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テオ・ヤンセンの生命体
ふと古い写真ホルダーから見つけ出した。
大分美術館で開催されたオランダの芸術家、テオ・ヤンセンの展覧会の一コマであったろう。
この生命体は、その肉体を「黄色いポリ塩化ビニールのチューブとサテーの串、そしてテープ」で出来ていると彼は説明する。海岸に流れ着いたそれらから生まれた生命体という浪漫がある。
その主食は、風。
生命体は風から得た力で砂浜を歩き回ることで、その砂丘を踏み鳴らして海岸線を永久に守るという「生命体」となる。それをストランドビーストと呼ぶのだという。
いかにもオランダ人らしい発想ですね。
彼はデンハーグに生まれデルフト工科大で物理学を学ぶ。画家であり科学者であり、そして詩人だと思う。
このアノマリス アポディアキュラというストランドビーストは、彼のいうところのアウルム期(そよ風の時代)に当たる個体だという。
本来ならば大きな帆を拡げていて、そこから受けた風力をペットボトルの「胃」に圧縮して歩行を始める。この展示では帆は一部だけで、コンプレッサーによって圧縮空気を充填してからの歩行展示だった。
しかしこの巨体が、実に滑らかに動物的に動くのだ。
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その後は長崎でも展覧会があったので足を運んでいる。
このアノマリス リジデプロペランスはタピディーム期(熱がやわらいだ時代)のビーストで。今は身動きができないので化石だという。
両端にプロペラが付いていて、往年はせっかちに動いていたらしい。
残念ながら長崎での展覧会は、化石化したものが多かった気がする。
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ただこのビーストは迫力ありまして。
「風の谷のナウシカ」での王蟲を思い起します。ナウシカの駆るメーヴェに迫っていく、その前肢のようでした。
今年は静岡で展覧会が開催されているようです。
ぜひ体験してみてください。