[小児科医ママが解説] おうちで健診:便秘のあれこれ。どれくらいウンチが出なかったら便秘?水分や食事はどう気をつけたら良い?薬はクセになる?
「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。
今回は「便秘」です。
「産まれてすぐは良くでていたのに、なんか最近、ウンチが出ない日がある。」
「ウンチを出すたび、泣いてしまう。これって便秘?」
「便秘の薬ってクセになるってホント?」
そんな、あるあるな疑問について、今回もなるべく医学的な根拠をお示ししつつ、見ていきましょう。
今回の参考文献はこちら。
「1週間に2回以下」「便が漏れる」「出す時に痛がる」は便秘のサイン。
ウンチが出る回数やペースは、本当に個人差が大きいです。
また、お子さんのコンディションによっても変わりますが、一応、以下のような目安が提示されています。
また、国際的につかわれている便秘の診断基準「RomeⅢ」によると、便秘とは以下のような状態です。
また、お子さまの成長の過程で、便秘になりやすい時期というのがあります。
なお、便秘は「遺伝する」わけじゃないですが、「ご家族の既往がある」ケースも多いです。いろんな研究を統合すると、便秘のお子さんについて、親御さんやご兄弟も便秘症状がある割合が30~62%くらいとのこと(小児慢性機能性便秘症ガイドライン)。
ご家族で便秘の方がいると、お子さんも便秘の可能性はあるかもしれません。
そして、診断基準のうち「”便が漏れる”って、便秘じゃなくて下痢じゃないの?」と疑問の方も入ると思います。
ウンチがオムツをこえて漏れたり、あるいはパンツに漏れちゃう場合、もちろん、単純に下痢のこともあります。
が、中には、硬いウンチがお尻の出口で詰まっていて、その隙間を、やわらかいウンチが漏れ出てきていることもあるのです。
この場合は、硬いウンチがそもそもの原因になっているので、ウンチをやわらかくする便秘の治療が必要になります。
水分、食物繊維、マッサージ・・・すべて、医学的なエビデンスは無い?!
さて、便秘というと、しっかり水分をとったり、食物繊維をとったり・・・といった、まずは日常生活でできることが思い浮かぶ方も多いとおもいます。
(便秘というよりは)一般的に推奨されている、水分や食物繊維の量としては、以下が挙げられています。
もちろん上記の基準で、水分や食物繊維がとれれば、それに越したことはありません。
が、お子さんの場合、親御さんの願うとおりに、飲んだり・食べたりしてくれないことも多いです。
実は、医学的には「お子さんが、これくらい水分をとったら・これくらい食物繊維を食べたら、便秘が絶対良くなります!便秘になりにくくなります!」と証明された方法はありません。
水分にからんでいえば、牛乳のとりすぎが便秘につながるんじゃないかという説や、ジュースの果糖が浸透圧になって便秘に効果があるんじゃないかという説もあります。
が、いずれもまだ議論があるところで、医学的な根拠として確立はしていません。
※なお便秘にかかわらず、お子さんに牛乳を選ぶときのポイントや、1日に飲んでいいジュースの量などは、それぞれ前記事を参照にされてください。
またとくに1歳未満のお子さんなどは、便が出ないと「お腹をマッサージして」「綿棒浣腸して」と言われた親御さんも多いと思います。
が、お腹のマッサージや綿棒浣腸も、便秘に絶対効く、という医学的なエビデンスは、これまた無いのです。
お腹さわると嫌がるんだけど。
綿棒浣腸ってちょっと怖いからやりづらいし、泣くのを見るのがつらい。
そんな場合は、ムリしてしなくてOKなんです。
もちろん、お子さんの体質はそれぞれですし、これを食べるとよく便が出る!調子が良い!という場合は、ぜひぜひ続けていただいてOKです。
お腹をマッサージされるのが好きで、ご機嫌になる赤ちゃんもいますし、綿棒浣腸して(ウンチはでなくても)ガスが出てスッキリするお子さんだっています。
でも「私がさつまいも(食物繊維)食べさせなかったから、便秘になったんだ・・・」とか「水分とってくれないから便秘なんだよ~もう~!」とモヤモヤする必要はないよ、というメッセージとして受け止めていただけたら嬉しいです。
水分とったって、食物繊維とったって、便秘になるお子さんは便秘になるし、逆もまたしかりです。
受診や、お薬での治療を考える、便秘のサイン。
・・・というわけで、水分や食物繊維、マッサージや綿棒浣腸など、のきなみお家でできる便秘対策に「エビデンスがない」と言ってしまい、じゃあどうすりゃいいんだよ、という話になってきました。笑
繰り返しになりますが、お子さんにあった食事・水分、マッサージや浣腸の仕方などがあれば、ぜひ続けていただいて良いんです!
