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(感想)百万石演劇大合戦2024予選

(以下、筆者Xより転記)

百万石演劇大合戦2024予選B、Aと観賞。観た順番に感想を。宮悠介『架空生物の鳴き真似(Alien Blues)』長くケーブルをひきずるマイクを振り回し、自分の身に這わす。多重録音で声や音を重ねる。崩れたような言葉を発しながら歩く。

宮悠介『架空生物の鳴き真似(Alien Blues)』母に連れられ突然、新潟から愛媛へと向かい暮らすことになった少年の、言葉にできないつぶやきや叫び。それをなんとか音にしてみたのだろうか。もっと動けるようなところで、あえて動かずにじっと佇む。自己を再確認して、新しい皮膚をまとって動き出す。

あざつねひろみ『三人の女囚~あばしり女子刑務所より愛をこめて~』万引きをした女性が刑務所へ連れられてくる。そこには結婚詐欺をした女性と、愛を求める刑務官がいた。3人による「愛」を巡る物語。多分、本拠地大阪ではもっと笑いが出ていると思う(そこは北陸なので申し訳ない感)。

あざつねひろみ『三人の女囚~あばしり女子刑務所より愛をこめて~』愛を知らない刑務官は純粋に愛を信じ行動する。愛を手玉に取ってきた詐欺師も、浮気をされて愛を失い万引きに走った女性も、それぞれ思うところがありつつ、刑務官のひたむきな姿には愛着のようなものを抱いただろうか。

NiiRU『心臓の音が聞こえるか』生きづらさを抱えながらも、それを表現するために舞台に上がる俳優たち。自分の大事な記憶を演劇にするために、日記帳を持ってきた人を、別の人物が演じる。ドキュメンタリーのような感じから始まり、その手法のまま進んだほうが私的には好みだったかもしれない。

NiiRU『心臓の音が聞こえるか』とはいえ、舞台上ではなく周囲にいる出演者からの声も交じるなど、現実と想像を行き来しているような感覚があった。そのようにして誰もが、想像して自分を問い直し、それからまた現実を見て、少しずつ自分が良いと思う方向に動いていくのだろう。

特定非営利活動法人C,A,ワークス『月の光』奉公していた家から離れ、置屋に売られた女性。娼婦とならざるを得なかった彼女は、奉公先の坊ちゃんに宛てて手紙を書く。なぜ彼女が家を離れなければならなかったのか。苦しみながらも彼女は坊ちゃんを思い、本当のことを手紙にしたためる。

特定非営利活動法人C,A,ワークス『月の光』そんな時代だったと言ってしまうわけにはいかない、女性の悲しい身の上。それが現実にあった出来事だと明かされることは大事なのではあるが、観客の想像力に委ねてほしかった気もする。

劇団fireworks『風が強く吹いている』ある女性(あけみ)に人目惚れしたとおる、あけみのバイト先のカイト、あけみの妹、横沢が出会い、ストーカー被害に悩むあけみを守ろうと「あけみさんを守る会」を結成。デジタル知識に強いとおるの活躍があり、彼らは犯人を突き止める。では「守る会」は解散?

劇団fireworks『風が強く吹いている』ギターの生演奏に乗って、テンポよくリズミカルな進行。いつの間にか仲間的存在となり居場所を作った3人を、後押ししてくれた「風」のようなあけみの存在も魅力的に見えた。

KAZARI@DRIVE×劇団出会い頭『大麻の害について』チェーホフの『煙草の害について』を原作とした、風李一成の一人芝居。妻に頼まれて健康についての講演を引き受けた男は、煙草ではなく大麻の害を語りだすのだが、話はあちらこちらに脱線して、大麻の話にはならない。

KAZARI@DRIVE×劇団出会い頭『大麻の害について』しまいには自分の身の上話になってしまうのだが、彼は妻が見ていることに気付くのだ。延々一人で語り続ける、風李の話術と立ち回りに引きつけられる。最後に見せた哀愁こそが、男の本体であり、最も誰かに聞いてほしいことだったのだろう。


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