『地面師たち』を見て思うこと
ここのところ、Netflixで韓ドラを封印して日本映画と日本ドラマを立て続けに視聴した。
映画は『キングダム』の最新作を映画館で鑑賞したくて、これまでみたことがなかった1〜3話を一気見してから映画館へ行った。
そしてドラマは何かと話題の『地面師たち』を見た。
わたし的にはこちらのドラマの方にどハマりしてしまった。
①リアルでスリリングな地面師たち
地面師というのは、
「実在する土地」の「偽物の所有者」になりすまし、「本物の所有者」に気づかれることなくその土地を売却したように見せかけて、多額のお金を騙し取る不動産詐欺師のことだ。
この手の詐欺は1人では成り立たない。いくつかの役割分担をそつなくこなせる人材とチームワークが必要だ。
このドラマ『地面師たち』の中には精鋭の詐欺集団として、交渉役(綾野剛)、仲介役(ピエール瀧)、偽地主の手配師(小池栄子)、土地の情報屋(北村一輝)、そして彼らを統括するボス(豊川悦司)がいる。
それぞれクセの強い役どころを役者達がリアルにスリリングに演じていて目が離せない。
②一般の人ほど怖い物知らず
私は前職が建築関係だったので、不動産取引にも立ち会うことが多かった。
土地と建物を合わせて銀行ローンを組むことが多いので、
土地決済の時点から施主様のお供で、不動産屋や銀行にて立ち会いを行う。
私からすれば、不動産取引は騙されてもおかしくない恐ろしいものだ。
だから自分の家を建てる時も、息子の家を建てる時も、土地探しから土地取引に至るまで、自社の親会社である不動産会社に協力してもらった。
売土地側の不動産屋も親会社の不動産屋が昔から何度も取引している見知った会社。
司法書士もいつもお願いしている先生に。
という具合になるべく知らない他者を入れないように注意した。
しかし、一般のお客さんは怖い物知らずのお構いなしだ。
ネットを見て自分でお気に入りの土地を探して来ては、この土地に家を建ててほしいと相談しに来られる。
私達はまずその土地の所有者の情報をいろいろな情報網を駆使して集め、近隣へ聞き込みに訪問することもあった。
これは建築屋の仕事では無いと思うが、大切なお客様が騙されては元も子もないので、大変気を使っていた作業だ。
③なぜこうも簡単に騙されるのか
これほど注意していても騙される時は騙される。
2017年にあの天下の積水ハウスが地面師にやられた時は業界中が震撼した。
まさにこのドラマは、あの時の事件がモデルとなっている。
それではなぜこうも簡単に騙されるのだろうか?
私なりの考えとしては、
それは不動産取引の特殊性にあるのではないかと思っている。
1.買う側より売る側が上に立つ
一般的には、売ると買うでは、売る側は買う側に買って頂くという意識が働く。
お金を払う方が上で、お金を貰う方は下のような意識だ。
それが不動産取引では逆転する。
その土地を売って頂くとなるのだ。
それは唯一無二の土地という特殊な商品性にあるのだろう。
「お前には売らない。」
と言われてしまえば、一生手に入ることはないのだから。
2.なぜか急ぐ
ドラマの中でも出てきたが、
不動産取引にはそれなりの時間がかかるものだが、その中でも「なる早で!」という感じでなぜか急ぐ。しかも買う側が。
これは貴重な土地情報を他社や他人に知られたくない。
横取りされては大変だ。
売主の気が変わったり、親戚からの反対意見が出てきたら困る。
ましてや地主が高齢の場合、亡くなってしまえば、相続人全員の承認を貰うのは気が遠くなる程の手間と時間がかかってしまう。
そうした不謹慎な理由もあって、
「なる早で!」と急いでしまう。
④どちら側につきますか?(ちょっとネタバレあり)
この『地面師たち』
グロくてエグい描写が多いにもかかわらず、めちゃくちゃ面白くて引き込まれてしまった。
ストーリー展開もリアルだし、
あの品川のロケ地は以前私が上京した時に宿泊した高輪ゲートウェイ駅近くのホテルから見えていた工事現場辺りだろうか?
俳優陣の演技も素晴らしくて、役どころを楽しんでいるように見えた。
そして、不謹慎にも完全に綾野剛や豊悦側つまり詐欺師側に立っている自分がちょっと怖い。
「池田エライザ(刑事)邪魔するなよ!」と祈りながら、
山本耕史(青柳)が騙されて取引が完了し、司法書士から銀行決済の電話が入った時には「よっしゃ!」っと膝を打つ自分。。。
こういうドラマを見る時、みんなはどちら側に立って見ているのかな?
一度聞いてみたいものだ。
私は正義とか悪とか関係なくなってしまう。
麻薬的な魅力をもつ世界の方に引き込まれ肩入れしてしまうのだ。
*Netflix、集英社より画像引用