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教室の中の応用行動分析学

校内の新任•メンター研修会の後、自主研として
「教室の中の応用行動分析学」の読書会をしました。

9名もの若手が参加してくれ、心が躍るような読書会になったので、1時間半議論した記録を残すことにします。

私は応用行動分析学については全く専門でもなく畑違いですので、これから書いていることにも誤りもあるかと思いますが、間違いがあればご指摘いただけると幸いです。

1時間半の板書

今回は応用行動分析学の理論部分の第一章をみんなで読んだので、まずは理論の整理から。

本や記録したノートは閉じたまま、覚えていることを参会者みんなで繋いでいく。
バラバラの知識が黒板の中で繋がっていく感じ。

はじめは、「行動」かどうか判断をする死人テストの話から始まって「直後の出来事」の強化子や弱化子の話が中心。

応用行動分析学
「人間や動物などの行動には、法則がある」と考え、
人間の「行動」を科学的に分析し、望ましい行動を増やし、問題行動を減らすことを目的とした心理学の一分野のことです。

強化子
行動直後の、その行動の頻度を増加させる刺激や出来事のことです。

弱化子
行動直後の、その行動の頻度を減少させる刺激や出来事のことです。

「直前の出来事」については「弁別刺激」という言葉が出てきただけでした。

弁別刺激
行動を強化・弱化する可能性を示すような環境刺激のこと
例えば、
チャイムがなる⇨席に戻る⇨スムーズに授業が始まる
であれば、「チャイムがなる」が弁別刺激になります。

反応プロンプト
正しい行動の自発を促進する目的で与えられる他者からの刺激のこと
例えば、
先生が口の前に人差し指を立てる⇨静かになる⇨気づけてえらいねと褒められる
であれば、「先生が口の前に人差し指を立てる」が反応プロンプトになるます。

ただし、読書会の中ではこの2つをしっかり区別して話をしなかったので、板書の中でも一括りに弁別刺激と表記していますが、正しくは反応プロンプトになるかと思います。

そこで、「弁別刺激」と「反応プロンプト」に焦点を当てて、そのあとは話をしていきました。

「教室の中でいうと、どんなものが子どもにとっての反応プロンプトになっているのか」
具体的な反応プロンプトについて考えていきました。

何人かの先生は
「しー」「大事な話をします」「ちゃんちゃんちゃん🎵(ピアノの合図)」など、自分がよくしている具体的な反応プロンプトについて話してくれました。

だんだんネタがなくなってくると
いわゆる指示•命令系の言葉が並びます。
「聞きましょう」「見ましょう」「おへそをこっちに向けて」

行き詰まりそうになったとき
1人の先生が

「私は放送が流れた時に、スピーカーを黙って指差すようにしています。このジェスチャーも反応プロンプトになりますか?」

と全体に投げかけてくれました。

そこからは若手だけでどんどん話が盛り上がります。
「本の中では青信号も弁別刺激だと書いてあったからジェスチャーも反応プロンプトになるはず」
「じゃあ他にはどんな弁別刺激や反応プロンプトを僕たちは子どもたちに出しているのかな」

「話を聞いて欲しいときの場合は、“静かにしてください”とか言葉での反応プロンプトもあれば、“しー”というジェスチャーもあるし、“前に立つ”とか“誰かが話し始める”とかもあるよね」
なんてことを話しながら、教室の中での反応プロンプトをグループ化していくと

① 当たり前の行動(ex.話し始める、前に立つetc...)
② ジェスチャー(ex.しー、指差しetc...)
③ 声にする(ex.聞いてください、話しますetc...)
④ 強く、こわく、おどす(ex.聞いていない人は知りません、聞きなさい、静かにしないetc...)

この4つに分かれるのではないかとなりました。
これには何の理論的根拠もありませんが。

「けど、子どもにとってそれが反応プロンプトになっていないこともあるし。。。刺激の後には直後の出来事の中で「強化子」を与える必要があるよね。」

「だけど、逆に意図せぬところで弁別刺激なってしまっているものもあるよね」なんて話も出てきて、それが表情や声のトーン。

読書会の前の新人・メンター研修では
教頭先生から「教師が一番の教育環境です」と教えてもらっていたので、
教師が環境だと考えるなら
表情や声までも大きな弁別刺激になってしまうのだな〜と改めて、みんなで納得。

そこから、自分のクラスではどんな反応プロンプトが多いのか、
どうすれば1や2くらいの反応プロンプトに移行していけるのかを考えていきました。

反応プロンプトにおける重要な考え方の一つにフェーディングというものがあります。反応プロンプトの刺激には依存性があるため、その刺激を段階的に減らしていくという考え方です。
例えば
「静かにしなさい」と言い続け、その刺激があったときに静かにしていたら、叱られることから逃れられる学級だとすると、その刺激がないと静かにできない学級になります。

結局、
大人がこれも反応プロンプトになると認識し意図した上で、
子どもの行動が反応プロンプトによって呼び起こされて、強化されていかないといけないわけだから、

ステップとしては、

  1. 大人がどの反応プロンプトを与えるのかを明確にする

  2. 反応プロンプトを与える

  3. 行動を見とる

  4. すぐに強化子となるような褒め言葉を伝える

になるよね。
ということになりました。

そして、その反応プロンプトを動的なものから静的なものに段階的に移行させていく必要がありそうだとなりました。

静的な刺激
① 当たり前の行動(ex.話し始める、前に立つetc...)
② ジェスチャー(ex.しー、指差しetc...)

動的な刺激

③    声にする(ex.聞いてください、話しますetc...)
④ 強く、こわく、おどす(ex.聞いていない人は知りません、聞きなさい、静かにしないetc...)

ここで出た意見が2つ

1つ目が、ベテランの先生は学級のスタートで、静的な刺激で動けるように徹底した指導をしているんだろうなということ。一度動的な刺激に依存した集団になってしまうと、それを①②の静的な刺激で動けるようにしていくのはかなり難しいだろうねという話になりました。

2つ目が、学級経営がうまくいかなかった失敗談を踏まえて、褒めてもそれが強化子にならないときもあるんじゃないかなということ。

そのあとは、特に2つ目の意見についてみんなで議論をしていきました。
話し合いとしてはスムーズにこれでいけそうだとなっていたところに、現実そんな甘くないよねという現場ならではの意見が飛び出し、みんなでそうだよねと悩みました。

結局は、なんでもかんでも褒めたら強化子になるのかといえばそうじゃない。
子どものことをよく観察して、その子の心に届きそうな言葉や場面はいつなのかをしっかりと見とらないといけないということ。
そして、先生と子どもとの関係性も大きいということ。
さらには、学級に受け入れられて安心安全な学級になっているかということ。

そうやって、関係性の中で私たちは生きているということ。

最後は応用行動分析学から少し離れてしまったけれど、システムとして見ていくことの大切さも感じられる読書会になりました。

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