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冷静と情熱のあいがけ

5月21日の月曜日、こちらのイベントに行ってきた。

第2回目のゲストはあの箕輪厚介氏。

直接話を聞くのは2度目だけど、最後に箕輪さんの熱量が感じられて楽しいイベントだった。圧倒的な行動量と未知の領域へ挑みたがるフロンティアスピリッツ、っして自分の仕事に対するプライド。そこらへんは、まあほかの人も書いているし、譲っておく。

異常な人たちの集まり

それよりも個人的に刺さった……というか印象的だったのは、イベント開始直後の「ここにいるのはみんな異常な人たちだから」という言葉。主催の竹村さんも述べていたように、箕輪さんはただアツいだけじゃなくて、どこかできっちり計算もしていて、クールで冷静な部分がある。

シンギュラリティとかベーシックインカムとか脱貨幣経済とかコミュニティビジネスとか、そういう本を読んだり主張をしている人たちのイベントに参加したりしていると、自然と自分が触れ合う人々もそういう進歩的な話題に興味関心のある人たちばかりになってしまう。いちいち説明しなくても「あー、ベーシックインカムね」みたいな感じで話が通じてしまう。

でもふと日常に戻り、たとえば大学の友人とかと話をすると、「は? ベーシックインカム? コミュニティビジネス? なにそれおいしいの?」的な温度で対応される。でも、社会全体で見ればこういう人たちのほうが圧倒的なマジョリティで、いわば「普通」だ。「箕輪厚介」という人物だってもちろん知らないし、写真を見せると「胡散臭そう」といわれる。それが「普通の感覚」なのだ。

SNSも同様で、いつの間にか私たちはフィルターバブルの内側に入ってしまう。自分と同じ事柄に興味関心がある人々に囲まれるようになる。(私は油断していると出版関係者のアカウントばかりになるので、ぜんぜん関係ないVTuberさんとか一般の人をフォローするようにしていて、TL上に唐突にエロいイラストが混じる)

冷静と情熱のあいがけ

箕輪さんの発言はそうしたことを理解したうえで、あのイベント会場をふと俯瞰的に見たうえでの発言だろう。似たような視点は佐渡島さんの新刊『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜』についての「そんなに売れると思ってない。そもそもコミュニティビジネスに興味がある人がどのくらいいるのか」という発言からうかがい知れる。(売れると思っていない発言は、たしか『日本3.0 2020年の人生戦略』発売直後のイベントでも佐々木紀彦さんご本人が話していた気がする)

本の編集者には、もちろん著者にほれ込んで「これを伝えましょう!」と一緒に熱くなれることも大事なんだけど、同時に本が完成した後を見据えて、ふと客観的に「これは世間の誰が、何を目的として読むんだろう」を考えるビジネスライクな視点も必要だと思う。あのあたり、やっぱり箕輪さんは編集者なんだなあと感じた。

「二方よし」

ちなみに、売れなくてもいい本……というのはじゃあいったい何のために作るのかといえば、その答えは、箕輪さんが双葉社時代に手掛けた、『水曜日のダウンタウン』などのプロデューサー・藤井健太郎さんの『悪意とこだわりの演出術』の内容がヒントになるかもしれない。(この本は箕輪さんと竹村さんのファーストコンタクトになったものらしいけど、箕輪さんは覚えてないようだった)

番組は「視聴者」「出演者」「スタッフ」の3つのうち、最低でも2つが楽しめていなければ存在意義がないと誰かが言っていました。たしかにその通りだと思います。
「視聴者が楽しい=視聴率」だとして、最近多いのは視聴率は満たしているけど、他の2つが満たされず、出演者もスタッフも楽しくない番組です。視聴率だけ良くても、やはりそれでは良い番組とは言えません。
もちろん、出演者とスタッフのどちらか一方だけが楽しくて視聴率が悪い番組なんて言わずもがなです。

これは本にも言えることで、「読者」「著者」「スタッフ」のうち、最低2つは楽しめていないと存在意義がない。

サラリーマンこそフルスイング

この『悪意とこだわりの演出術』は構成的に佐渡島さんの『WE ARE LONELY, ~(以下略)』と似ているところがあって、ちょっと雑然としてるけどおもしろい。たとえば「サラリーマンこそフルスイング」というメッセージの部分も引用してみよう。

たぶん本当のクリエイターという人種は、失敗したら即、死活問題になるようなリスクを抱えつつ、自分の表現したいこと、やりたいことを実現している人たちのことです。
そのリスクを抜いて、面白いところ楽しいところだけを真似できる……、僕らはとてもズルい立場だという自覚を強く持っています。
でも、そんな会社員のクリエイターだからこそ、小さくまとまらずに思いっきりフルスイングしなくちゃいけないはずです。
というか、この何のリスクも背負っていない状況でフルスイングをしない意味がわかりません。
まずは思い切り自分のやりたいこと、大胆なことにチャレンジしてみて、それで失敗したならそこから考えればいいと思います。それが自分に向いていないと思ったら、また違う道を探せばいい。まずはとにかくフルスイングじゃないでしょうか。

この辺りは現在の箕輪さんの活動スタンス「会社を利用するサラリーマン」の土台になっているのかも。


まあ私は自分のことを箕輪さんより竹村さんタイプだと思ってる(たぶん)。

(了)

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