SS「死にたくないから」
私は筆を執った。
理由は簡単だ。何かを書きたかったから。
この世の中は沢山の言葉であふれている。
人によっては雑音にも聞こえるそれを、私は愛していた。
何かを伝えるため。何かを褒めるため。何かを貶すため。何かを愛するため。
その言葉たちは沢山の列を成し、意味を伝えていく。
だけど、全てがすべて通じるわけではなかった。
拾われずに消えていく言葉がある。届かずに死んでいく言葉がある。
それを私は悲しく思うのだ。
言葉に声はない。
音だと比喩しても、彼ら自身が私たちに話しかけて