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なんの勧誘だったのだろう。
ちょうど教育センターを出たところでした。娘の不登校について相談したところ「様子をみましょう」と言われ、途方に暮れていたんです。
納得しないような、腑に落ちないような顔で歩いていたのでしょうね。
建物の出口をでて、門を出たところで声をかけられました。
「なにかお悩みですか?」
自転車に乗っていたのに、わざわざ降りてきて話しかけられました。声をかけてきたのは、30代くらいのキレイなママさん。ママさんだとわかったのは、自転車の前と後ろにチャイルドシートがついていたからです。
わたしはイヤな予感がして、とっさに答えました。
「なに1つ、悩みなんてありません。幸せですから」
そう答えても、彼女は引き下がりません。
「わたし、あなたの力になりたいんです! 3人の男の子を育てているんですが、きっとあなたの力になれます!」
元気で明るい声でした。わたしはバス停に向かって歩いていると、彼女は自転車を押しながらわたしの隣りに並びました。
2度目の途方に暮れた瞬間でした。わたしも負けじと明るく言い放ちます。
「わたし、すごく夫と仲良くて、夫はなんでも言うことをきいてくれて、優しいし、労わってくれるんです。だから悩みなんてありません!」
もうすぐバス停に着きます。あと少しの我慢です。わたしがバス停に目線を向けると、彼女は焦りだしました。
「わたしも子育てで悩んでいた時期があったんです。辛くて悲しくて、でもそんなとき何もかもが救われることがあって、いっしょに学びませんか?」
(な、なにを……!?? こ、こわすぎる)
(なにを学べと!?)
ちょうど、バス停につきました。だけど、直ぐにバスは来ません。彼女もわたしの隣りから離れません。
でも言い返す言葉が出てきませんでした。
彼女は1人で勝手に話しはじめます。男の子の子育てに悩んでいたこと。嫁姑関係がうまくいっていないこと。夫婦関係も悪かったこと。
「そんなとき出会ったのが……」
話は途中でしたが、
「あ! バスが来ました!」
「じゃ、失礼しまーす」
そう言ってバスに乗り込みました。
こわくて、歩道側ではなく、車道側の座席に座り、彼女から見えない位置に座りました。
話しは途中になってしまったけど、彼女はわたしに何を勧めたかったのだろう。いまだに気になっています。
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![神崎 さやか](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/99214051/profile_c1d075cacb6d3f96123b1c0842d20909.png?width=600&crop=1:1,smart)