妻が「ゾンビ映画に入門したいのだが何から見ればよいか」とのことなので怒涛の如く推薦を挙げておいた
殊勝なことである!ゾンビ映画の勉強をしたいとは!
それならまず、古典的名作の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』から入門を・・・とありがちなホラー映画本には書いてあるところだが、それはちょっと待った!
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を映画史をよく知らない人がいきなり見ても、さすがに古臭く見えてしまうところがあるだろう。それを懸念する。
むしろこの映画は、いくつかのゾンビ映画を経た後に見て「なんてこった!1960年代のモノクロ作品時代のこの映画で、ゾンビ映画のすべてのエッセンスが先取りされてるじゃないか!」という映画史的感動に震える時のためにとっておくべき。事前の素養が必要なので、入門には、あまり勧めたくない。
入門というなら、いわゆる「ゾンビもの」の王道パターンの原点ということで、ジョージ・ロメロの『ゾンビ』がなんといってもよろしい。いまだにすべてのゾンビ映画はこのバリエーションにすぎない。古びることのない名作。ゾンビのことを勉強したいというなら、まずはこの映画をできれば10回は繰り返し見て、細部まで研究しておいてほしい。
同じロメロでもこの続編の『死霊のえじき』は、好みにもよるが、私個人としては、見なくてよい作品と思う。それよりは、上記作品のパロディでありつつ「ゾンビ」というモンスターのポテンシャルを極限まで引き出した『バタリアン』をオススメする。
日本語版タイトルがふざけているが、実はジョージ・ロメロへのリスペクトに溢れた愛のある作品なのだ!映画史的にも正しいタイミングで出た「自己パロディとしてのジャンルの進化」と言える。
なお、最近の人には「ゾンビというのはゆっくり歩いてくるから、余裕で逃げ切れそう」などという不遜なことを言う人も多い。
そういう人には、「基本的に全力ダッシュで襲ってくるゾンビもの」として、以下のリアリティに震えてほしい。
ゾンビが基本的に走ってくる上に、舞台が閉ざされた建物内という閉塞感というダブルの恐怖なら、RECをオススメする。夜のバルセロナという背景設定も効いている。
「もうちょっとグロ描写が強くても大丈夫!」という人は、勇気を出してルチオ・フルチ監督の世界に踏み出すべし。『サンゲリア』はゾンビ映画の歴史の中でも気持ち悪さでいまだ最高峰と思う。イタリアン・ホラーの本気を知らない人にはぜひ一度見てもらって、この執拗な残酷描写に戸惑ってほしい。サメ対ゾンビの格闘シーン、という、どうでもいいといえばどうでもいいけどたしかに珍しいモノも見られる。
最後に私個人の思い入れとしては、厳密にはゾンビ映画とはカテゴライズされていないけど、『スペースバンパイア』をオススメしたい。クライマックスのロンドン大崩壊シーンは、「走ってくるゾンビ軍団」という『28日後』な世界観の隠れた先駆と思う。
と、一気に語ってしまいましたが、
聞いた妻は喜んでまずは『28日後』から攻めることにしたらしい。
まことに、殊勝なことである!ぜひぜひ、この機会にゾンビ映画というものの深遠な映画史を学んでほしい!
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