S.Izayoi
化学全般についての話題
不定期更新の問題演習まとめ
「化学実験をする咲夜さんbot」で呟いてる内容の補足記事まとめです。
男もすなるnoteといふものを、女もしてみむとてするなり。 中国武漢で報告されたCOVID‑19の猛威が世界を覆いはや1年、世界はすっかり変わってしまいました。よく「酒が人をあかんくするのではなく、その人があかん人だということを酒が暴く」なんて言いますけれども、COVID‑19はまさに人間が本質的に進化していないことを浮き彫りにしたと思います。陰謀論の台頭、責任の押し付け合い、非合理的な行動、正直人間とはこれほど愚かだったのかとニュースを見るたびに愕然としました。未知の
※本稿はミニコラムです。 要約直鎖アルカンが本当に「直」鎖なのはヘプタデカンまでらしいですよ。 本文 タイトルをみて「お前は何を言っているんだ?」と思った方がおられるかもしれませんが、実際直鎖アルカンがどこまでまっすぐなのかって考えたことありますか?つまり、十分に低い低温で熱平衡状態にある真空中に浮遊させたときに、完全に伸び切ったまっすぐな主鎖を維持できる直鎖アルカンの炭素数はいくつまでか、という問題でございます。 そもそもの話として十分な低温環境下における[※1]低
まず初めに、許されざる暴挙により凶弾に倒れ亡くなってしまった安倍晋三氏の眠りがせめて安らかであることを心から祈るとともに、このような蛮行に及んだ犯人を強く非難します。志半ばで、しかもこのような形で去ってしまうことになってしまった故人の無念さを思うと、いたたまれなく痛恨の極みです。一国民としてお悔やみ申し上げます。 一報に接してから時間が経ちましたが未だに動揺を抑えきれません。令和4年7月8日、歴史に残る出来事が立て続けに起こっているこの時代に、また大きく、そして許されざる
大学学部~院生向けの有機化学に関する問題を更新していきます。 休日の時間つぶしにどうぞ。 演習問題の解答は次回の演習の後半に載せています。 例) 第一回演習問題の解答→第二回演習の後半 今回のジャンルは『有機化学 基礎』です。 問A問1 カルボカチオン、特にアルキルカチオンはWagner-Meerwein転位やヒドリド移動、アリール移動等の転位によってより安定なカルボカチオンへと変化します。さて、ではFig.1 のA,Bに示すようなカルボカチオンの転位は合理的といえるで
大学学部~院生向けの有機化学に関する問題を更新していきます。 休日の時間つぶしにどうぞ。 演習問題の解答は次回の演習の後半に載せています。 例) 第一回演習問題の解答→第二回演習の後半 今回のジャンルは『有機化学 応用』です。 問A問1 Fig.1 に芳香族化合物のニトロ化によく用いられる試薬を4つ示しています。これらの試薬を反応性の高い順、すなわちニトロ化能の高い順に並べてください。 問2 硝酸とその関連化合物、およびニトロ化合物に関する次の文章のうち、明らかに誤
大学学部~院生向けの有機化学問題を更新していきます。 休日の時間つぶしにどうぞ。 演習問題の解答は次回の演習の後半に載せています。 例) 第一回演習問題の解答→第二回演習の後半 今回のジャンルは『有機合成反応』です。 問Aベンズアニリド誘導体に対し超原子価ヨウ素試薬を作用させると酸化的脱芳香化反応が進行しアザスピロ環化合物を与えます。Fig 1の反応について考えてみましょう。 問1 この反応は ①超原子価ヨウ素試薬とベンズアニリド誘導体との反応 ②酸化的脱芳香化 ③カ
本稿は巷で「〇〇芳香族性」と呼ばれているものを著者の知りうる範囲で羅列していくコーナーです。 1.初めに 皆さんは普段、どのくらい芳香族について考えていますか?。そして、どれくらい芳香族のことを知っていますか。芳香族とは元素でいう希ガスのような存在です。高い反応性を有する類縁体が多い中で優雅に佇むその姿はまさにオアシス、癒しの存在。芳香族と聞いて普通に思い浮かぶもの、4n+2個のπ電子が環状にぐるぐる回っている方々。あなた方が思いをはせるのは、彼らだけではありませんか。もっ
