(感想)知って、受け止めて、そこから
(以下、筆者Xより転記)
11/9、『みえない雲』観賞。チェルノブイリ原子力発電所での事故を背景に、ドイツの作家グードルン・パウゼヴァングが書いた小説の舞台化。西ドイツの原子力発電所で事故が起きた後の、被爆者の体験が語られたフィクション作品である。今回の舞台化には、金沢の高校生達が参加している。
原子力発電所での事故発生の報を受け、生徒達は帰宅を命じられる。ヤンナ・ベルタもその一人。弟のいる自宅に戻り、弟と共に親戚の元へと逃げることになるのだが、事故のため街は混乱している。彼女達を取り巻く状況はめまぐるしく変化する。
ヤンナ・ベルタの行動が物語の中心となっているのだが、ところどころで、出演している高校生達本人が考えていることが語られる。原子力発電所について、災害について、能登の地震、東日本大震災など、それぞれが『みえない雲』に触れて感じたことを話す。
『みえない雲』のパンフレットには「何も知らなかったとは、もう言えない。」という文言がある。知ることは時に過酷で、衝撃を受けることもある。しかし、知ることから始まる何かもある。知って、受け止めて、そこからどうしていくのか。その答えの一部を見せてもらえたように思う。
高校生達が受け止めて感じたことをしっかりと表現できていたと思える、その背後には、大人達の確実な支えがあったのだろうと思われる。そして、高校生達の思いを受けて、観ている私はどうだろうと考えた。知ってきたつもりだ。でも、いつしか傷つかないように心を鈍磨させてはいないか。
知ることは時に厳しい。それでも、目を背けてはいけない現実がある。誰かの行動を追い、その心に思いをはせる演劇には、何かを見つめようとする心を強くする作用があるのではないか。
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