郷愁のひと皿 2 ♯帰りたい場所
早朝から峠を走る。
明治の空気が残るこの道に、愛車を連れていきたかった。
佐賀の鹿島市に浜宿というエリアがある。こうした蔵と店舗は古き良き匂いがする。お醤油を売っている醸造所から、ほのかに懐かしい香りが流れてきていて、堪らずに2本を求めた。
地酒も多数並んでいたが、体質的にアルコールが合わないので、そちらは素通りできる。
今日は佳い女子とのデートの日❤️
もう30年以上、付かず離れずの距離を保ってきた。
彼女に対しては性差を超えた、友情と恋愛の狭間にある感情を抱いている。
彼女と真っ先に向かったのは。
東長崎にある、パティストリ。
フランス人のマダムと知己になって10年は超える。
それで私が島で焼いたケーキ🍰をお土産に出すと、マダムから「珈琲飲んでいかない❓」のお誘い。
そうしてやっぱりおもてなしのひと皿。
長崎市のレアーリ。
このお店に彼女を連れていくのは、初めて。
前菜からパスタにもメインにも、デザートにも手を抜かない姿勢に感服します。一際愉しい時間を過ごして。
あたし、これからどうやって過ごしていけばいいんだろう。
そう呟いたので、一緒になろうよ、と即座に言った。
夫婦であっても、いや夫婦だからこそ話してはいけないコトをお互いに話してきてる。心を裸にしてきてる。
だからお互いで、向き合うことに躊躇いがあったと思うよ。
あたしが側にいることで、貴方の重みになって欲しくない。自由であって欲しい。
いや自由は失わないと思うけど。私の自由というか勝手さを、誰よりも詳しく知ってるよね。
ここでキスして口を塞ぐのは簡単なことで、それはこれまでもよくしてきたことだけれど。
初めて真剣に、相手の心まで抱擁できた午後だった思う。
ただ心を裸にしただけで、勇気がなかったことを知った。
そこが帰りたい場所であることを、願う。