初めに イソシアナート系試薬は多くの有機化学反応および重合、高分子反応で頻出の試薬です。主にウレタン化合物、ポリウレタン、カルバミン酸誘導体の合成原料として、アカデミックでも工業の世界でも広く用いられています。しかし、イソシアナート系試薬は一般的に反応性が高く強い毒性があり、扱いに注意を要するものがほとんどです。その危険性については上記のようにbotでも呟いてますが、本稿はそのまとめと補足を目的としています。 イソシアナート系試薬の一般的な毒性 イソシアナートはイソシアン酸
ジンはいろいろ飲みましたけど結局ビーフィーターかタンカレーに落ち着くんですよねぇ
※本稿は高校生、および大学学部1,2年生向けです。 本稿の要約 原子核同士のクーロン斥力と原子核間に存在する電子によるクーロン引力とのバランスによって化学結合は成立している。 初めに 有機化学、それは大雑把にいってしまえば化学結合の組み換えを研究する学問です。多くの化学者がいかにして今ある化学結合を組み換え新しい化学結合を構築するか、そしてそれによって新たな物質を生み出すかを日夜追い求めています。有機化学に限らず、化学全般の分野において『化学結合』というものは極めて重要な
1. 初めに 実験に欠かさせないものといえば溶媒です。ほとんどの有機合成反応は何らかの溶媒環境下で進行しますし、反応後の抽出、精製、分析にも溶媒が必要になってきます。一般的に溶媒というのはどの実験操作においても系内で最も大量に存在する物質となり、実験がうまく行くか行かないかを大きく左右するファクターの一つであるといえます。しかしながら、ちょっと構造が違う溶媒に変えるだけでも反応・精製・分析における挙動が大きく変わってしまうことが多く、実際その系にはどの溶媒が最適なのかはやって
初めに 毒にも薬にもならないという言葉がありますが、世の中の大抵のものは薬にはならなくても量によって必ず毒にはなります。特に化学実験で用いる試薬は全て何らかの毒性を持っているといっても過言ではありません (抗癌剤の研究のために発癌性の高い試薬を使ったり、耐腐食性の材料を合成するために腐食性の高い試薬を使うなんて言うのは日常茶飯事)。しかしながら人間は慣れてしまうもので、初期のころはビビっていた学生さんもだんだん世間一般の基準では猛毒といわれてもおかしくないような物質をホイホイ
レビュー対象書籍基本情報[書籍名] 有機化学 改訂2版 [著者] 奥山 格, 石井 昭彦, 箕浦 真生 [初版発行年] 平成28年 [発行所] 丸善出版 [形状・文量] B5判 大型本 ・ページ数 423p [定価] 5,000円+税 書籍内容情報とレビュー『注意』 以降には実際に読んで感じた私(レビュー者)個人の感想に基づくものが含まれています。 [書籍ジャンル] 大学有機化学教科書(基礎有機化学) (レビュー者より) この書籍は著者も言っているように、
(注意事項) 本稿はモルヌピラビルについてあくまで有機合成化学的な観点から紹介するものです。なので筆者の専門ではない医学的・薬理学的な話は記載しませんし、それに関する質問等にもお答えできません。 初めに 2021年ももう終盤。現在日本においては比較的落ち着いてきているものの相変わらずCOVID-19禍が継続しています。人獣共通感染症であるCOVID-19[1]はインフルエンザ同様完全に0にすることは不可能ですので、COVID-19禍の収束はインフルエンザがそうであるように接
※本記事はただの小言といいますか何と言いますかな記事でサイエンスな話題はほとんどありません。なのでそういった話題をお求めの方は読み飛ばしを推奨いたします。 ゴールデンウィークも終わり、春の朗らかな陽気がだんだんと湿り気と熱気を帯びてまいりました今日この頃。皆様はいかがお過ごしでしょうか。世間は相変わらず例のウイルスに振り回されておりますが、政府も国民も一年前の今頃とほとんど同じことで騒いでおり「この一年何やってたんだ?」と思わざるを得ません。昨年の今頃はトイレットペーパー
本稿の要約 ナトリウムフェノキシドと二酸化炭素を用いたKolbe-Schmitt反応によるサリチル酸の合成がオルト位選択的に進行するのは、ナトリウムイオンのイオン半径が丁度いい大きさだからである。この反応の進行はアルカリ金属イオンによる二酸化炭素分子の活性化がキーであるが、ナトリウムよりも下の周期のアルカリ金属フェノキシドではイオン半径の増加によりパラ位でのPh-CO2反応も活性化することができるようになるためパラ置換体の副生が多くなる。リチウムフェノキシドが用いられないのは