【読書録】『DIE WITH ZERO』ビル・パーキンス
今日ご紹介する本は、『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社による日本語版。2020年9月)。著者は、ビル・パーキンス(Bill Perkins)氏。児島修訳。副題は『Getting All You Can from Your Money and Your Life(邦題:人生が豊かになりすぎる究極のルール)』。
著者は、米国生まれのコンサルティング会社CEO。ヘッジファンドのマネージャーや、ハリウッド映画プロデューサー、ポーカープレーヤーなどとして、様々な分野で活躍されている。本書は世界中でベストセラーになったが、著者にとっては、本書が初めての著書だということだ。
特に心に残ったくだりを引用してみたい(太字などの強調は原文ママ)。
感想
ここまで読んでくださった方には、もうすでに本書のメッセージが十分伝わっているだろう。
この本のタイトル 『Die with Zero』は、直訳すると「ゼロで死ね。」という意味だ。何ともショッキングなタイトルだが、この本が畳みかけてくるメッセージは更にショッキングだ。
人生で最も大事なことは、思い出作り。人生でわたしたちができる経験には賞味期限があり、健康でリスクが取れる若いうちに有効にお金を使って豊かな経験をするのが良い。若いときにやった無謀な冒険は、その後も一生にわたって思い出に残り、老後も、茶飲み話などで振り返って楽しむことができるだろう。一生消えることのない豊かな「配当」だ。
老後になるとお金を使わなくなる。お金を必要とする旅行や趣味などの活動が体力的に難しくなり、そういう活動に興味を失っていくのだ。有限な時間を必要以上に労働に費やし、せっせと貯蓄に励んでも、所詮死に金になる。家族に残したり寄付したりするにあたっても、相手が有効にお金を使えるように、早めに与えるべき。
本書のメッセージには、腹落ちするところがとても多かった。
「年を取るとお金を使わなくなる」というのは、高齢の両親の歳の重ね方を見ていると、全くその通りだと思う。年々、どんどん外出の意欲が失われていき、好きだった旅行に誘っても、疲れるようで、以前のように興味を示さなくなってしまった。私の両親がお金を使うのは、生活費のほかは、せいぜい孫へのお小遣いくらいだろう。
また、「人生、いつ終わりが来るか分からない」ということを感じることも増えた。ここ数年で、私の友人知人が、若くして突然亡くなったり、重い病気が発覚するケースが増えた。きっと、もっとやりたいことが沢山あっただろう。さぞかし無念だっただろう。
一度きりの人生、後悔はしたくない。
この本で提唱する「バケットリスト」の作成、すなわち、「死ぬまでにやりたいことリスト」に期限を設け、終わりを意識しながらやりたいことに取り組む、というのは良い方法だと思った。
ただ、日本の読者としては、この本をそのまま鵜呑みにすることなく、気を付けるべきこともあると感じた。
まず、著者は米国生まれだが、右肩上がりの経済成長ストーリーが前提となっているように感じた。日本は少子高齢化社会、景気も悪いし通貨も弱い。もらえる年金額も少ないという人が多いだろう。こういう状況で、若くして貯蓄を取り崩すのは大変勇気が要ることだ。「ゼロで死ぬ」ためには、リスクを取ることが大事だというのはわかるが、資産取り崩しのピークやスピードは人それぞれ。急にバンバンお金を使いまくるのではなく、余裕を持たせた資金計画を練るのが良いだろう。
また、「タイムバケット」に、期限付きのやりたいことリストを作ったとしても、やりたいことはどんどん変わりうる。でも、一旦リストを作ってしまうと、几帳面な日本人は、そのタスクを完了することを義務的に捉え、かえって視野が狭まり、不幸せになったりしないだろうか。少なくとも私は自分にそういう傾向があると思っている。新たに興味があることが出てきたら、いつでもリストを修正して、挑戦していいのだ。「タイムバケット」を実践するにしても、過度に自分を縛らないようにすると良いと思う。
以上、少々注意すべき点はあると思うが、貯蓄好きの日本人にとって、貯めこまず、思い出に投資するという視点は重要だ。初老に入り、残りの人生が見えてきたアラフィフの私にとっては、どストライクな一冊だった。
皆さん、健康なうちに、お金を使ってやりたいことを楽しみ、豊かな思い出を作りましょう!
ご参考になれば幸いです!
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