マガジンのカバー画像

餓 王 鋳金蟲篇

12
紀元前十五世紀の古代インド。   このドラビィダ人が農耕と牧畜で生活している大地に、アーリア人が武力を持って侵入している時代。後のインダス川と名前を変えた七大河に戦乱が満ちている…
運営しているクリエイター

#青ブラ文学部

餓 王 鋳金蟲篇 2-5

 天の大河が瞬いていた。  薄い大気が澄み、烈風が身を斬るように冷たい。  私は袈裟を二重…

百舌
2か月前
16

餓 王 鋳金蟲篇 2-4

 空気が薄くなった。  灌木は既に見ない。  昨日までは平原を覆う草原があったが、今や岩陰…

百舌
7か月前
12

餓 王 鋳金蟲篇 2-3

 相貌に見覚えがある。  脳裏の記憶と相結ぶものがある、その少女にだ。  カリシュマと呼ば…

百舌
7か月前
9

餓 王 鋳金蟲篇 2-2

 その女性が纏う威光は、日輪の如きものだった。  これがタキシラ国を統べる女王かと思い、…

百舌
7か月前
8

餓 王 鋳金蟲篇 2-1

 闇夜の地平線には、プシュヤ星宿が浮かんでいた。  イ・ソフタでの逗留は数日に抑えた。  …

百舌
8か月前
10

餓 王 鋳金蟲篇 幕間

 適齢期というものがある。  恥ずかしながらの年齢を刻み、後悔の多い半生を振り返って、初…

百舌
8か月前
11

餓 王 鋳金蟲篇 1-5

 イ・ソフタは天空の要害都市である。  ヒンディークシ山脈のレーへ峠を越えた圏谷に位置する。かつてはそこに氷河があり、氷層の膨大な重量が削り取った凹地だという。  その峠を頂点に、三方に街道が走る交易の要衝だ。  レーへ峠は、通り名では白骨峠とも呼ばれる。  ただ急峻なことだけではなく、氷河が残るほどの低気温であり、多くの命がそこで散っていった。一年の過半は厳冬期にあたり、春には草花が僅かに咲き、僅かに実りある夏を過ぎれば、氷雪の突風が吹き荒ぶ峠だ。  旅人はその高地に登るこ

餓 王 鋳金蟲篇 1-4

 曙の雲が七色にたなびいている。  光彩が時の経過で移ろう時間だ。  男は膝をついて嘆息し…

百舌
8か月前
11

餓 王 鋳金蟲篇 1-3

「小僧、何を企んでいる」  無言の重圧がひしめいている。迂闊であった。遠巻きに囲まれてい…

百舌
8か月前
10

餓 王 鋳金蟲篇 1-2

 これは興味深い。  私は待つことにした。  一応、錫杖棍は手元に置くことにした。  この…

百舌
8か月前
12

餓 王 鋳金蟲篇 1−1

 中天に半月がかかっていた。  雨が近いのか、朧に霞を纏っている。  そのために星空が疎ら…

百舌
8か月前
12