今日ご紹介するのは、作家の林真理子氏の『野心のすすめ』(2013年、講談社現代新書)。
ひとことで言えば、読者に対し、野心を持って努力し続けてほしいと説くエッセイだ。野心いっぱいのご自身のサクセスストーリーも盛り込まれている。
私は、これが出版された2013年頃に、一度、これを読んだことがある。それ以来、しばらくこの本の存在を忘れていた。
その頃、私は、ちょうど、ステップアップを目指して転職を考えていた。タイミング的に、この本は、私の新しいチャレンジを後押してくれることになった。
最近、林氏が、一連の不祥事でイメージダウンしていた日本大学の理事長に就任されたというニュースに接した。それを機に、この本のことを思い出し、もう一度読み直してみた。
再読した結果がどうだったかというと、バブル期を経験した彼女の昭和のテイストが、少々流行遅れだなあとは感じたものの、未だに共感するところが多かった。
以下、例によって、印象に残ったくだりを引用してみる。
まず、お金の重要性についてのくだり。
最近はミニマリストやFIREなどという言葉が流行っている。その背景には、少ないお金でやりくりできればそれよい、という考えがあるように思う。しかし、お金は、いざというときに役に立つ。やっぱりたくさんあったに越したことはないと思う。それをストレートに言ってのけており、気持ちが良い。
次は、努力をしていると、不思議と「強運の神様」が助けてくれる、というくだり。
少しスピリチュアルに聞こえるかもしれないが、努力は裏切らず、運も努力によって開くことができるというメッセージには、勇気づけられる。
そして、財界で活躍する女性を観察し、成功するための秘訣について説くだり。
これらのくだりは、ものすごく昭和の香りがする。たとえば、「ジジ殺し」とか「ウサギとして可愛がられる」とかいう表現などは、レトロだ。
ここ10年くらいで、ビジネス界での女性のハンディキャップはかなり改善されてきた。そして現在は、ダイバーシティ促進の名の下に、働く女性にとっては、追い風が吹いている。しかし、男女問わず、権力者に気に入られなければ活躍しづらい、という構図は、令和の今になっても、まだまだ変わっていないと思う。
本書の終盤では、読者に対して、野心を持って努力してほしいというメッセージが一段と強くなってくる。野心を持つ人と、野心を持たない人の人生の差は、後になって取り返しのつかないほど、とてつもなく大きいものになると説く。
この本を再読して、自分の野心レベルについて振り返るきっかけとなった。アラフォーで本書を読んだ9年前と比べと比べると、私の野心は、かなりしぼんでしまったなと感じた。アラフィフになった今、仕事上の地位も上がり、資産も増え、できることも増えた。他方で、体力、能力などの限界が見えてきて、この先もおそらくできそうにないことや、自分の限界を痛感することも増えた。
しかし、野心をなくしたわけではない。経験や健康なども含め、自分の持っているものを有効に活用して、好きなことを極めたり、さらにやりたいことを見つけたりしたい。第二の人生のための新しい野心を持って、有限な時間と資源を大事なことに集中させて、楽しい人生を送っていきたい。そのように思うことができた。
この本は、特に、若い人たちに読んでもらいたい。景気も悪くなり、活気のない世の中だ。若い人が野心を持つことが、個人や社会の活力や明るさにつながる。若い人には、努力のカルチャーを、暑苦しいと思ったり食わず嫌いしたりせずに、まあ、とりあえず読んでみてほしい。また、林氏が、日大でご活躍になり、若い人向けにどんどんそういうメッセージを発信してくださると良いなあ。
そして、私のように、もう若くない人にも、既に野心をもって努力してきた人にも、この本を読んで、まだまだ頑張れることを実感していただけるとよいと思う。
ということで、この本を、幅広い世代の人におすすめしたい。
ご参考になれば幸いです!
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