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はじめて切なさを覚えた日 #青ブラ文学部

 はじめて、ではないのですが。
 切ない思いを連ねると、人生が芳醇になります。
 中でも純度が最大級だったのがこの切なさです。
 今でも長崎市に足を伸ばすと、この自宅であったビルに立ち寄ってしまいます。ここで過ごした30年もの日々を反芻してしまいます。

一緒に映画をみたよね

 ここには愛した女性が妻になり、ワンコがそこに参加して、娘が生まれて人生を刻みました。あの時期、ありとあらゆるものがここに集約していたでしょう。
 このワンコがいつしか家族の絆を繋いでいました。
 ワンコの死が全員がばらばらになるきっかけのひとつです。
 今やここは他人の持ち物です。
 それでも立ち寄ってメンテが行き届いていない箇所を見つけると、お節介にも小腹を立ててしまいます。

 娘の誕生日に贈ったバイオリン型ベースも、別居時に置いていきました。
 しばらくは玄関に飾っていたのですが、離島に引っ越しする際には処分しています。

 ここに立ち、ただいまと呟いてみます。
 返事を期待するのではなく。

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