの相性も抜群です。これはなかなかいいんじゃないでしょうか。
 しかしこの方法でも入手困難性が壁として立ちはだかります。カンナビノイドは大麻が解禁されている欧米諸国では日本でお酒を買う感覚で手に入れられるものですが、日本においてはいまだ強い規制下にあり手に入れることは容易ではありません。合成カンナビノイドは勿論医療用大麻も認められていないわが国では処方薬として手に入れることもできないので、入手難易度としてはオピオイド以上です。ただし光明はあります。知ってる方もいるかと思いますが、実は大麻草は野生のものが北海道に自生しています[21]。なので北海道在住の方なら野生の大麻草を採取してカンナビノイドを手に入れることが可能です。ただし、北海道に自生している大麻草はカンナビノイド(特にTHC)の含有量が非常に少なく、医療用嗜好用として用いられる大麻草と比較して約1/100程度しか含まれていません[21]※3。なので北海道中を駆け回って相当量を集める必要があります。うーん、仮に集められたとしても保管場所やカンナビノイド抽出の問題もあるので現実的ではないですねぇ。ただし日本国内では現実的ではないというだけで、大麻解禁国ならこれが一番簡単で確実性も高い方法だと思います。
※3 なので北海道の大麻を採取してハイになったみたいな話はまず嘘だということです。

カンナビ

図4. 代表的なカンナビノイド類

④ベンゾジアゼピン類を用いる方法

 またまた新しい言葉が出てきました。ベンゾジアゼピン類にはいくつかの点でお酒 (エタノール)と似た効果があり、脳内のGABAという神経伝達物質の働きを増強する作用を持っています。そのため日本においては睡眠薬、抗不安薬、筋弛緩薬などとして広く処方されています。そんな物質の名前をなぜ出したかというと、実はこのベンゾジアゼピンにはドーパミン系や内因性オピオイド神経伝達に作用し「美味しい」という感情自体を特異的に増強させる作用があることが知られているのです[12,22]。実際ベンゾジアゼピン系睡眠薬には食欲亢進による過食で太りやすいという問題があります。ですが今回はそれがいい方向に働きます。また、ベンゾジアゼピンは経口で数mg~数十mgといった少量で効果を発揮するものが多く、チョコレートの味や風味を壊さずにまさに隠し味として入れることが可能です。傾眠以外の激しい副作用も起きにくく、それもチョコレートにちょっとお酒が入っているから寝る前に食べてねと言えばそれで解決です。また、他の3つの方法と比較してベンゾジアゼピン類は入手がとても容易であることも大きいです。精神科や心療内科に行って最近眠れないんですといえば高確率で処方されるでしょうから。うん、私が求めていたものはこれです。チョコレートを相手に美味しく感じさせるにはチョコレートにミタゾラムやジアゼパム等を隠し味として加えればいいのです。

ベンゾ

図5. 代表的なベンゾジアゼピン類

結論

 バレンタインに相手にあげる美味しいチョコレートを手作りするとき、ただチョコレートのクオリティを上げるのではなく、食べる側の美味しいという感情を直接増幅させることができるようなチョコレートを作ることができないかを調査・考察しました。その結果、様々な点からベンゾジアゼピン類を隠し味として加えることが最も良いということが分かりました。

※もうちょっとだけ続くのではぇーと思っている方もこいつずっと何言ってんのと思っている方ももう少しお付き合いください。

実際に実行しようと思った方へ

 絶対やめてください。絶対、やめて、ください。冒頭でも書きましたが本稿はジョーク記事です、ネタ記事です。まさか1万文字を超えるとは思いませんでしたし内容に間違いは (おそらく)ないはずですがあくまでネタ記事です。『美味しく感じるチョコレートをつくる方法』の項目ではあえて法律的な問題に触れていませんでしたが、全部ドアウトです。実行しようとしたらどれもあへん法や大麻取締法、覚せい剤取締法、薬機法、麻薬及び向精神薬取締法辺りにバリバリ引っかかります。そもそも同意なしで相手に薬を盛るという行為自体傷害罪に該当します。こんなあほくさいことで前科持ちになって実名報道されてはまさにバカの極みです。相手側を危険な目に合わせる可能性もありますので絶対実行しないでください。何度でも言いますがあくまでネタ記事ですのでほんとよろしくお願いします。


―本稿執筆者―
十六夜咲夜

参考文献

[1].   https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000018086.html
[2].   上野聡. 他 ; 日本物理学会誌. 2016, 71(11), 767-770.
[3].   古谷野哲夫 ; 日本結晶学会誌. 2014, 56(5), 319-322.
[4].   蜂屋巌 ; 日本結晶学会誌. 2001, 43(4), 315-322.
[5].   上野聡 著 : チョコレートはなぜ美味しいのか. 集英社新書 (2016)
[6].    https://www.otsuka.co.jp/a-v/products/develop.html
[7].   河合美佐子 ;  生物工学会誌. 2011,  89(11),  679-682.
[8].    https://www.hakatanoshio.co.jp/trivia/about-salt.html
[9].   菅野洋一朗 ; 生物工学会誌. 2013, 91(4), 213.
[10]. 高橋亮. 他 ; ぶんせき. 2010, 428, 388-394.
[11]. https://news.yahoo.co.jp/articles/ac4dd792a3f0f263b3948817fb4789f9686c1340
[12]. 山本隆 ; 科学基礎論研究. 1999, 27(1), 1-8.
[13]. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-051.html
[14]. T Yamamoto, et al. Physiology & Behavior. 2000, 69(3), 345-350.
[15]. M. Barrot, et al. Journal of Neuroscience. 2012, 32(41), 14094-101.
[16]. https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87
[17]. 山本隆 ; におい・香り環境学会誌. 2007, 38(3), 200-205.
[18]. 池田弘子 ; 星薬科大学紀要. 2015, 57, 11-17
[19]. J. E. Koch, et al. Nutritional Neuroscience. 2001, 4(3), 179-187.
[20]. M. Koch, et al. Nature, 2015,  519, 45–50
[21]. https://hokkaido-hemp.net/wildhemp.html
[22]. D. K. Richardson, et al. Pharmacology Biochemistry and Behavior, 2005, 81(3), 657-663.




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