『0秒で動け/「わかってはいるけど動けない」人のための』伊藤羊一
なんだかホッとした。それが全体を通しての感想だ。ビジネス本に対してその感想は何だ、と思われるかもしれないが素直にそう感じた。
まずタイトルが『ちょうどいい』ように、よく考えられている。私は『なんとなく動けない』人代表だけれど、そう、「わかってはいるけど」と自分の中で弁解してしまう人代表でもある。ビジネス本、自己啓発本というのはいかに瞬間的に「自分に当てはまる」とタイトルで思えるかが勝負のはずだ。もし、この本のタイトルが『「仕事があっても動けない」人のための』や『「何が課題かわからずに動けない」人のための』だったとしたら、恐らく手に取る人は少ないのではないだろうか。とりあえず私は「いや、そこまででは…」と敬遠してしまうだろう。そんなわけで、「そうそう、わかってはいるんだけど…」と共感できるタイトルがちょうどいい。
実際に内容もちょうどよかった。仕事は完璧でなくてはならないという妄想に取りつかれている私にとっては、「まずβ版を出してトライアンドエラーを繰り返す」「最初の発言は『たたき台』で構わない」というのは非常に参考になった。「最初から正解がわかっているなら会議は必要ないのだから、恐れずにたたき台となる発言をすること」。…確かに。「量が質を生む」これも納得。「他人事ではなく、自分事として仮説を立てる」これは常に課題に感じている。自分事なら思いつくはずの疑問が無いまま、聞き流してしまうことが多い。
そんな風に、一つひとつがちょっと耳が痛くて、その分、私にとっては必要な内容だった。定期的に読み返す教科書の一冊として、実行できているかを振り返りたいと思う。
そして、何にホッとしたかというと、後半に「正しいことを通すよりも、最終的にはみんなが笑顔で終えることを目指す」という項目があったから。そして、仕事は誰かのハッピーを作るためのもの、という著者の想いがあったから。それまで「自分のポジションをとる」ということが何度も繰り返されていて、「やっぱり仕事ではそういう、周りと競う攻めの姿勢が大切だよね」と読んでいてプレッシャーを感じる部分もあったのだが、働く上での根本が書かれていて安心した。
さて。うちの会社は普通に明日も出勤日。一部でテレワークの導入も検討中だけれど、私は人事部なので恐らく休業になるとしても、最後まで出勤することになると思う。「すぐに動いて」この非常事態を乗り越えたい。