【温泉】鉛温泉「藤三旅館」(岩手県花巻市)
今日ご紹介する温泉は、岩手県は鉛温泉の老舗旅館「藤三旅館」さん。2022年夏に、こちらの湯治部に素泊まりで1泊した時のお話だ。
こちらのお宿の歴史は、今から600年程前までにさかのぼる。ご先祖が山でキコリをしていた際、岩窟から出てきた白猿が桂の木の根元から湧き出る泉で手足の傷を癒す姿を見て、温泉の湧出を知ったと伝わる。1443年頃に仮小屋を建てて浴用利用を開始し、さらに1786年に長屋を建て、温泉旅館を会場したという。その後、現在に至るまで長い間、湯治客に愛されてきた。宮沢賢治や田宮虎彦も通ったという。
後述のとおり、こちらのお宿のお湯は極上で、温泉愛好家の間では大変有名だ。新日本百名湯、日本温泉遺産日本百名湯にも選出されている。
外観
お宿へは、公共のバスで向かった。こちらの看板の矢印に従って進む。
こちらが、玄関。総けやきづくりの風格ある建物が、お出迎えしてくれた。
館内
玄関を入ると、レトロな雰囲気が漂っていて、どこか懐かしい気持ちになる。
後述の「白猿の湯」の近くには、神棚もあった。
鉛温泉の由来の掲示もあった。白猿が桂の木の根元から湧出する泉で手足の傷を癒していたというエピソードだ。
レトロなベンチも。
旅館部の建物を抜けて、私が宿泊する湯治部へと進む。
かなり年季が入った建物のようだ。
歴史を感じる炊事場。
お手洗いはもちろん共同。
客室
私が泊まったのは、20号というお部屋。シンプルだが、必要なものはすべて整った、居心地のよいお部屋だった。
温泉
こちらのお宿の温泉の湯使いは、素晴らしい。湯量豊富な5つの源泉(単純温泉・アルカリ性単純高温泉)を所有しており、加熱、循環、差し水などを一切行わず、完全な源泉掛け流しでお湯を提供している。シャワーのお湯にも、源泉が使用されている。
浴場は4つあり、「白猿の湯」「白糸の湯」「銀の湯」「桂の湯」という名前がついている。
このうち「桂の湯」は、男性用浴場と女性用浴場があり、終日入れ替えはない。しかし、そのほかの「白猿」「白糸」「銀」の3つの浴場は、時間帯を区切った交代制になっている。すべての浴場を制覇できるようにするには、時間割とにらめっこして、どの時間帯にどのお風呂に入れるのかを頭に入れて、何時にどのお風呂に行くか、戦略を練る必要がある。
白猿の湯
こちらのお宿のお風呂で、最も有名なのが、この「白猿の湯」だ。前述の鉛温泉開湯のきっかけとなった、白猿のエピソードにちなんだネーミングだ。
こちらのお風呂の特徴は、まず、湯船が深いことだ。深さが平均1.25mもあるため、立ったままでお湯を楽しむ。そして、その湯船の真下から、源泉が自噴していることだ。お湯が空気に触れることなく、酸化することなく、生まれたての源泉を新鮮なまま全身で味わうことができるのだ。これが、温泉ファンがこのお宿を愛する理由だ。
原則として混浴であるが、女性専用の時間帯が設けられていた。混浴の時間帯に入る勇気がなく、女性専用時間帯を狙って入ってみた。ドアを開けると、足元に、ぽっかりと、広く深い空間が現れた!
階段を下りた先には、大きな楕円形の湯船が鎮座していた。
後から後から、女性客が次々に訪れた。皆さん、私と同様に、女性専用の時間帯を狙っていらっしゃったようだ。
深いお風呂に、たくさんの裸の女性とともに、立ったまま、お湯に浸かった。なかなか見られない不思議な光景だった。時々、足元から、ぷくぷくと泡が浮いてくるのが見える。新鮮なお湯が次々に生まれてくることが感じられ、感動的だった。
白糸の湯
展望半露天風呂。大きな窓から、すぐ側を流れる川、対岸の木々、白糸の滝と呼ばれる滝を眺めることができる。あたたたかいお湯に抱かれて美しい自然を眺められるとは、なんという贅沢。男性専用、女性専用の時間帯が、それぞれ設定されている。
銀の湯
貸切利用もできる内湯。窓からは緑も眺められ、こじんまりとして落ち着いた空間だ。男性専用、女性専用、貸切の時間帯が、それぞれ設定されている。
桂の湯
男性用と女性用の2つの浴場がある(交代制ではなく、固定されている)。内湯と、川に面した露天風呂がある。特に露天風呂は、すぐそばの川のせせらぎを間近で感じられ、開放的で心地良い。
おまけ(素泊まり食)
このときは、素泊まりプランであったため、食事は自分で手配しなければならなかった。私は、花巻駅でバスに乗る前に、同駅近くのカフェ「Lit work place」さんで、ベーグルサンドなどテイクアウトし、これを夕食にした。
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評判どおり、お湯が素晴らしかった。特に「白猿の湯」は、歴史が感じられる、独特で不思議な空間で、唯一無二の浴場だった。4つの浴場をひとつひとつ制覇するのは楽しかった。湯治部のお部屋は簡素ではあったが、昔ながらの湯治の様子を想像することができ、ノスタルジックな気分に浸った。
今回は湯治部の素泊まりプランだったが、食事つきのプランもあるし、湯治部ではなく、旅館部に泊まれば、より快適な滞在も可能だ。さらに、すぐ隣には、別邸「十三月」という高級旅館も併設されていていて、そちらは全客室に露天風呂が付いているという。目的や同行者によって、いろいろな楽しみ方ができそうだ。次は、誰かを誘って、食事付きでゆっくり滞在してみたい。
いいお湯でした。お世話になりました!
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