が、今からお伝えしたいのは「頑固な便秘は、生活習慣だけではなかなか治らない」「便秘の薬を使うタイミングを逃さないで」ということです。
便秘で受診されたお子さんに、まずは水分や食事を・・・などと、生活習慣で様子を見ることは、私たち小児科医としてもよくあることです。
が、「この子の便秘は、最初から、お薬使ってあげたほうがいいな」と思う便秘のポイントがあります。
もちろん、これのどれかに1つ当てはまったから、即、お薬!というわけではないです。
ウンチの回数が少なくても、お子さんがお尻やお腹を痛がることもないし、食欲もめっちゃあります!という場合は、お薬なしで様子を見ることもあります。
とくに1歳未満の赤ちゃんだと、「便秘じゃなくても」ウンチを出す前にいきんだり・顔を真赤にしたり・泣いたりしてしまうお子さんも多くいます。
これは単純に、赤ちゃんの腸管の機能が未熟だったり、お腹の筋肉を使ってうまくいきめなかったりするだけなので、便秘ではないのです。
(英語でも” dyschezia”つまり単純に”排便が困難な状態”といいます)(①Arch Dis Child. 2015 Jun;100(6):533-6 ②Gastroenterology. 2016 Feb 15. pii: S0016-5085(16)00182-7.)
この場合は、マッサージや綿棒浣腸、また便秘のお薬もあまり効果がなく、成長に伴って自然に治るのを待つ、という流れです。
健康な赤ちゃんでもよくみられます。
が、上記のサインにいくつか当てはまっているのに、便秘くらい・・・と思って放っておくと、あまりいいことはありません。
おしっこの感染症(尿路感染症など)を繰り返す原因にもなったり、トイレトレーニングがすすまなかったり(おしっこはパンツがすぐ取れても、ウンチはなかなかパンツが取れない、ウンチを出すのが痛いからトイレに座りたがらない)、といった原因にもなります。
また重症な便秘だと、便秘で吐いてしまったり・食欲がなくなったりするために、体重が増えづらい、という事態にもなりかねません。
便秘薬をつかっても、クセになるというエビデンスはなし!恐れずにしっかり使ってほしい。
うーん、食事や水分など、気を使ってみたけど、あまり良くならない。
じゃあ次の手は、便秘のお薬かな?
でも「便秘のお薬を使うと、クセにならないんですか?」というご心配はよく聞きます。
結論からいうと、もちろん個人差はあるものの、「便秘の薬を使ったからクセになる」とは医学的には証明されていません。
なので、もし便秘で受診されて、お薬を処方された場合は、恐れず・しっかり飲んでいただけたら嬉しいです。
また「薬をすぐやめない」というのも大事なポイントです。数日や数週間で薬をやめてしまうと、また便秘がぶり返す可能性が高いです。
・・・というわけで、一度お薬を飲む!ときめたら、しっかり飲んだほうが良いのが、便秘のお薬です。
ちなみに、病院に行くほどでもないのかな・・・と迷われた結果、ドラッグストアなどでイチジク浣腸をゲットして、お子さんに使ってくださるケースもよく聞きます。
イチジク浣腸は、医療機関で行う浣腸でも使うグリセリンが入っていて、お子さん用の容量のものもあります。
が、基本的には、赤ちゃんに漫然と浣腸を行うことは、あまり推奨されていません。
(UpToDate” Chronic functional constipation and fecal incontinence in infants, children, and adolescents: Treatment”)
もちろん肛門の出口近くにたまった便を出すのに、一時的に浣腸を使うぶんにはOKです。
が、(先ほど基本的には便秘の薬は、クセにならないと書きましたが)浣腸については、連用することでクセになるリスクがあるのでは、と言われています。
毎回毎回、浣腸しないとでてこない・・・というのが、1~2週間以上も続いてしまうような場合は、しっかり「飲む」お薬もあわせて、治療をしたほうが良いでしょう。
どんな種類のお薬を使うかは、かなりケースバイケースなので、ここでは詳細ははぶきます。
が、一般的に、とくに赤ちゃんの場合で使うことが多い・推奨されることが多いのは、マルツエキス・ラクツロース(モニラック)・酸化マグネシウムといった、「ウンチをやわらかくする」作用のあるお薬です。
どうでしょうか。
かなり詳しく、便秘のことを見てきました。
最後に、ポイントをまとめておきましょう。
(この記事は、2023年2月20日に一部改訂しました。)