続 人体錬成の過程 #生理痛の話
女性一人称の小説を書いてきて。
そのために様々な取材を重ねて。
話のリアリティ維持のために、キツイしもネタ話の飛び交う女子会にも参加してきました。
それでも生理も出産も、想像の範囲内でしかありません。ですがその近似値のような体験をしました。
もう20年以上昔の話ですが、こんなことがありました。
夜半に下腹に激痛が走り、お腹を壊したかなとトイレに籠りましたが異変がないのです。それで立ち上がるけど、下半身に力が入らない。そのうちに四つん這いでしか動けなくなって。安眠している妻に助けを求めました。
深夜の救急車で運ばれて。
診断の結果が、尿路結石。
内直径1.6㎜の尿管に8.06㎜の結石が詰まっていると。
その尿路とは、腎臓から出てきた原尿を膀胱へと送る管です。
この苦痛はその尿管が詰まってしまって、内壁を傷つけながら、しずしずと下りていく痛みであると。
「方法はね、この24時間点滴で強制的に水を注入してね、その水圧で押し出す方法と。そうだな、陰茎からカテーテルを挿入して、そうちん○に管を入れて、患部まで通して薬剤を・・・」
「すみません、そっちの方法だけは勘弁してください」
で。その苦痛がどういうものかというと。
基本的に肉体の外傷というのは、その場所が特定されていて、実はある程度は慣れてしまいます。複雑骨折も激痛ですけど、その場所を庇えばある程度は緩和することができます。
ですが内臓は違う。
下腹全体の、どこがしくしくと痛いのかも判らない。
寝返りをうったり横寝を試みて、痛みが引いたかと思えば、すぐに別の場所が重たくなる。なんだか対応がしようもない痛みです。
何度もナースコールで鎮痛剤を点滴に追加して貰うけど、痛みが和らぐことがありません。
婦長さんがやってきて。
「ああ。これねえ。あたしも結石やったけど。出産と同じ苦しみだもんね。そりゃあ内臓内に、ありえない巨きさのものが通過していくから、鎮痛剤が効かなくても当然よ」と冷淡に言い放つ始末。
「貴方、お子さんは?」
「娘がいます」
「そうね、よかったわね。その痛みって出産の陣痛と同じだから。奥さんと同じ痛みを理解できる男になれたね。産んでくれて有難うと感謝しないと」
苦痛に悶えながら、それを有難く頂戴しました。
「まあ、産みの苦しみだから」とキメ台詞も拝領。
会社の同僚たちは「困っているだろ、不自由しているだろ」と、タイプから外れたエッ○な本を差し入れてくれたが。迷惑でしか、ない。
その陣痛は2日2晩続きましたが、ふっと痛みがなくなりまして。でも尿路にはまだ存在しているとのこと。
それはエコー診断でくっきりと目視できます。
「ああ。これ尿路の隙間に結石が落ち込んで、原尿が通り始めたんだね。どのみち石の除去をしないと腎盂になるからね」
なんて恐ろしいことを。
退院して数日は、傷ついた尿管内部をすうっと液体が通過する感触を、僅かな痛みとして知覚しました。
ああ。これは創作に活かせるなぁ、と。
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