Time After Time / Cyndi Lauper

突然この曲のサビ部分が脳内に流れ始めて、最初はメロディラインだけで歌詞はおぼろげだった。確か「time なんとかなんとか」だったなと必死に思い出そうとして、「time goes by?」などと寄り道をしながらも、最後にはすとんと正解の「time after time」に辿り着くことができた。いやそれにしても、いったいどうして、急にこの曲を思い出したのだろうか。

はじめてこの曲を聴いたのは、THE ALFEEの坂崎さんがカヴァーをして歌っていたもの。どれくらい前だったかは忘れた。なんだか素敵な曲だなと、歌詞の意味もよく分からないまま聴いていた。その後、この曲は1983年にシンディ・ローパーの楽曲として世に出たことを知る。奇しくも私と同じ生まれ年。だからと言って特別な親近感が湧くわけでもないが、気にならないわけでもない。さらに調べて、本当にたくさんのアーティストがカヴァーして歌っていることも知った。だがたぶん、この時はこれで終わりだったと思う。CDを買おうだとか、自分でも弾いてみようとか、少しは思った憶えがあるが、実現はしなかった。

そしてそれから何年くらい経っただろうか。5年? いや10年くらい経っているかもしれない。突然メロディラインが流れてきて、タイトルもしっかり思い出すことができたのは、私の記憶力が良いというわけではない。何かこう、ひとつの直観のようにタイトルを思い出して、それから、You Tubeで調べてみた。今日、私ははじめて、この曲の歌詞を意味も含めて知った。

この曲はひとつの恋愛の歌として、少し切なくて、でも希望と力強さを感じさせるメロディラインに、流れるような綺麗な歌詞が乗っている。素直に素敵だと思った。例えばサビの部分、日本語に訳してみると(武田意訳)、

「あなたは迷ったとしても探すことができる、そして私を見つけるでしょう、何度も、何度でも」

言葉の意味としては素敵だけど、残念なのは日本語ではあのメロディーに乗せて歌うことはできないということ。歌詞として意訳をすることもできるが、そうするとなんだか味気ない。曲と英語の歌詞が、まるで互いを自らの半身のように思い、結ばれている。だからふっと口ずさむ時、私はすぐには意味を理解できない英語でなんとなくその音を再現している。

この曲はおそらく恋愛の曲として書かれ、恋愛の曲として世界中に広まっていったのだと思う。だけれど今日の私は、単純な恋愛というだけではない、なにかもっと、人間の人生そのものを大きな視点で視たような、そんな印象を持った。作中の「I」と「you」は、いったい誰のことで、どんな関係性なのだろうかというちょっとした疑問。それは男と女でもいいし、もっと多様な恋愛関係でも、兄弟でも、親子でもいいかもしれない。だけれど、上に載せた私の意訳の部分から感じたのは、もっともっと大きな存在からの、地上を生きる人間に対するエールだった。神様、までいくと行き過ぎかもしれない。でも天使だったら? 私たちはふとした瞬間に、なにか見ることも触れることもできない、だけれど確かにそこにいる優しい存在に思いを寄せることがある。それはある人にとっては天使かもしれないし、ある人にとっては先祖の誰かかもしれない。あるいはもっと身近な存在かもしれない。何にしても、私たちは自分がひどく迷ったり、落ち込んだり、絶望したりする時、ある人は意識的に、ある人は無意識に、自分を超える何かに助けを求めているものだ。そしてその時、もしも自分の発する助けの声に返事がきたとすれば? それはきっとこの歌詞のように、どこまでも優しく、切なく、力強い言葉なのだと思う。

「あなたは迷ったとしても探すことができる、そして私を見つけるでしょう、何度も、何度でも / もしあなたが倒れたら、私が受け止めてあげる、私はずっと待っている、何度も、何度でも」

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