北欧デザインの「一汁一菜」を波佐見焼きで作る DUKA4
今回は庶民のための北欧デザインの「一汁一菜」の器を作る案が決まり、同じく庶民に手の届く美しい食器というコンセプトを持つ長崎県の波佐見焼で作ろう、ということになりました。
Scandinavian Pattern Collectionの文化イベントを企画するとき、私たちは、展覧会だけではなく、日本の産地のご協力によって、新たなモノづくりに挑戦します。企画を練る段階でいろいろ調べたつもりでも、日本のモノづくりに関しては素人集団ですので、企画書どおりに事が進まず、予期せぬ難題が待っていることも多いです。一汁一菜の企画では、飯碗、豆皿、箸置きの3ピースを長崎の波佐見焼で作つことになりましたが、そのときの一番の苦労は色出しでした。一汁一菜の食卓を美しく見せることがテーマなわけですから、カラーコーディネートを崩すことは許されません。北欧デザイナーは、色に対して非常にこだわりを持っています。
一方で、陶磁器の色は、ちょっとした温度の違い、その日の環境などによって、まるで生き物のように変化します。デザイナーたちの指定した色をもとに、色出しのテストを何度も重ねて、サンプル箱が山積みになっていきました。あともうちょっと、という段になって「こんな色になるんだったら全然違う色に変えたい」と言われたり、20人以上のデザイナーの思いを実現させるのは、とても大変でした。
苦労の末に、一汁一菜の3ピースが完成しました。デザイナーたちに満足してもらえるかどうか、最後までドキドキしていたのですが、実は、彼らは、指定した色の通りには再現できないことを理解し、むしろ興味深くモノづくりの工程を面白がってくれました。
一部の色出しサンプルは、デザイナーたちには内緒ですが、苦労の思い出として、今でも大切に保管してあります。
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