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みじかいお話たち

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短編小説集。多ジャンル。主に即興小説で書いたものを収録。他に200字ノベルや詩もあります。
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2016年6月の記事一覧

雨巡りて(中)

雨巡りて(中)

雨巡りて(上)

「おばあちゃん、お客様がいらっしゃったわよ」

襖を開け祖母のいる和室へ入ると、お香の匂いが私たちを出迎えた。長い年月を経て部屋に染み付いたこの香りはどこか懐かしく嫌いじゃない。
祖母はいつものようにベッドにいた。
先ほど昼食を済ませたばかりだったので、ベッドの上部を少し上げて身を起こしたままにしていた。手元には薄紫のハンカチを握りしめている。
祖母の反応はいつもワンテンポ遅

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綿毛のゆくえ(詩)

綿毛のゆくえ(詩)

ふわふわ 綿毛はどこ行くの
土の布団 アスファルトの隙間
きっとそんなところ

わふわふ 毛玉はなぜ駆ける
風にのる 不思議な光を
追いかけたくて

ふわふわ
わふわふ
ふわふわ
わふわふ

ふー、と綿毛は飛んでった
遠い遠い 空の彼方 虹の向こう
その小さな綿に 光をのせて
#詩

雨巡りて(上)

雨巡りて(上)

私の祖母は八十五歳。名は小夜子という。
二十八歳という当時では晩婚と言われた年齢で祖父と結婚し、母を産んだ。母も三十路で結婚し一人娘の私を産んだのだから、どうやら我が家の晩婚は遺伝なのだと言える。
世間では晩婚が遺伝なんてあるわけないと言われるだろうが、あえてそう考えさせてほしい。
私も、もう二十七歳。
結婚相手どころか交際相手もいない、しがない事務員なのだから。
気づけば祖母が結婚した年齢にもう

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