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詩集

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私たちは咀嚼されている(詩)

私たちは咀嚼されている(詩)

私たちは咀嚼されている。
咀嚼され、吸収されている。
それはあまりにも巨大な歯だ。
だから気づかないでいる。

プランクトンがクジラに飲み込まれたことに気づいていないように。
人間も飲み込まれていることに気づいていない。

この広い社会に。
あの大きな空に。
果てしない宇宙に。

ゆっくり咀嚼されている。

いつか吸収され栄養となる。
その時さえにも気づかずに。
#詩

真珠(詩)

真珠(詩)

私が家を出る時に
あなたがくれた白い宝石
それは真の珠
これを身につける時
私は真実を思い知る

「キレイね、母さん」
そう言った娘の手を握り私は微笑む
微かにこみ上げる哀情押し込めて

あなたが此の世を出た時に
あなたがくれた白い宝石
私は身につけよう
そしていつか
私から娘へ
#詩

いただきます(詩)

いただきます(詩)

いただきます
いただきます
あなたの命をいただきます

この体に
この魂に
あなたの命をいただきます

抱(いだ)きます
抱(いだ)きます
あなたの温もりを抱きます

この体に
この魂に
あなたの温もりを抱きます

いただきます
抱きます
あなたの全てを受け止めて
#詩

綿毛のゆくえ(詩)

綿毛のゆくえ(詩)

ふわふわ 綿毛はどこ行くの
土の布団 アスファルトの隙間
きっとそんなところ

わふわふ 毛玉はなぜ駆ける
風にのる 不思議な光を
追いかけたくて

ふわふわ
わふわふ
ふわふわ
わふわふ

ふー、と綿毛は飛んでった
遠い遠い 空の彼方 虹の向こう
その小さな綿に 光をのせて
#詩

囚蝶(詩)

囚蝶(詩)

囚われの蝶は呟く
「あなたは私を食べるのですか」
空腹蜘蛛は糸を渡る
「私はおまえを食べるだろう」

「そうなの」蝶は空を見やる
青空に蜘蛛の糸
不覚にも美しい

「私はあなたに食べられる
あなたの一部となり 糸となって
また あの空を飛ぶのね」

蜘蛛に蝶の思いなど わからぬ
枯葉のようにパリパリと
美しい蝶を食べた

蝶のような鮮やかな
糸を紡げるのかなと 考えながら
#詩