「なぜ?」と思わせて注目が高まる!?『認知的不協和』
■『認知的不協和』とは?
人は、何かの出来事に遭遇し、それが自分の考えていたことと異なっていると「何で?」と不快に感じます。
この事象を心理学では『認知的不協和』と呼んでいます。
つまり、自身の本音と実際の行動に矛盾が生じる時に不快感やストレスを感じる『認知的不協和』の状態に陥り、この不快感やストレスを軽減させるために(過去もしくは新しい)認知や行動を変化させます。
具体的には、価値ややりがいを見出したり、正当化するという変化を行うようになります。
日常の身近な例としては、「ダイエットして痩せたい」という気持ちと「高カロリーなものを食べたい」という矛盾する認知が、ストレスになっているような状態などが挙げられます。
マイナスに働くことの多い心理作用ですが、見込み客や消費者に対するマーケティングなどプラスに活用することも可能です。
■認知的不協和が生じるメカニズム
この『認知的不協和(理論)』は、アメリカの社会心理学者であるレオン・フェスティンガー 氏によって提唱されました。
人間は、常に自分の思考と行動が一致しているとは限らず、矛盾を抱えることもあります。
自分の中に矛盾があるのは気持ちの良い状態ではないため、この矛盾を解消するために「つじつま合わせ」や「言い訳」、「自己の正当化」をしようとします。
この誰にでも起こる心理的傾向を言語化したのが『認知的不協和理論』です。
この心理的傾向は、「タバコは体に悪い」と認知していながら、「タバコを吸う」という行動をする喫煙者が例としてよく挙げられます。
「体に悪い」が「吸いたい」という、矛盾する事柄を同時に抱えている時に起こる不快的な感情を『認知的不協和』と呼びます。
この例で言うと、「タバコを吸うことでストレス解消になる」と認知を変化させることで、生じる不快感やストレスを軽減・解消することが「自身の認知や行動を変化」させることに該当します。
■『認知的不協和』を立証した実験
『認知的不協和理論』を提唱したレオン・フェスティンガー 氏が行った有名な実験については以下の通りです。
この実験では、「単調でつまらない作業」という認知と、「作業の楽しさを伝える」という行動に矛盾(認知的不協和)を生じさせるという内容です。
実験の結果、意外にも報酬が少なかったBグループの学生は、報酬が高かったAグループの学生よりも、作業の楽しさを伝える度合いが強いことになりました。
報酬の少なかったBグループの学生は、割に合わない報酬だったにも関わらず楽しさを伝えなければならないことから、大きな認知的不協和を抱えたため、それを解消するために「本当は楽しかったのかもしれない」と思うことで、自身の認知に修正を加えて不協和を解消しようとすることになりました。
その一方、十分に報酬を得たAグループの学生は、それほど大きな認知的不協和を抱えなかったため、作業に楽しさを見出そうとする心理作用は働かなかったと考えられました。
■ビジネスシーンにおける発生例
この『認知的不協和理論』という、ある意味で逆説的な心理作用は、身の回りはもちろんビジネスシーンにおいても発生する事象です。
◆利益の上がらない事業に固執する経営者と非効率な業務を続ける従業員
客観的に見ても利益を得ていないにも関わらず事業を継続し続ける経営者、生産性の低い仕事をひたすらやり続ける従業員(※)なども、認知的不協和の発生例と言えます。
この2つの例は、客観的に見ると「マイナス」であることを懸命に「やり続けて」いますが、普通に考えてみるとおかしいことです。
そのため、どこかでバランスをとらないと、この「マイナス」なことを継続し続けることはできません。
なので、例えば「やりがい」や「楽しみ」、「意義」といったプラスの要因を作りだして、継続するために心理的な均衡を保っていると言えます。
※:「生産性の低い業務を続ける従業員」を例に挙げましたが、量を積み重ねていくと質的な変化が起こりやすくなります。なので一概にこの従業員の姿勢は否定できるものではありません。
『量質転化の法則』や「量と質、どちらが大切?」などの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
◆見習おうとしない営業マン
営業成績が上がらない社員が、上司から「ウチのトップセールスマンを見習え」と指摘された際、その社員は「確かに営業成績は上げたいが、トップセールスマンのように努力したくない」と考えるのも、認知的不協和の状態に陥っていると言えます。
この場合、「あのトップセールスマンはそもそも地頭が良い」「営業センスが元々あり、住む世界が違う人だ」と考えることで、認知的不協和の解消を図るケースが考えられます。
◆過酷な状況下にあっても、ブラック企業を辞めない
認知的不協和が発生しがちなのが、ブラック企業に勤め続けてしまうというケース。
激務かつ薄給である「ブラック企業」であるにも関わらず、「やりがいがあるから」と(思わせて)働き続けてしまう。近年話題になっている「やりがい搾取」と呼ばれるものです。
このケースの場合、「ブラック企業の業務環境」という実際の状況と「やりがい」という自分の価値観の間に矛盾→認知的不協和が生じています。
この認知的不協和を解消するためには、やはり「認知を変化させる」か「行動を変化させる」ことが必要になります。
①認知を変化させる:やりがいを追求するためには犠牲は必要と自分の価値観を再評価し現状を受け入れる。
②行動を変化させる:実際の状況である「ブラック企業の業務環境」を辞めて、ほかの会社へ転職する。
■マネジメントやマーケティングにおける活用例
マイナスに働くことの多い心理作用である『認知的不協和』ですが、逆手にとって、社内でのマネジメントや見込み客や消費者に対するマーケティングなど、プラスに活用することも可能です。
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BtoBマーケターより。