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【温泉】恐山温泉(青森県むつ市)

今日ご紹介する温泉は、青森県の下北半島に位置する霊場、恐山おそれざんの境内にある温泉。

恐山エリアには、釜臥山かまふせやまをはじめとする8つの山々と、それらに囲まれた宇曽利うそり湖がある。その宇曽利湖の湖畔に沿うように、霊場である恐山菩提寺がある。

恐山菩提寺の創建は862年。比叡山、高野山と並ぶ、日本三大霊山のひとつ。慈覚大師円仁が夢のお告げに導かれて開山したと伝わる。あの世に最も近い場所とされ、死者への供養の場・故人を思い偲ぶ場として、日本各地から参拝客が途絶えることなく訪れる。死者の霊を呼ぶイタコと呼ばれる巫女の存在でも有名だ。

このお寺の敷地内には、素晴らしい温泉が湧いている。また、こちらのお寺には、宿坊「吉祥閣」という、参拝者が宿泊できる施設がある。私は、2022年夏、こちらの宿坊に1泊して、菩提寺にお参りをする機会に恵まれた。


恐山の風景

車で長い山道を延々と上った後、開けた場所に出た。目的地も近い。

まず、「三途の川」に掛かる「太鼓橋」が現れた。この世とあの世の架け橋だ。死後の世界に紛れ込んだような感覚を覚え、少し背筋が寒くなる。

車でもう少し進むと、立派なお寺の入り口が見えてきた。参拝するには入山料が必要だ。入山料金500円(2022年当時)を支払って、境内に入る。

境内には、霧も立ち込め、厳かな雰囲気が漂っていた。

そして、目の前に、重厚な山門が現れた。

山門をくぐって進むと・・・。何とも神秘的な空間が広がっていた。

そして、正面向かって左手には、火山岩で形成された荒涼としたエリアが広がっていた。

このエリアは、1周約3km、徒歩約40分ほどの散策コースになっている。その名も「地獄めぐり」。この日も、複数の参拝客が地獄めぐりをしていた。

私も、早速、地獄めぐりに出かけてみた。

火山性ガスで岩が変色していたり、ところどころでガスが地面から噴出したりしている。この世のものとは思えない殺伐とした景色で、まさに、地獄だ。

そして、賽の河原に出た。ところどころに石が積まれ、くるくるとまわる風車が置かれている。亡くなった幼い子供を弔う親によるものらしい。

さらにしばらく進むと、宇曽利湖の見える浜に出た。「極楽浜」と呼ばれているそうだ。

東日本大震災の犠牲者慰霊のための地蔵菩薩像。

境内の温泉

さて、地獄めぐりの後は、温泉めぐりだ。

恐山菩提寺の境内には、参拝者が自由に入浴できる温泉がある。男湯、女湯、男女入れ替え制、混浴の4つの湯小屋があり、「冷抜ひえぬきの湯」「古滝こたきの湯」「薬師やくしの湯」「花染はなぞめの湯」という。

 ピンクの部分が温泉

いずれの温泉も、簡素な湯小屋の真ん中の床に、複数のセクションに分かれた湯船が設置されていた。お湯は高温で、白濁している。泉質の違いはあるが、いずれのお湯も強い酸性で、浸かると、肌がピリピリとする。長く浸からないようにという注意書きも、あちこちにあった。恐山という場所にぴったりの厳しさを感じた。

冷抜ひえぬきの湯

時間により男女交代制のお湯。この日は、昼間は女湯だった。泉質は、酸性・含鉄(II・III)ーナトリウムー塩化物泉

古滝こたきの湯

こちらは、終日、女湯だった。泉質は、酸性・含硫黄ーナトリウムー塩化物泉(硫化水素型)

薬師やくしの湯

こちらは、終日男湯になっており、入ることができなかった。そのため、内部の写真はなし。温泉分析書も確認できなかったが、ネットの情報によると、泉質は、酸性・含硫黄・鉄(II・III)ーナトリウムー塩化物・硫酸塩泉(硫化水素型)

花染はなぞめの湯

終日混浴。お寺の中心部からは外れていて、宿坊の裏手にある。分かりづらいので、地図をご参考にどうぞ。泉質は、酸性・含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉(硫化水素型)

すぐ側では、岩の隙間からボコボコと硫黄泉が沸き上がっている。

ラッキーなことに、誰もいないタイミングで入浴することができた。

宿坊「吉祥閣」

地獄めぐりとお湯めぐりを楽しんだら、今夜のお宿である宿坊へチェックイン。

宿泊料は、1泊2食でひとり12,000円であり、大変リーズナブルだった。1部屋にひとりで泊まっても、複数人で泊まっても、ひとりあたりの料金は変わらない。予約手段は、電話のみだった(以上は2022年時のの情報ですので、常に最新情報をご確認ください)。

客室

ひとりで泊まるのが申し訳ないほど、広いお部屋だ。大小の和室が2間ある。既に敷かれているシングルの布団が、とても小さく見えた。

夕食

夕食は18時から、全員一斉にいただく。内容はもちろん精進料理だ。飲酒はできない。野菜ばかりだが、とても豪華で、盛りつけも美しかった。お味もとても美味だし、食べ応えがあった。

食事の前後には、宿泊客全員で、「いただきます」「ごちそうさま」の挨拶をする。食前の「五観ごかん」には、感謝や反省、今後の成長のための言葉が詰まっていた。

夜の説法

食後、19時頃からは、住職代理の南直哉氏が説法があった。多くの著書を持ち、メディアにも登場されている有名な僧侶だ。自由参加だが、たくさんの参拝客が参加していた。

恐山についてのエピソードや、生きることや死ぬことの意味などについて、ユーモアを交えながらわかりやすく語ってくださった。全国から色々な思いをもって集まった他の参拝客とともに、生と死について思いをめぐらせ、自分自身と向き合った。とても貴重なひとときとなった。

朝のお勤め

早朝6時に、館内放送があり、起床。6時半からの朝のお勤めに参加する。地蔵殿というお堂で、僧侶の皆さんが般若心境を読経するのを聴く。神秘的な空間のなか、頭と心が澄んでいくようで、何とも清々しい気分になった。

朝食

朝7時半からは、朝食の時間だ。再び、皆で「五観の偈」を唱えて、いただく。夕食同様、盛りつけが美しく、ヘルシーで美味しいお料理だった。

御法みのりの湯

さて、先ほど境内の4つの湯小屋を紹介したが、実は恐山にはもうひとつ温泉がある。それは宿坊の建物内にある内湯だ。こちらは宿坊の宿泊客のみが使用可能となっている。泉質は、酸性・含硫黄ーナトリウムー塩化物・硫酸塩泉(硫化水素型)

mainichibeer.jpさんのブログより借用
https://mainichibeer.jp/osorezan-kisshoukaku/

深い山奥に位置する、荒涼とした地獄。死後の世界を想像せずにはいられない、凄まじい威圧感。そして、容赦なく強い刺激を与える、油断すると危険な温泉。このような場所は、日本中、いや、世界中を探しても、ほかにはないのではなかろうか。

素晴らしい場所でした。お世話になりました!

恐山についての情報は、青森県観光情報サイトをどうぞ!

宿坊については、こちらのサイトからどうぞ。

https://wa-qoo.com/aomori/osorezan-kissyoukaku/

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