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(感想)遠慮なく容赦なく

(以下、筆者Xから転記)

映画『お母さんが一緒』鑑賞。誕生日の母を喜ばせようと温泉旅行を企画した三姉妹。しかし温泉の選定などちょっとしたことにも文句が出て、姉妹の言い争いは酷くなるばかり。そこに三女の結婚相手が登場し、事態はますます悪化する。三姉妹それぞれがそれぞれに「母」の悪い影響を見ている。

家族であるというだけで、遠慮はないし容赦もない。心からの罵り合いが繰り広げられ、時にはとっくみあいにもなるし、感極まって泣いたりもする。どこの家庭もこれほどまでに「素」の自分でけんかするのかわからないが、私は、家族とのけんかはこうだよねと思った。

三姉妹それぞれが、それぞれに他の姉妹が母の悪い部分に似ていると思っていて、そう主張し合うのだが、そここそがみんな似ているのだ。母の影響は強い。でも、そんな強い影響力を持つ母だからこそ、認めてもらいたかったのだろう。三人とも。

同じ環境で同じ人に育てられて、同じがたくさんあるのに、でも当然ながら別の人間であるから、ぶつかりあう。だけどふいにその、同じ要素が顔を出して、ふっと心が通ったような気になったりする。

三人の問題として「結婚」がある。この作品ではその、母にとっては当たり前の結婚の価値観を否定してはいないが、その価値観はそんなにまで執着すべきものなのか、とは、三人のいがみ合いを見ていると思えてくる。

母の価値観に固執しなくてもいいという思いもあって、でも、長年見てきたものだから、簡単にどかしてしまえずにそこにある。それを悪いこととして描いてはいないように思えた。まあ、家族にはそういうよそとは異なる何かがあるよね、という、一言では語れないものなのだろう。

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大場さやか
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