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「日経平均10万円」時代が来る!(藤野英人)

なぜこの本

読書は著者との対話。
多忙だったり知己のない著者でも読書をすれば、話を聞くことができます。
読書に加えて、自分で調べ、考えれば、対話することさえできます。
読書の醍醐味の一つではないでしょうか。

著書が面白い方はお話も面白いし、逆にお話が面白い方は著書も面白い。
藤野英人さんは勉強熱心かつユーモア豊富で話が非常に面白い方です。
そんな藤野さんが不思議な題の本を著されたので早速読んでみました。

どんな本

投資に関しては有象無象の本が存在しますが、本書は題こそ怪しいものの、内容自体はストレートで真っ当。
2024年2月初旬時点、日経平均は36000円を超えています。
これが10万円を超えてくる、というのが本書タイトル通りの要旨ですが、その根拠や社会に与える影響について優しく説いていきます。
10万円の要因として様々な視座、事例を示す部分は市井の私たちが肌身で感じていること(ミクロ)が社会全体でもじわりじわりと敷衍してきていること(マクロ)を教えてくれます。
(その視座、事例は)自分だけじゃない、かもしれません。

30年前のバブル崩壊とその残り香の話はその時代に生まれていなかった人、実務に立っていなかった私たちにも興味深いもの。
また、会計ビックバンが日本の伝統的会社(JTC)の改善に繋がったという見解は、会計を通じて社会をより良くするため日々奮闘する公認会計士にも力強い励ましになるのではないでしょうか。

一方、日経平均10万円超が幸せ一辺倒でないことにも警告をされています。
格差が広がる一面もあり、個々人がより考え、行動することが必要となってくることはたくさんの人に響いてほしい部分です。
株価から離れても、M字カーブのフラット化、シニア社会参加率の頭打ちや外国人労働者の働きづらさなどに起因する労働力増加の限界にどう挑むか。
一人ひとりが考えるきっかけになれば著者の意図は果たせているでしょう。

誰が、いつ読むのがおすすめ

新NISAをきっかけに新たに投資へ興味を持たれている方にまずはおすすめ。
投資は自己責任ですが、一方で自己責任と言っている内に二の足を踏んでしまう方もいるでしょう。
本書は投資する際のありきたりではない視座を提供してくれます。
いま自分で投資をされている方にも振り返りや新たな価値観を醸成してくれる価値があるでしょう。
金銭的リターンのある投資に興味のない方にも第2章第4節と第5章は目を通して欲しいです。

良い意味で書名を裏切る良い本でした。
藤野さんの滑らかな文章と分かりやすい説明でスッと読めます。
資産運用に限らず、キャリアの選び方、老後含めたライフプランに示唆を与えてくれるでしょう。

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