見出し画像

先日ロシアへの渡航を恒久的に禁止された63人の一人、中村逸郎先生の著書。

『ろくでなしのロシア』とはインパクトのある書名だが、ぱっと見で判断してはいけない。

このタイトルは、
中村先生がロシアのことを「ろくでもない」と言っているのではない。

中村先生がロシア滞在中に、ロシア人自身がバスのサービスに対して怒り心頭に達し、
「まったく、ろくでなしのロシアめ!」
Вот, эта чёртова Россия!と叫んだのにオドロキを受けて書いた本、ということである。

つまり、「ろくでなしのロシアめ!」と叫んでいるのは、ロシアに住んでいるロシアの方である。

サービス劣悪、誰も責任をとらない組織体制、いくら苦情クレームをつけても無視される。

「そんなロシアなら住まなければいいのでは」と外から見ても思うのだけど、ちゃんと彼らはロシアにに対する愛国心には満ちている、というのが、なんともややこしい。

文中には、かつて帝政ロシアの専制と戦いながら、結局はロシアの民衆に理解されずに孤立して撃破されていったナロードニキたちのエピソードも紹介されているが、

ロシア国内で改革派の若者が「民主化を!自由を!」と運動を起こしても、肝心のロシアの大衆がついてこないので各個撃破されてしまう。この悲しいサイクルが続いているのかもしれない。

ともかく、

本書の主役は、ロシア正教会。

特にプーチン政権にピッタリと寄り添い保護されてしまっているキリル総主教以下の教会の状況について。

教会なのに、酒販売、タバコ販売のビジネスにも乗り出し、がっつりと稼いでいる。それが「おかしい」と叫んだ聖職者は辺境の地の修道院で細々と生きるしかない。こんな絶望的な姿が描かれる。

それにしても、私なんぞシロウトが最後まで読んでもわからなかったこと、そしておそらく、著者の中村先生も「けっきょく、ナゾ」と言うしかないままなのであろう点は、

「まったく、ろくでなしのロシアめ!」
Вот, эта чёртова Россия!
と悲観しているロシアの人々がなぜその状況に我慢強く耐えているのか、という点。これが、ますます、わからなくなった。。。

※ただし、本書の中で、プーチンが登場したおかげで汚職役人や汚職警官の横行が「それ以前の時代よりはだいぶマシ」になったという証言が出てくるので、このあたりが、ヒントといえば、ヒントになるのかも、しれない。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?