ワイヤレス
昼前に宅配便でワイヤレスイヤホンが届いたのだ
型落ちのノイズキャンセリングだ
もう少し、あと一時間早く届いていたら電車で景色を見ながら音楽を聴けたと思うのだけど
今日はそういう巡りの日なのだ
そう思いすぐに家を出て歩いて駅に向かう
田舎駅のプラットホームには高校生がたくさんいて
話し声が少し大きいかもしれないなと不安になった
5分待ってやってきた岡山行きの普通に乗るとそこでも高校生が多いなと不安が増幅した
次の倉敷駅ではいつものようにたくさんの乗客が降りる光景は見られず
また高校生が乗ってきた
きっと新学期が始まったばかりで授業が短いのだと想像する
女子の話し声が耳を突く
たまらず耳栓をする、ニット帽をチラッとめくり装着する
いくつかめの駅に着くときにひとつ席が空いたので早足で確保したらすこし落ち着いた
岡山駅で降りて古い商店街で、初めての、本と雑貨のちょっとセンスよさげなお店を一旦通り過ぎた末に探し当てたけれど、シャッターが下りていた
3種類のSNSをその場で確認したけれど2020年を最後に更新されていなかった
そういう巡りの日なのだ
肩を落として駅のショッピングモールの書店に行く
フォントについての本を手にとって買うことにする
もう一冊、目当てのエッセイを探したけれどどうしても見当たらないので男性の店員に尋ねると、書籍名を初めて聞くような素振りをみせたので、無いことを覚悟して、その場合取り寄せてもらうかどうか先回りして心配する
さっきの店員はレジの中でパソコンの画面をしばらく見ていたかと思うとすたすたと迷いなく書架に向かい
30秒くらいで戻ってきて一冊の本をぼくの目の前に差し出した
こちらの本でよろしいでしょうか
と聞かれたので、これです、と感謝の気持ちを伝えた
レジで代金を払い、リュックの中の布袋に入れて、一階にあるチェーンのコーヒーショップに入り、ホットコーヒーのショート、つまり一番安いのを一杯注文して窓際の席に座った
外は晴れていて人が行き交っている
それでももうあと一時間、ワイヤレスイヤホンが早く届いていればなあ、そうすればほぼ完璧な一日になったかもしれないなあ、と本を開く
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