世界各地の妖怪・怪物伝説への知識がないと味わい尽くせないかもしれないロシア文学『月曜日は土曜日に始まる』
・・・ということは、世界の妖怪・怪物が好きな人ほど、ドハマりする小説、ともいえる!それが『月曜日は土曜日に始まる』。
けっきょく、私はストルガツキー兄弟の作品ではこれがいちばん好きである。
ソビエト連邦に作られた研究所「魔法妖術科学研究所」。
ここではソ連の未来を担う学者やプログラマーたちがオオマジメに、吸血鬼やハルピュイア、イフリートやジンといった、古今東西の民話神話に出てくるモンスターたちを飼育し研究している。
明確な起承転結があるわけではなく、シュールなコントが自由な発想で連続していくドタバタ劇といったところ。ただし実験の失敗で空を埋め尽くすほどの巨大なジンが出現し阿鼻叫喚のパニックが起こる場面など、スケールはド派手である。雰囲気としては筒井康隆の『パプリカ』に近いかも。
ロシア民話はもちろんのこと、ギリシャ神話からアラビアンナイトまで、世界の妖怪・怪物に詳しい人ほど面白い筈!時間があれば、登場するモンスターたちの解説事典を作りたい。
それにしても、こんなにナンセンスなドタバタSFが発禁を食らっていたとは、、、。今となれば当時のソ連の検閲のほうがよほど妖怪的に思える。体制批判の風刺に見えたんだろうか?たしかに風刺的なスタイルだが、科学の行き過ぎとか、正気と狂気の境界の曖昧さとか、ソ連体制なんぞよりももっとデカくて普遍的なものを風刺していると思うのだが・・・。
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