今日ご紹介する本は、川端康成の『伊豆の踊子』(新潮文庫版)だ。表題作『伊豆の踊子』のほか、『温泉宿』『抒情歌』『禽獣』の合計4編が収録されている。
先週、伊豆は湯ヶ野温泉の温泉旅館「福田屋」さんの記事をアップした。こちらのお宿は、『伊豆の踊子』の作中で、主人公の「私」が逗留したとされるお宿だ。
『伊豆の踊子』は、数十年前、まだ若い頃に読んだことがあった。「福田屋」さんを訪問したことをきっかけに、を久しぶりに再読したくなり、本書を手に取った。
『伊豆の踊子』は、あまりにも有名であり、ストーリーの説明は不要だろう。この作品を再読し、心地よく明るい読後感を味わった。川端文学の流れるような日本語で表現された、爽やかさや瑞々しさが、伊豆の旅で触れた豊かな自然や素朴さの記憶と結びついた。
これに対して、本書所収の他の3編(『温泉宿』『抒情歌』『禽獣』)は、いずれも、とても難解だと感じた。読みながら、突然、どきりとさせられる展開もあった。読後には、心がざわついた。
巻末の重松清の解説が、この作品集をよく表現していた。
『温泉宿』『抒情歌』『禽獣』の3編は、まさに「魔界」。収録の順番に読むと、「甘口の食前酒」である『伊豆の踊子』で読者を爽やかな気分にさせておきながら、その後すぐに残りの3編で「魔界」の迷宮に放り込む。何という凄い組み合わせだろう。
以下、この全4編について、特に印象に残った部分をまとめておく。
『伊豆の踊子』
『温泉宿』
『抒情歌』
『禽獣』
この本は、解説を含めても218ページにしかならない、薄い文庫本だ。価格もワンコインでお釣りがくる(2024年現在)。それなのに、この作品たちと向き合うのに、何時間、何日もの時間を要し、あれこれと頭や心を総動員した。なんとコスパの良い娯楽だろう。こんなにお手軽に川端文学の凄さと対峙できるとは、ありがたいことだ。
ご参考になれば幸いです!
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